シフトレフトテスト・シフトライトテストの内容と違いを徹底解説!

ソフトウェア開発において、品質と効率の両立は常に重要な課題です。

特に、リリース間近になってから不具合が大量に発覚し、手戻りや残業が常態化している状況では、開発チームの士気も低下しがちです。

このような課題を解決し、より良い製品を安定して市場に投入するためのアプローチとして、「シフトレフトテスト」と「シフトライトテスト」が注目されています。

そこで今回はこれら二つのテストアプローチの具体的な内容、それぞれの原則、そして導入によって得られるメリットを詳細に解説します。

さらに、シフトレフトとシフトライトを組み合わせることで、どのように全方位的な品質保証を実現し、開発サイクルを高速化できるのかについても掘り下げていきます。

ソフトウェアの品質保証に携わる方や、開発プロセスの改善を考えている方にとって、本記事が具体的な解決策を見つける一助となれば幸いです。

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シフトレフトテストとは?

シフトレフトテストは、ソフトウェア開発におけるテスト活動を開発プロセスの早い段階に移行させるアプローチを指します。

従来の開発手法では、テストは開発サイクルの終盤で行われることが多かったため、不具合が発見された場合の手戻りや修正コストが大きくなる傾向がありました。

これに対してシフトレフトテストでは、企画・設計段階からテストを考慮し、単体テストや結合テストといった早期の段階で品質検証を積極的に実施します。

これにより問題の早期発見と早期修正を促し、開発全体の効率化と品質向上を目指します。

結果として開発終盤での予期せぬトラブルを減らし、安定したリリースに繋がるため、開発チーム全体の心理的な負担軽減にも寄与すると考えられます。

シフトレフトテストの基本原則

シフトレフトテストを実践する上で、いくつかの重要な原則があります。

まず、テストを開発工程の初期に組み込むことで、不具合の早期発見を可能にします。

これは静的テスト(コードレビューなど)と動的テスト(単体テストなど)の両方を活用し、開発ライフサイクルの早い段階から品質検証を行うことを意味します。

早期に欠陥を発見できれば、その修正にかかる時間やコストを大幅に削減できます。

テストの自動化

シフトレフトテストにおいて、テストの自動化は不可欠な要素です。

手動によるテストは時間と労力がかかり、ヒューマンエラーのリスクも伴います。これに対し、自動テストツールを活用することで、テストをより頻繁かつ効率的に実行できるようになります。

ユニットテスト、結合テスト、さらに継続的インテグレーション/デリバリー(CI/CD)パイプラインへの組み込みにより、コードが変更されるたびに自動的にテストが実行され、問題が早期に検出される仕組みを構築することが重要です。

これによりテストカバレッジが向上し、開発者は品質を担保しながら迅速にコードを記述できます。

継続的なフィードバックループの実現

継続的なフィードバックループは、シフトレフトテストの核心をなす考え方です。

開発の早い段階でテストを実施し、その結果を迅速に開発者にフィードバックすることで、コードの互換性やパフォーマンスに関する実用的な洞察を素早く得られます。

これにより開発者は問題を放置することなく、すぐに修正に取り組むことができます。

この迅速なフィードバックサイクルは、開発チーム全体のコミュニケーションを促進し、問題解決のスピードを向上させます。

また、自動化されたテストとCI/CDパイプラインを組み合わせることで、このフィードバックループはより頻繁かつ継続的に機能し、ソフトウェアの品質を継続的に高めることに貢献します。

チーム間での協力体制を強化する

シフトレフトテストを成功させるためには、開発チームとQAチームの間で協力的なカルチャーを醸成することが極めて重要です。

従来の役割分担では開発とテストが分断されがちでしたが、シフトレフトテストでは品質保証の責任を開発プロセスの全体で共有する意識が求められます。

開発者が自身のコードの品質に責任を持ち、初期段階からテストに関与するだけでなく、QAエンジニアも要件定義や設計段階から積極的に参加し、テスト観点を共有することが重要です。

これによりチーム全体が品質向上という共通の目標に向かって連携し、より堅牢なソフトウェアを構築するための強固な基盤が築かれます。

シフトレフトテストのメリット

シフトレフトテストを導入することで、ソフトウェア開発プロセスに多くのメリットがもたらされます。

最も顕著なのは、開発サイクルの早い段階で不具合を発見し修正できるため、全体的な手戻りや修正コストが大幅に削減される点です。

これにより、開発期間の短縮やリソースの効率的な利用が可能となり、最終的にはビジネス価値の向上に繋がります。

ソフトウェアの品質向上

ソフトウェアの品質向上は、シフトレフトテストの主要なメリットの一つです。

開発の初期段階からテストを組み込み、継続的に品質検証を行うことで、潜在的なバグや脆弱性を早期に特定し、修正できます。

これにより開発の最終段階で重大な問題が発見されるリスクが減少し、より安定した高品質なソフトウェアをリリースできます。

コードの品質が向上することで、長期的なメンテナンスコストも削減され、ユーザー満足度も高まります。

市場投入までの時間短縮

不具合の早期発見と修正は、ソフトウェアの市場投入までの時間を短縮する上で非常に効果的です。

開発の後期に大規模なバグが発見された場合、その修正には多大な時間と労力がかかり、リリースが遅延する原因となります。

シフトレフトテストにより、このようなリスクが軽減され、開発プロセス全体がスムーズに進行します。

結果として、製品をより迅速に市場に投入できるようになり、競合優位性の確立やビジネスチャンスの獲得に貢献します。

チームの士気向上

開発プロセスの終盤で大量のバグが発見され、度重なる手戻りや深夜作業が発生することは、開発チームの士気に悪影響を与えます。

シフトレフトテストを導入することで不具合が早い段階で修正されるため、リリース間近のプレッシャーが軽減されます。

品質に対する不安が減りチームメンバーは自信を持って開発に取り組めるようになります。

問題が早期に解決されることで達成感を得やすくなり、チーム全体のモチベーションと生産性の向上に繋がります。

開発者の生産性向上

シフトレフトテストは、開発者の生産性向上にも寄与します。

開発者が自身のコードを書きながら、並行してユニットテストや機能テストを行うことで、自身のコードの品質に対する責任感が高まります。

また、CI/CDパイプラインによる自動テストと迅速なフィードバックにより、コード変更が他の部分に与える影響をすぐに把握し、問題があればその場で修正できます。

これにより、手戻りの回数が減り、より創造的な開発作業に集中できる時間が増え、結果として開発効率とアウトプットの質が向上します。

修正コストの削減

ソフトウェア開発における不具合の修正コストは、発見されるタイミングが遅れるほど指数関数的に増加すると言われています。

要件定義や設計段階で発見された不具合の修正コストに比べ、本番稼働後に発見された不具合の修正コストは桁違いに大きくなることがあります。

シフトレフトテストは、この「遅い発見」によるコスト増加を回避することを目的としています。

開発の初期段階で問題を発見し修正することで、大幅な手戻りや追加の開発、緊急対応といった高コストな作業を未然に防ぎ、開発プロジェクト全体の経済的な負担を軽減します。

シフトライトテストとは?

シフトライトテストは、ソフトウェア開発におけるテストのアプローチの一つで、製品が本番環境にリリースされた後もテストとモニタリングを継続することに焦点を当てています。

これは、開発ライフサイクルの初期段階でテストを行うシフトレフトテストとは対照的ですが、両者は相互補完的な関係にあります。

シフトライトテストの目的は実際のユーザーが製品を使用する環境で、予期せぬ挙動や潜在的な問題を早期に発見し、迅速に対応することです。

本番環境でのリアルなデータやユーザーの行動を分析することで、開発段階では見落とされがちな問題や、パフォーマンスのボトルネックを特定し、より堅牢でユーザー体験に優れた製品へと改善を重ねていくことが可能になります。

シフトライトテストの基本原則

シフトライトテストを実践する上での基本原則は、本番環境での継続的な品質検証と学習にあります。

開発サイクルを終えていざユーザーに製品が届けられた後も、テストと改善のサイクルを止めないことが重要です。

これは実際のユーザーが製品に触れることで初めて顕在化する問題や、想定外の利用パターンを捉え、迅速な対応を可能にするためです。

本番環境でのモニタリングとテスト

シフトライトテストにおいて、本番環境でのモニタリングとテストは中心的な活動です。

これには、リアルタイムのパフォーマンス監視、エラーロギング、そしてユーザー行動分析などが含まれます。

例えば、カナリアリリースやA/Bテストといった手法を用いて、限られたユーザーに対して新機能や変更を段階的に展開し、その影響を詳細に観察することも有効です。

これにより、広範囲な影響が出る前に問題を発見し、素早く修正できます。

また本番環境でのテストは、実際のユーザーが利用する状況でのパフォーマンスや安定性を把握する唯一の方法であり、開発段階では再現が困難な状況を捉えることができます。

リスクと信頼性のバランス

シフトライトテストは、リスクと信頼性のバランスを慎重に考慮しながら進める必要があります。

本番環境でのテストは、ユーザー体験に直接影響を与える可能性があるため、細心の注意を払って実施しなければなりません。

例えば、新しい機能をリリースする際に、その機能がシステム全体に与える影響や、ユーザーに不利益をもたらす可能性を事前に評価し、最小限のリスクでテストを行う戦略が求められます。

問題が発生した際には、迅速にロールバックできる体制を整えることも重要です。

本番環境で得られたフィードバックは、製品の信頼性を継続的に高め、ユーザーからの信頼を維持するための貴重な情報源となります。

継続的デリバリー

シフトライトテストは、継続的デリバリー(CD)の考え方と密接に連携しています。

継続的デリバリーとは、ソフトウェアの変更を迅速かつ確実に本番環境へリリースできる状態を常に保つことを指します。

シフトライトテストは、この継続的デリバリーのサイクルの一部として機能します。

本番環境へのデプロイ後も継続的にテストとモニタリングを行い、得られたフィードバックを次の開発サイクルへと迅速に反映させることで、製品の品質を継続的に向上させることができます。

このプロセスを繰り返すことで、リリースサイクルが加速し、市場の変化やユーザーのニーズに対してより素早く対応できるようになります。

シフトライトテストのメリット

シフトライトテストを導入することで、開発プロセス全体にわたる品質保証の範囲が広がり、特に本番環境での運用において多大なメリットが生まれます。

これにより、ユーザー体験の向上やシステムの安定稼働に直接的に貢献します。

本番リリースに対する信頼向上

シフトライトテストは、本番リリースに対する信頼性を大幅に向上させます。

開発段階でのテストでは発見できなかった、実際の運用環境特有のパフォーマンス問題や、稀なシナリオで発生するバグなどを、リリース後に迅速に特定し対応できるためです。

継続的なモニタリングとフィードバックループにより、運用チームはシステムの健全性を常に把握でき、問題発生時にも早期に修復することで、システムのダウンタイムを最小限に抑えられます。

これによりシステムを利用するユーザーからの信頼も得られ、ビジネスの安定稼働に寄与します。

ユーザー視点の開発促進

シフトライトテストの導入は、開発プロセスをよりユーザー視点へと導くきっかけとなります。

本番環境でユーザーが実際にどのように製品を利用しているか、どのような問題に直面しているかといった生きたデータを得ることで、開発チームはユーザーの真のニーズや課題を深く理解できます。

このフィードバックを基に、より実用的で価値のある機能の改善や追加を進めることができるため、ユーザー満足度を向上させ、製品の市場競争力を高めることにつながります。

システムのレジリエンス向上

シフトライトテストは、システムのレジリエンス、つまり障害に対する回復力や適応能力の向上に大きく貢献します。

本番環境での継続的なテストとモニタリングにより、潜在的な脆弱性や性能ボトルネックを早期に発見し、システムが大規模な障害に見舞われる前に予防策を講じられます。

また、実際に障害が発生した場合でも、モニタリングデータに基づいて迅速に原因を特定し、効果的な対策を講じることが可能です。

これにより、システムの安定稼働時間を最大化し、予期せぬ問題が発生しても迅速に復旧できる、強靭なシステムを構築することができます。

シフトレフトとシフトライトを組み合わせるメリット

シフトレフトテストとシフトライトテストは、それぞれ開発プロセスの異なる段階に焦点を当てるアプローチですが、これらを組み合わせることでソフトウェアの品質保証をより包括的かつ効果的に実現できます。

開発の初期段階で問題を捉える「シフトレフト」と、リリース後の本番環境で継続的に品質を監視・改善する「シフトライト」を連携させることで、開発ライフサイクル全体で品質を担保し、最終的な製品の価値を最大化することが可能になります。

これにより、開発チームは自信を持って製品を市場に投入し、ユーザーはより信頼性の高いサービスを享受できるでしょう。

全方位での品質保証

シフトレフトとシフトライトの両アプローチを組み合わせることで、文字通り開発プロセスの「全方位」で品質保証を徹底できます。

シフトレフトテストが設計段階から単体テストまでをカバーし、開発の初期で不具合の芽を摘み取る一方、シフトライトテストは製品がリリースされた後の本番環境での挙動を監視し、実際のユーザー体験から得られるフィードバックに基づいて品質を改善します。

この二重の網を張ることで、開発中の予期せぬ問題から、本番環境でしか顕在化しない複雑な問題まで、あらゆる角度から品質を検証し、迅速に対応することが可能になります。

結果として、より高品質で安定したソフトウェアを継続的に提供できるようになります。

リリースサイクルの高速化

シフトレフトとシフトライトを組み合わせることは、リリースサイクルの高速化に大きく貢献します。

シフトレフトテストによって、開発初期の段階でバグを早期に発見・修正できるため、開発終盤での手戻りが減り、デプロイメントパイプラインがスムーズになります。

同時に、シフトライトテストが本番環境でのリスクを低減し、迅速なフィードバックを可能にすることで、開発チームは自信を持って頻繁にリリースを行えます。

これにより、市場のニーズやユーザーの要望に素早く応えるアジャイルな開発が可能になり、ビジネスの変化に柔軟に対応できる体制を築けます。

結果として、競争の激しい市場において優位性を確立する手助けとなるでしょう。

信頼性の向上

シフトレフトとシフトライトの組み合わせは、ソフトウェアの信頼性を飛躍的に向上させます。

シフトレフトによって、設計やコードの段階で潜在的な問題を潰し込み、堅牢な基盤を構築します。

その上で、シフトライトによる本番環境でのリアルタイム監視と継続的な改善を加えることで、実際の運用条件下でのシステムの安定性やパフォーマンスを高いレベルで維持できます。

ユーザーが予期せぬ問題に遭遇するリスクが低減され、常に安定したサービス提供が実現されるため、ユーザーからの信頼獲得に直結します。

この継続的な信頼性の追求は、長期的な顧客満足度とブランド価値の向上に不可欠な要素となります。

まとめ

今回はソフトウェア開発における品質保証を飛躍的に向上させる「シフトレフトテスト」と「シフトライトテスト」について、それぞれの基本的な考え方、重要な原則、そして導入による具体的なメリットを詳しく解説しました。

シフトレフトテストは、開発プロセスの初期段階からテストを組み込むことで、不具合の早期発見と修正を促し、手戻りや修正コストを大幅に削減します。テストの自動化、継続的なフィードバックループの実現、そして開発・QAチーム間の協力的なカルチャーの醸成が、その成功の鍵となります。これにより、ソフトウェアの品質向上、市場投入までの時間短縮、チームの士気向上、開発者の生産性向上、そして修正コストの削減といった多岐にわたるメリットが得られます。

一方、シフトライトテストは、製品が本番環境にリリースされた後もテストとモニタリングを継続するアプローチです。本番環境でのモニタリングとテスト、リスクと信頼性のバランスの考慮、そして継続的デリバリーとの連携が基本原則となります。これにより、本番リリースに対する信頼性の向上、ユーザー視点での開発促進、そしてシステムのレジリエンス(回復力)向上といったメリットが期待できます。

これら二つのアプローチを組み合わせることで、開発の初期から本番環境での運用に至るまで、全方位での品質保証が可能になります。結果として、リリースサイクルの高速化とシステムの信頼性の向上が実現され、ビジネス価値の最大化に貢献します。

シフトレフト・ライトのアプローチを深く理解し、自身のプロジェクトに導入することで、開発プロセス全体の効率化と品質向上に繋がるでしょう。

これにより、リリース前のプレッシャーが軽減され、より創造的な品質保証活動に時間を費やせるようになるはずです!

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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。

記事制作:川上サトシ