QA担当が評価されにくい理由とは?

QA(品質保証)担当者が組織内で評価されにくいという課題は、多くの企業で共通して見られます。

その主な原因はQA業務の根幹にある特性、すなわち成果の可視化の難しさと、直接的な利益貢献が見えにくいという点に集約されます。

これらは担当者のモチベーション低下を招くだけでなく、品質に対する意識が組織全体で希薄化し、結果として市場での信頼性や競争力の低下に直結します。

そこで今回はQA担当者が評価されにくい理由とその対策について、5つご紹介させていただきます。

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1. 成果が目に見えにくい 

QAの仕事は、バグを「発見する」ことや、深刻な問題を「未然に防ぐ」ことです。

しかし、開発者のように新しいコードや機能を「作り出す」わけではないため、その成果が物理的または視覚的に残りづらいという根本的な課題を抱えています。

例えばリリース前にQAが重大なセキュリティバグを発見し修正に繋げた場合、製品は問題なく市場に出回ります。

この「問題が起きなかった」という成功体験は、回避された損失や守られた企業の信頼という形でしか表現されません。

成功すればするほど、顧客からのクレームや大規模なシステム障害が表面化しないため、その裏にあったQAの卓越した洞察力や努力は、上司や他部門にとっては「当たり前の結果」として認識されがちです。

この現象は「予防的業務のパラドックス」とも呼ばれ、リスク管理や品質保証分野で頻繁に見られます。

評価の場面では「バグの発見数」といった指標が用いられることもありますが、これはテストの量や複雑性、あるいは開発コードの品質に大きく依存するため、必ずしもQAの貢献度を正確に示しません。

真の成果はテストカバレッジの向上、欠陥の早期検出、あるいはリグレッション(退行)の防止といった、見えない部分での品質の底上げにあります。

この「見えない貢献」を、具体的なデータやレポートを通じていかに「見える化」するかが、評価向上の鍵となります。

2. 直接的な利益貢献が見えにくい

経営層や他部門、特に営業や生産部門は、企業活動において売上向上やコスト削減といった「数字」で測れる成果、すなわち短期的な収益への直接的な貢献を重視する傾向があります。

品質保証の活動は、その性質上、こうした短期的な数字に直結しにくいため、「コストセンター」として見なされたり、投資の優先順位が低く見積もられがちです。

もちろん、品質保証は非常に重要な利益貢献を担っています。

具体的には、長期的な顧客満足度の向上、ブランドイメージの維持、そしてリコールや訴訟といった重大なリスクの回避です。

例えば致命的なバグの市場流出を防ぐことは莫大な修正コスト、顧客離れによる将来的な売上減、そして企業イメージの毀損という、計り知れない損失を未然に防いでいます。

しかしこれらの貢献は「もしバグが出ていたら発生したであろう損失」という形でしか表現できず、会計上の利益や売上増加として直接計上されるものではありません。

このためQA部門からの人員増強やツール導入に関する提案が、「すぐに売上に繋がらない」という理由で軽視されたり、承認が通りにくくなったりするのです。

QAの価値を正当に評価してもらうには、単なる品質の良さを訴えるだけでなく、「バグ回避によるコスト削減効果」や「高品質な製品による顧客維持率の向上(LTVへの貢献)」といった形で、財務的なインパクトに換算して提示するスキルが求められます。 

3. 他部門との連携不足や理解不足

組織内でQAの役割や責任範囲が明確に理解されていないことは、部門間の連携を難しくし、結果的にQAの価値が十分に発揮されない大きな要因となります。

多くの企業では、QAは「最終チェックをする人」という狭い認識にとどまりがちで、本来持つべき「品質設計への関与」や「プロセス改善のリード」といった戦略的な役割が軽視されています。

特に開発部門とQA部門の間で、「品質」に対する責任の境界線が曖昧になっている場合、対立が生じやすくなります。

開発側がQAを「バグ探し」の役割と見なす一方で、QA側が開発プロセスや要求定義の段階から積極的に関与できないと、品質評価や不具合分析を通じて得られた貴重なノウハウが、開発サイクルに活かされません。

その結果、同じような品質上の問題が繰り返し発生し、組織全体としての生産性の向上に寄与できなくなってしまいます。

QAが組織全体の品質向上に貢献するためには開発部門だけでなく、企画・営業・サポート部門など、製品に関わるすべての部門に対して、QAが持つ「品質リスクに関する知見」や「ユーザー視点での評価ノウハウ」の価値を理解してもらう必要があります。

部門間の壁を取り払い、共通の目標(高品質な製品の迅速な提供)に向かって協力し合う体制(DevOpsやDevSecOpsなど)を築くことが、QAの評価を高め、そのノウハウを組織全体に浸透させるための必須条件となります。

4. コミュニケーション不足

どれほど卓越したテストを実施しどれだけ深刻な潜在リスクを回避していたとしても、その成果や回避された苦労が上司や関係者に伝わらなければ、評価には繋がりません。

QA担当者が陥りやすい問題の一つが、技術的な側面に注力しすぎるあまり、成果のビジネス的な価値を伝えるコミュニケーションが不足してしまうことです。

単に「バグを100件発見した」と報告するだけでは、その数字が持つ真の意味や、それがプロジェクトに与える影響は伝わりません。

重要なのは

「発見したバグをリリース前に修正したことで、約X万円の緊急対応コストと、ブランドイメージの低下を回避できました」

といったように、適切なデータ(不具合の重大度、影響範囲、回避コストなど)を用いて、その活動の価値をビジネス視点で報告・共有することです。

また、QAの業務は、時に他部門、特に開発チームとの厳しいやり取りを伴うことがあります。

建設的かつデータに基づいたフィードバックを行う能力、そして部門を超えて品質改善の重要性を浸透させるためのネゴシエーション能力も、コミュニケーションの一環として評価されるべきです。

定期的な報告の機会を設け、QAの活動が「コスト」ではなく「リスク管理と信頼構築への投資」であることを説得力を持って発信し続けることが、評価向上のための不可欠な戦略となります。

5. 評価制度の不備

根本的な問題として、会社の人事評価制度自体が、QAの業務特性(予防的な活動や見えない貢献)を適切に評価できる仕組みになっていない場合があります。

多くの評価システムは、売上達成率や新機能開発の完了数といった「目に見えるアウトプット」や「短期的な成果」を重視するように設計されています。

このフレームワークでは、バグの未然防止やテストプロセスの効率化といった「見えないインプット」や「長期的な貢献」を正確に捉えることが困難です。

結果としてQA担当者は、自身の本来の価値を発揮しているにも関わらず、形式的な評価基準では低いスコアを付けられてしまい、正当な報酬や昇進の機会を逸することになります。

このような評価制度の不備は、優秀なQA人材のモチベーションを著しく低下させ、最悪の場合、離職に繋がる可能性があります。

QA部門の評価を高め、その専門性を正しく認めるためには、評価制度そのものを見直す必要があります。

具体的には単なる発見不具合数だけでなく、テスト自動化率の向上、欠陥の早期検出率(シフトレフトの貢献)、テストカバレッジの向上、さらには製品リリース後の顧客からのクレーム件数の減少率やユーザーレビューの改善といった、品質とリスク回避に直結する定量的・定性的な指標を評価項目に組み込むことが重要です。

QAの活動が企業の競争力と信頼性に不可欠であることを示す、業務特性に合った評価軸を確立することが、組織全体の品質向上への投資を促します。

まとめ

今回はQA(品質保証)担当者が組織内で評価されにくい主な理由を深掘りしました。

QAの仕事は、バグの「発見」や問題の「未然防止」という成果が目に見えにくい特性を持つため、「何も問題が起きなかった」という成功が評価されにくい傾向にあります。また、品質保証は長期的な顧客満足度向上やリスク回避に繋がるものの、短期的な収益への直接的な貢献が見えにくい点も、評価上の課題となります。

さらに、他部門との連携不足やQAの役割への理解不足、成果や苦労を適切に共有できないコミュニケーション不足、そしてQAの特性を評価できない人事制度の不備も、評価を困難にしている要因です。

QAの評価を高めるためには、単に不具合数だけでなく、テスト効率化の成果や顧客満足度向上といった、定量的・定性的なデータを積極的に可視化し、その価値を組織全体に発信していくことが極めて重要です。

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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。

記事制作:川上サトシ