デシジョンテーブルとは?メリットや具体的な記載例など

システム開発や複雑な業務フローにおいて、「もしこうなったら、ああする」といった条件分岐は避けられません。
しかし、これらの条件が多岐にわたり、互いに複雑に絡み合うと、全体の把握が難しくなり、設計ミスやテスト漏れの原因となることがあります。
このような課題に直面したとき、強力な助けとなるのが「デシジョンテーブル(決定表)」です。
これにより、複雑なロジックも一目で理解できるようになり、開発チーム全体の共通認識を深めることができます。
そこで今回はデシジョンテーブルの基本的な概念から、その作成方法、さらにシステム開発の現場でどのように活用できるのかを詳しく解説していきます!
デシジョンテーブルを導入することで得られるメリットや、注意すべきデメリットも網羅していますので、ぜひ最後までご覧ください。

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デシジョンテーブル(決定表)とは
デシジョンテーブル、日本語では「決定表」と呼ばれるこのツールは、特定の条件とそれに対応する結果を整理するための表形式の表現方法です。
特に、複数の条件が複雑に絡み合うビジネスロジックやシステムの動作を明確に記述する際に非常に有効です。
例えば、ECサイトの会員ランクに応じた割引率の決定や、ローンの審査基準など、多くの「もし〜ならば、こうする」というルールがある場合に、その条件と行動の関係性を一目でわかるように整理できます。
デシジョンテーブルテストとは
デシジョンテーブルテストとは、デシジョンテーブルを用いてシステムのテストケースを設計する手法のことです。
システム開発において、特に複雑な条件分岐を持つ機能のテストは、全てのパターンを網羅することが難しく、見落としが発生しやすいという課題があります。
そこで、デシジョンテーブルが持つ「条件と行動の網羅性」という特性を活かし、テストケースの抜け漏れを防ぎ、効率的なテストを実現します。
例えば、「ユーザーがログイン済みか」「カートに商品があるか」「クーポンが適用可能か」といった複数の条件が絡み合うECサイトの決済機能では、これらの条件のすべての組み合わせを洗い出し、それぞれの組み合わせに対してどのような支払い処理が行われるべきかをデシジョンテーブルに記述します。
この手法を用いることで、開発者はもちろん、テスト担当者も、どのような条件の時にどのような動作をするべきか明確に把握でき、テストの計画から実行、結果の評価までを効率的に進めることができます。
結果として、バグの早期発見・修正につながり、システムの品質向上に大きく貢献します。
デシジョンテーブルをつくるメリット
デシジョンテーブルを作成することには、多岐にわたるメリットがあります。
見える化ができる
最も大きなメリットの一つは、複雑なビジネスロジックやシステムの条件分岐を「見える化」し、非常に分かりやすく整理できる点です。
これにより、関係者間で認識の齟齬が生じるリスクを大幅に低減できます。
テキストベースの長い仕様書では見落としがちな細かな条件の組み合わせも、表形式にすることで一目で把握できるようになり、チーム全体の共通理解が深まります。
「抜け漏れ」や「矛盾」を発見しやすくなる
デシジョンテーブルは、すべての条件の組み合わせを網羅的に記述するように設計されているため、論理的な不備や考慮漏れがある場合には、その空白や矛盾が明確に浮き彫りになります。
これにより、開発の初期段階で問題を発見し、手戻りのコストを削減できます。
システム開発の現場では、後工程でバグが発見されるほど修正コストが増大するため、この早期発見能力は非常に重要です。
テストケースの作成が効率化できる
デシジョンテーブルの各行は、そのまま個別のテストケースとして利用できます。
これにより、テスト担当者は、手動でテストパターンを洗い出す手間が省け、網羅性の高いテストを短時間で計画・実行できるようになります。
結果として、テスト品質が向上し、リリースされるソフトウェアの信頼性が高まります。
また、将来的な仕様変更があった際にも、デシジョンテーブルを修正するだけで、影響範囲を特定し、関連するテストケースを効率的に更新できるため、メンテナンス性も向上します。
デシジョンテーブルをつくるデメリット
デシジョンテーブルを作成することには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
条件の数が増えすぎると可読性が低下する可能性がある
まず、条件の数が増えすぎると、テーブルが巨大化し、かえって可読性が低下する可能性がある点です。
条件が一つ増えるごとに、その条件の組み合わせパターンは指数関数的に増加するため、非常に複雑なシステムでは、一枚のデシジョンテーブルでは収まりきらなくなることがあります。
これにより、作成やレビューに膨大な時間がかかり、本来の効率化という目的から外れてしまうことがあります。
スキルと経験が求められる
デシジョンテーブルの作成には、単に条件と行動を羅列するだけでなく、適切な粒度で条件を定義し、重複や矛盾がないように論理的に整理する能力が必要です。
不慣れな担当者が作成した場合、誤ったルールや不足している条件が含まれてしまい、かえってバグの原因となったり、不正確なテストにつながったりするリスクがあります。
特に、システムの深い理解がないまま作成すると、形骸化してしまう可能性もあります。
すべてのプロジェクトやシステムに適しているわけではない
デシジョンテーブルは、条件分岐が明確でルールベースのシステムには非常に効果的ですが、自由記述が多いシステムや、機械学習などの予測モデルが中心となるシステムには、その効果が限定的である場合があります。
柔軟な解釈が必要な部分や、頻繁に仕様変更が発生するようなアジャイルな開発環境では、デシジョンテーブルを常に最新の状態に保つことが負担になる可能性も考えられます。
プロジェクトの特性やシステムの複雑性を見極め、適切なツールとして導入することが重要です。
h2 デシジョンテーブルの基本フォーマットと作り方
デシジョンテーブルの構成
ここではローン審査の例を用いて、その主要な構成要素を解説します。
条件部
デシジョンテーブルの上半分に位置し、意思決定の基準となる事柄を示します。
例えば「年齢 ≥ 20歳」「年収 ≥ 300万円」「信用スコア ≥ 700」がこれにあたります。
これらの条件が満たされているか否か、あるいはどのような状態であるかによって、最終的な行動が決定されます。
条件エントリー
条件部の下に広がる領域で、それぞれの条件が特定の場合においてどのような状態にあるかを示します。
「Y(真)」「N(偽)」「-(条件が動作に影響しない)」といった記号で表現され、ルール1では「年齢 ≥ 20歳」がY(真)、「年収 ≥ 300万円」もY(真)、「信用スコア ≥ 700」もY(真)という条件の組み合わせを表します。
行動部
デシジョンテーブルの右側に位置し、各条件の組み合わせに対して実行されるべき行動や結果を示します。
例では、「承認」「追加保証要求」「却下」が行動部にあたります。
行動エントリー
行動部の下に広がる領域で、特定の条件の組み合わせ(ルール)が満たされた場合に、どの行動が実行されるかを示します。
「X(アクションが発生する)」または空白(アクションが発生しない)で表現されます。
例えば、ルール1は全ての条件が真の場合に「承認」されることを示し、ルール2は「年齢 ≥ 20歳」と「年収 ≥ 300万円」が真で、「信用スコア ≥ 700」が偽の場合に「追加保証要求」が行われることを示しています。
デシジョンテーブルの記載例
前述の例から実際に記載されたデシジョンテーブルがこちらになります。
パターン | 年齢 ≥ 20歳 | 年収 ≥ 300万円 | 信用スコア ≥ 700 | 承認 | 追加保証要求 | 却下 |
1 | Y | Y | Y | X | ||
2 | Y | Y | N | X | ||
3 | Y | N | – | X | ||
4 | N | – | – | X |
記号の意味
条件
Y:真(True) N:偽(False) -:条件が動作に影響しない(N/A) |
動作
X:アクションが発生する 空白:アクションが発生しない |
まとめ
今回はシステム開発や複雑なビジネスロジックの整理に役立つデシジョンテーブル(決定表)について、その基本から具体的な活用方法までを解説しました。
デシジョンテーブルは、複雑な条件分岐を「見える化」し、関係者間の認識齟齬を解消する強力なツールです。
開発効率を高め、より高品質なシステムを構築するための強力な手段です。ぜひ、この内容を参考にデシジョンテーブルの活用をして、日々の業務に役立ててみてください!
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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ