ユーザビリティテストとは?ユーザーに「使いやすい!」と言われるために
「使いやすい!」—— エンジニアにとって、これほど嬉しい言葉はありません。
私たちが丹精込めて開発したWebアプリケーションやサービスが、ユーザーにとって快適で、目的をスムーズに達成できるものであれば、それは開発者冥利に尽きるというものでしょう。
しかし、一体どうすればユーザーにそう言ってもらえるのでしょうか?
その鍵を握るのが「ユーザビリティテスト」です。
そこで今回はエンジニアの皆さんがユーザー視点を深く理解し、日々の開発に活かすための羅針盤となることを目指してこのユーザビリティテストについて解説いたします。
そもそもユーザビリティとは何かという基本的な概念から、テストの目的、実施タイミング、具体的な進め方、そしてテスト結果を最大限に活かすためのヒントまで掲載しました。
さあ、ユーザーに心から「使いやすい!」と言われる未来のWebアプリケーション開発に向けて、一緒に踏み出しましょう。

ユーザビリティテストとは?
そもそもユーザビリティとは?
エンジニアにとってユーザビリティとは、開発したWebアプリケーションやサービスが、特定のユーザーにとって、特定の利用状況下で、意図した目標を効果的、効率的、かつ満足度高く達成できる度合いを示す重要な概念です。
単に「使いやすい」というだけでなく、ユーザーが目的をスムーズに達成できるか、ストレスなく操作できるか、そしてその経験に満足しているかという多角的な視点を含みます。
エンジニアがユーザビリティを意識することは、技術的な実現可能性だけでなく、実際に利用するユーザーの体験価値を高める上で不可欠です。
ユーザビリティテストの目的
エンジニアがユーザビリティテストに関わる主な目的は、開発段階でユーザーが実際に製品やサービスを利用する際の課題や問題点を早期に発見し、改善に繋げることにあります。
これにより、リリース後の手戻りを減らし、開発効率の向上に貢献できます。
また、ユーザビリティテストを通じて得られた定量的なデータ(タスク完了率、所要時間など)や定性的なフィードバックは、UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)の具体的な改善策を検討する上で貴重な情報源となります。
エンジニアがユーザー視点を理解し、開発に反映させることは、よりユーザー中心の製品開発を推進し、結果としてユーザー満足度の向上に繋がります。
ユーザビリティテストの実施タイミング
ユーザビリティテストは、Webアプリケーション開発のライフサイクルの様々な段階で実施することが可能です。
初期の段階では、ワイヤーフレームやプロトタイプを用いて、設計の方向性や基本的な操作性を検証することが有効です。
開発が進み、主要な機能が実装された段階では、実際の動作に近い環境でテストを実施し、具体的な操作フローやUIの使いやすさを評価します。
リリース直前に行うことで、最終的な品質チェックとしての役割も期待できます。
エンジニアとしては、企画・設計段階から積極的にユーザビリティテストに関わることで、ユーザーのフィードバックを早期に開発に反映させることができ、より使いやすいアプリケーションの開発に貢献できます。
ユーザビリティテストのメリット・デメリット
メリット
エンジニアにとって、ユーザビリティテストを実施する主なメリットは、開発段階でユーザー視点を取り入れることができる点です。
自身が使いやすいと考えて開発したWebアプリケーションでも、実際のユーザーにとっては操作が複雑であったり、意図しない挙動を示す可能性があります。
ユーザビリティテストを通じて、開発者自身では気づきにくい潜在的な問題点を早期に発見し、手戻りを防ぐことができます。
また、ユーザーがタスクを完了する際の成功率や時間、迷った箇所などの定量的なデータを取得できるため、主観的な判断ではなく、客観的な根拠に基づいて改善を進めることが可能になります。
さらに、デザインチームや企画チームとテスト結果を共有することで、共通の認識を持ち、よりユーザー中心の製品開発に向けた連携を強化することができます。
デメリット
一方で、ユーザビリティテストの実施にはいくつかのデメリットも存在します。
テストの計画、参加者の募集、実施、そして結果の分析には、時間と労力がかかる場合があります。特に、ターゲットユーザーの募集が難しい場合や、テスト環境の準備に手間がかかることがあります。
またテスト結果の解釈や、 明らかになった問題点の重要度判断には、ある程度の専門知識や経験が必要となるため、担当者のスキルによってテストの質が左右される可能性もあります。
さらに、テストに参加するユーザーの行動や発言は、テスト環境やモデレーターの存在によって影響を受ける可能性があり、必ずしもユーザーの自然な行動を完全に捉えられるとは限りません。
したがって、ユーザビリティテストの結果を鵜呑みにするのではなく、他のデータや専門家の意見も参考にしながら、総合的に判断することが重要です。
ユーザビリティテストの進め方
ステップ1:テストの目的を定める
ユーザビリティテストを実施する最初のステップは、何を明らかにしたいのか、具体的なテストの目的を定めることです。
エンジニアの視点では、例えば「特定の機能の操作フローにおけるユーザーの迷いやすい箇所を特定したい」「新しいUIコンポーネントが直感的に理解されるか検証したい」「ユーザーがタスクを完了する際の効率性を評価したい」などが考えられます。
目的を明確にすることで、テストの設計、参加者の選定、タスクの準備、そして結果の分析といった後続のステップの方向性が定まります。
目的が曖昧なままテストを実施すると、得られるデータが散漫になり、具体的な改善に繋がりにくいため、最初にしっかりと議論し、合意形成を行うことが重要です。
ステップ2:テスト参加者を集める
テストの目的に合致するユーザーを集めることが、有益なテスト結果を得るために不可欠です。
エンジニアが関わる場合、実際のアプリケーションのターゲットユーザーに近い属性を持つ人を募集することが重要になります。
年齢層、ITスキル、製品の利用経験などを考慮し、多様なバックグラウンドを持つ参加者を集めることで、より広範なユーザビリティの問題を発見できる可能性があります。
参加者の募集方法としては、社内関連部署への協力依頼、顧客へのアンケート告知、外部の調査会社への依頼などが考えられます。
テストの規模や予算に応じて適切な方法を選択し、テストの目的に合った質の高いフィードバックを得られるように努める必要があります。
ステップ3:テストタスクを用意する
テスト参加者に対して、実際にWebアプリケーションを操作してもらうための具体的なタスクを用意します。
タスクは、ユーザーがアプリケーションを利用する際の典型的なシナリオに基づいて設計されるべきです。
エンジニアは、アプリケーションの主要な機能や操作フローを理解しているため、ユーザーが実際にどのような目的で、どのような手順で操作を行うかを想定し、タスクを作成することができます。
タスクは具体的かつ明確に記述し、ユーザーが何を達成すればタスク完了となるかを理解できるようにする必要があります。
また、タスクの難易度や順序も考慮し、実際の利用状況に近い形でテストを実施できるように工夫することが重要です。
ステップ4:テストを実施する
用意したタスクに基づき、テスト参加者に実際にWebアプリケーションを操作してもらい、その様子を観察し記録します。
エンジニアが観察者として参加する場合、ユーザーの操作時の迷いや疑問点、発言などを注意深く観察し、記録することが重要です。
ユーザーがタスクをスムーズに完了できたか、操作に戸惑う場面はあったか、どのような点に不満を感じたかなどを客観的に記録します。
可能であれば、画面操作やユーザーの表情、発言を録画・録音することで、後から詳細な分析を行うことができます。
テスト実施中は、ユーザーに過度なヒントを与えず、自然な操作を促すことが、より現実的なユーザビリティの問題点を明らかにするために重要です。
ステップ5:結果を分析する
収集したテスト結果を分析し、ユーザーがWebアプリケーションの利用においてどのような問題に直面したのかを特定します。
エンジニアは、記録されたユーザーの行動や発言、タスクの完了時間、エラー発生状況などのデータを分析し、具体的なユーザビリティの問題点を抽出します。
例えば、「特定のボタンの配置が分かりにくい」「操作フローが複雑で迷いやすい」「エラーメッセージが理解しにくい」といった問題点が明らかになることがあります。
分析結果を基に、問題点の重要度や発生頻度を考慮しながら、改善策を検討します。エンジニアが分析に参加することで、技術的な実現可能性も考慮した、より効果的な改善策を導き出すことが期待できます。
テスト結果を活かすコツ
ユーザーの行動から何がわかる?具体的な改善ポイント
ユーザビリティテストを通じて観察されたユーザーの行動は、Webアプリケーションの具体的な改善点を示唆する貴重な情報源となります。
例えば、特定のボタンやアイコンの前でユーザーが迷っている場合、そのラベルやデザインが直感的でない可能性があります。
タスク完了までに時間がかかっている場合、操作フローが複雑であるか、必要な情報が見つけにくいのかもしれません。
エラーが頻発する場合、入力フォームの設計やバリデーションに問題があると考えられます。
ユーザーの発言内容も重要です。
「ここが分かりにくい」「どうすれば良いか分からない」といった直接的なフィードバックはもちろん、「もっとこうなっていれば良いのに」という願望も、改善のヒントになります。
エンジニアは、これらのユーザーの行動や発言を分析し、具体的なUIの修正、操作フローの改善、情報の再配置といった対策を検討する必要があります。
開発の修正例:小さな変更で大きく変わる!
ユーザビリティテストの結果に基づいた修正は、必ずしも大規模な改修を必要とするとは限りません。
時には、小さな変更がユーザー体験を劇的に向上させることがあります。
例えば、分かりにくいアイコンにテキストラベルを追加する、ボタンの色や形状を変更して視認性を高める、入力フォームのエラーメッセージをより具体的にする、重要な情報への導線を分かりやすくするなど、比較的容易な修正でユーザビリティが大きく改善されるケースは少なくありません。
エンジニアは、テスト結果から明らかになる問題点を分析し、技術的な実現可能性とユーザーへの影響度を考慮しながら、効果的な修正案を具体的に検討し、実装していくことが重要です。
チームで共有&議論するコツ
ユーザビリティテストの結果を最大限に活かすためには、テストに関わったメンバーだけでなく、開発チーム全体で情報を共有し、議論することが不可欠です。
テストの目的、実施方法、観察されたユーザーの行動、そして明らかになった問題点などを共有することで、チーム全体のユーザー視点が向上し、共通認識を持つことができます。
議論の際には、単に問題点を指摘するだけでなく、「なぜそのような問題が起きたのか」「具体的な改善策は何か」「技術的な制約はないか」といった多角的な視点から意見を出し合うことが重要です。
エンジニアは、技術的な知識や実現可能性の観点から積極的に議論に参加し、より現実的で効果的な改善策を見出す役割を担うことが期待されます。
議論の結果を踏まえ、具体的な改善計画を立て、開発プロセスに反映していくことが、ユーザビリティの高いWebアプリケーション開発に繋がります。
ユーザビリティテストをもっと深く知るために
いろんな種類のユーザビリティテスト
ユーザビリティテストには、実施方法や目的によって様々な種類が存在します。
エンジニアが知っておくべき分類として、モデレーターの有無による区別があります。
モデレーターありのテストでは、テスト担当者が参加者に指示を与えたり、質問したりしながら進めるため、より深い洞察が得やすい一方、参加者が影響を受ける可能性があります。
モデレーターなしのテストでは、参加者は自分のペースでタスクを実行するため、より自然な行動が観察できますが、疑問点が解消されないまま終わることもあります。
また、実施場所によって、対面式とリモート式があります。
対面式では、参加者の表情や非言語的な反応を直接観察できますが、場所や時間の制約があります。
リモート式では、地理的な制約を受けにくいものの、直接的な観察は難しくなります。
さらに、探索的なテスト、評価的なテストなど、テストの目的によっても手法が異なります。
エンジニアは、テストの目的やリソースに応じて、適切なテスト手法を選択する必要があります。
役立つツール
ユーザビリティテストの各プロセスを効率化するための様々なツールが存在します。
テストの計画・設計段階では、タスク管理ツールやプロトタイピングツールが役立ちます。
テストの実施段階では、画面録画ツールや参加者の操作ログを記録するツールを利用することで、ユーザーの行動を詳細に把握できます。
例えば、OBS StudioやQuickTime Playerなどが画面録画に利用できます。
リモートテストを実施する場合には、ZoomやGoogle MeetなどのWeb会議ツールが活用されます。
テスト結果の分析段階では、ヒートマップツールやクリック分析ツールを用いることで、ユーザーの注目箇所や操作傾向を可視化できます。
また、ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトは、収集したデータを整理し、分析するのに役立ちます。
より高度な分析を行いたい場合には、専用のユーザビリティ分析ツールやデータ可視化ツールを検討することも有効です。
エンジニアは、これらのツールを効果的に活用することで、ユーザビリティテストの効率を高め、より深い洞察を得ることができます。
まとめ
今回はエンジニアがユーザーに「使いやすい!」と言われるシステムの開発をおこなうために不可欠なユーザビリティテストについて解説しました。
ユーザビリティとは、ユーザーが目標を効果的、効率的、かつ満足度高く達成できる度合いであり、エンジニアがユーザー視点を持つことは不可欠です。
ユーザビリティテストの目的は、開発段階でユーザーの課題を発見し改善に繋げることで、手戻りを減らし開発効率を向上させることです。実施タイミングは、設計初期からリリース直前まで、開発ライフサイクルの様々な段階で可能です。
テストのメリットは、開発者が気づかない問題点を早期に発見し、客観的なデータに基づいて改善できる点です。一方、デメリットとして、時間や労力がかかり、結果の解釈には専門知識が必要となる場合があります。
具体的な進め方として、目的設定、参加者募集、タスク準備、テスト実施、結果分析の5つのステップを紹介。テスト結果を活かすコツとして、ユーザーの行動から具体的な改善点を見つけ、小さな変更でも大きな効果が期待できる修正例、そしてチームでの共有と議論の重要性を説明しています。
さらに、様々な種類のユーザビリティテストや、テストを効率化するための役立つツールもご紹介しています。
これらの知識を活用することで、よりユーザー中心のシステム開発を実現できるでしょう!
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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ