セキュリティテストとは?その重要性や種類、注意点などについて解説!

システム開発の現場において、セキュリティテストはとても重要なステップです。

今の時代、サイバー攻撃や情報漏洩のリスクが高まっており、企業や組織が自分たちのシステムの安全性を確認することは必須事項となっています。セキュリティテストを通じて、どこに弱点があるかを見つけ、効果的な対策を講じることで、大切な情報を守ることができます。

この記事では、セキュリティテストの目的や種類、手順などについてわかりやすく解説します。

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セキュリティテストとは

セキュリティテストとは、システムやネットワークがサイバー攻撃や不正アクセスなどの脅威から適切に保護されているかを検証する手法です。

このテストは、システムの弱点を特定し、それらの脆弱性を修正することで、データ漏洩やサービス停止などのリスクを未然に防ぐことを目的としています。ペネトレーションテスト脆弱性スキャンセキュリティ監査コードレビューなどが具体的な内容です。

企業や組織が提供するサービスや保有するデータを守るために不可欠なものであり、定期的な実施が推奨されます。また新たなシステム導入時や既存システムの大幅な変更時にも行われ、最新のセキュリティ基準に適合しているかを確認します。

これにより、セキュリティ対策の有効性を継続的に維持し、最新の脅威に対する防御力を強化することができます。

セキュリティテストの重要性

セキュリティテストの重要性は、現代のデジタル社会におけるサイバー脅威の増加に伴い、ますます高まっています。

企業や組織は、機密情報や顧客データを保護する責任があり、これらの情報が不正にアクセスされると、甚大な損害を被る可能性があります。

セキュリティテストを定期的に実施することで、システムの脆弱性を早期に発見し、迅速に対応することが可能になります。これにより、情報漏洩やサービス停止などのリスクを未然に防ぐことができます。

さらに、セキュリティテストは法規制や業界標準に適合するためにも重要です。日本でも情報セキュリティに関する規制が厳しくなっており、これに違反すると法的な制裁を受ける可能性があります。セキュリティテストを実施することで、これらの規制に準拠し、法的リスクを軽減することができます。

また、顧客の信頼を維持するためにも、セキュリティテストは重要です。顧客は自分の情報が安全に保護されていることを期待しており、セキュリティインシデントが発生すると、企業の信頼性が大きく損なわれる可能性があります

したがって、セキュリティテストは企業の持続的な成長と信頼性を確保するための不可欠なプロセスです。

セキュリティテストの4つの目的

セキュリティテストにはいくつかの目的があります。ここではその主要な4つの目的についてご説明します。

弱点を見つけて修正するため

セキュリティテストの最も基本的な目的は、システムやアプリケーションの脆弱性を特定し、修正することです。

脆弱性とは、攻撃者が悪用できるセキュリティ上の欠陥や不具合のことです。脆弱性スキャンやコードレビューなどの手法を使用して、システム全体をチェックし、潜在的なセキュリティホールを発見します。

これにより、システムの安全性を向上させ、攻撃者が侵入する可能性を低減させることができます。具体的な修正作業を行うことで、システムの強化が図られ、信頼性の高い運用が可能となります。

攻撃対策のため

第二の目的は、不正アクセスやデータ漏洩などのサイバー攻撃からシステムを防御するための対策を講じることです。

ペネトレーションテストを通じて、実際の攻撃シナリオを模擬し、防御力を確認します。これは、攻撃者の視点からシステムの脆弱性を見つけ、実際に攻撃が成功するかどうかを検証するプロセスです。

ペネトレーションテストの結果に基づいて、システムの防御策を強化し、セキュリティインシデントのリスクを最小限に抑えることができます。

法規制や業界標準に準拠するため

第三の目的は、法規制や業界標準に準拠することです。

例えば、クレジットカード情報を扱う企業には、PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)という厳格なセキュリティ要件が課されています。セキュリティテストを実施することで、これらの規制を満たしているかどうかを確認し、必要な修正を行います。

コンプライアンスを確保することで、企業は法的なトラブルを避けるとともに、顧客の信頼を維持することができます。

セキュリティ意識を高めるため

最後に、セキュリティテストは組織全体のセキュリティ意識を高めるためにも重要です。

テストの結果を組織内で共有することで、従業員はセキュリティの重要性を理解し、日常業務においてもセキュリティ対策を意識するようになります。これにより、組織全体がセキュリティリスクに対する防御力を高めることができ、セキュリティインシデントの発生を未然に防ぐことができます。

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セキュリティテストの内容

セキュリティテストのなかには、検証したい項目ごとに具体的な内容として、以下のようなテストが含まれます。

ペネトレーションテスト

ペネトレーションテスト侵入テスト、ペンテスト)は、実際の攻撃者が用いる技術やツールを駆使して、システムの脆弱性を攻撃するテストです。

実際にシステムを攻撃することで、セキュリティ機能の回避や無効化を試みながらその耐性を評価します。

目的は脆弱性を特定し、セキュリティ機能が実際の攻撃に対してどれほど有効かを検証することです。このテストは、システムが攻撃に対してどの程度の防御力を持つかを確認し、必要なセキュリティ強化策を講じるための重要な手段です。

ペネトレーションテストは、システムのセキュリティ評価を行う上で非常に実践的かつ効果的な方法であり、システムの脆弱性を深く理解し、実際の攻撃に対する対応力を高めることができます。

また、PCI DSSなどの業界標準においても定期的なペネトレーションテストの実施が推奨されており、法規制や業界基準に準拠するためにも重要です。

脆弱性スキャン

脆弱性スキャンは、自動化されたツールを使用してすでに判明しているシステム内の弱点を洗い出す手法です。

これにより、すでに見つかっているセキュリティホールを効率的にリストアップできます。スキャン結果は、修正が必要な箇所を明確に示し、セキュリティパッチの適用やシステム設定の調整など、具体的な対応策を講じるための基礎情報を得られます。

セキュリティ監査

セキュリティ監査は、セキュリティ方針や手続きが適切に実行されているかを確認するプロセスです。

組織の内部規定や業界基準に基づいて、運用が遵守されているかを確認します。この監査を通じて、セキュリティ管理が適切に機能しているか、改善が必要な箇所があるかを把握することができます。

コードレビュー

コードレビューは、ソースコードを解析して、セキュリティ上の課題を特定する手法です。

開発段階での脆弱性を早期に発見し、修正することで、リリース後のセキュリティリスクを大幅に軽減できます。また、開発者間での知識共有を促進し、全体的なコード品質の向上にも寄与します。

セキュリティテストの種類

セキュリティテストは主に「アプリケーション診断」と「プラットフォーム診断」の2つに大別されます。これらのテストは、それぞれ異なる側面からシステムのセキュリティを評価し、脆弱性を特定して対策を講じるために重要です。

アプリケーション診断

アプリケーション診断は、ソフトウェア、ツール、アプリに関する特有の脆弱性を検査するプロセスです。

悪意のある攻撃者がアプリケーションを通じてシステムに不正アクセスしたり、データを漏洩させたりするための手段はさまざまありますが、それらに対応してテストを行い、脆弱性をはかります。

主な攻撃手段については、次の章でご説明します。

プラットフォーム診断

プラットフォーム診断は、OSやネットワーク機器、サーバーの脆弱性を検査するプロセスです。

これらのプラットフォームは、システム全体の基盤を構成しており、ここに存在する脆弱性はシステム全体のセキュリティに重大な影響を及ぼします。

たとえばオペレーティングシステム(OS)の脆弱性は、攻撃者がシステムに侵入するための入り口となります。これには、パッチが適用されていないバグや設定ミスが含まれます。定期的なOSの更新とセキュリティパッチの適用が必要です。

またルーターやスイッチ、ファイアウォールなどのネットワーク機器も攻撃の入り口となります。これらの機器の設定ミスや古いファームウェアが、ネットワーク全体のセキュリティリスクを高めることになります。

以上のように、アプリケーション診断とプラットフォーム診断は、それぞれ異なる側面からシステムのセキュリティを評価します。両方の診断を組み合わせることで、総合的なセキュリティ対策を講じることができ、システム全体の安全性を高めることが可能です。定期的な診断と適切な対策の実施が、システムの健全な運用に不可欠です。

主な攻撃の手段

サイバー攻撃にはさまざまな種類があります。ここではその主なものについて少しご紹介します。

SQLインジェクション

攻撃者がアプリケーションのデータベースに不正なSQLコードを挿入する攻撃手法です。この脆弱性を悪用されると、データベースの情報を盗まれたり、データの改ざんや削除が行われたりする可能性があります。

OSコマンドインジェクション

OSコマンドインジェクションは、Webアプリケーションが外部からの入力を適切に検証せず実行することで生じるサイバー攻撃です。

攻撃者は不正なOSコマンドを入力フォームに注入し、Webサーバーに意図しない命令を実行させることにより、ファイルの改ざんや削除、情報の流出などの被害を引き起こします。

この攻撃は脆弱なWebアプリケーションを標的とし、攻撃者の指示通りにサーバーが動作してしまうリスクがあります。

クロスサイトスクリプティング(XSS)

攻撃者がウェブページに悪意のあるスクリプトを注入することで、他のユーザーのブラウザ上でそのスクリプトを実行させる攻撃です。

これにより、ユーザーの個人情報やセッション情報が盗まれるリスクがあります。

クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)

クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)は、Webアプリケーションの脆弱性を狙ったサイバー攻撃で、ユーザーのログインセッションを悪用し、当人になりすまして不正リクエストを送信します。

この攻撃により、意図しない情報発信や不正送金、会員情報の書き換えが発生するリスクがあります。特に、セッション管理が不十分なサイトは外部からの悪意あるリクエストを受け入れやすく、ユーザーが意図しない操作を行わせることで、攻撃者の目的が達成されることがあります。

かつては「イメタグ攻撃」とも呼ばれていました。

ディレクトリトラバーサル

ディレクトリトラバーサル攻撃は、Webサイトやアプリケーションで、本来非公開のファイルや情報に不正アクセスする手法です。相対パスを悪用してディレクトリを横断し、非公開のファイルを閲覧・改ざんすることが目的です。

対策には、相対パスの無効化や脆弱性診断が有効です。

強制ブラウジング

強制ブラウジングは、Webページのリンクをたどらずに、アドレスバーに直接URLを入力して非公開のディレクトリやファイルにアクセスを試みる攻撃手法です。

この攻撃は、ディレクトリリスティング、HTMLコメント、URL推測などを利用して非公開の情報を探し出し、不正に閲覧や操作を行います。具体的には、公開されていない管理機能のページや機密情報ファイルにアクセスし、不正にデータを取得したり改ざんすることができます。

対策としては、ディレクトリリスティングの無効化、公開するHTMLファイルのコメント削除、Webサーバの設定強化、アクセス権の適切な設定、不要なファイルやディレクトリの削除、Webアプリケーションファイアウォール(WAF)の導入などがあります。

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手動診断とツール診断どちらが良い?

手動診断とツール診断のどちらが良いかは、目的や状況によって異なります。

手動診断は、専門家が実際にシステムを調査する方法で、精度が高く、細かな脆弱性を見つけることができます

しかし、その分コストが高く、時間もかかるため、リソースに余裕がある場合に適しています。専門的な知識を持つ人が行うため、ツールでは発見しにくい複雑な問題にも対応可能です。

一方、ツール診断は自動化されたツールを使用してシステムを検査します。これにより、短時間で広範囲のチェックが可能となり、コストも比較的低く抑えられます

しかし、ツール診断は一般的な脆弱性に対しては有効ですが、手動診断ほどの精度は期待できません。特に、ツールが対応していない新しい脅威や複雑な攻撃パターンは見逃す可能性があります。

結論として、両者を目的に応じて使い分けることがオススメです。初期段階で広範囲をカバーするためにツール診断を行い、特定の問題や高リスク領域に対しては手動診断を追加することで、より包括的なセキュリティ対策が可能になります。

セキュリティテストの実施手順

セキュリティテストの実施手順は、以下のステップに分けられます。

①計画フェーズ

この段階では、テストの目的、範囲、対象システムを明確に定義し、テストに必要なリソースやツールを準備します。また、関係者とのコミュニケーションを図り、テストスケジュールを策定します。

②実施フェーズ

このフェーズでは、計画に基づき、各種セキュリティテストを実施します。具体的には、脆弱性スキャン、コードレビュー、ペネトレーションテストなどを行い、システムの脆弱性を検出します。

③評価フェーズ

テスト結果を分析し、発見された脆弱性の重大度を評価します。これにより、優先順位をつけて対策を講じることができます。

④報告フェーズ

テストの結果を関係者に報告し、必要な改善策を提案します。これには、テストの詳細な結果や推奨されるセキュリティ対策が含まれます。

⑤フォローアップフェーズ

提案された改善策が適切に実施されているかを確認し、必要に応じて再評価を行います。これにより、セキュリティ対策の効果を確保し、システムの安全性を継続的に向上させることができます。

セキュリティテストの注意点

セキュリティテストを実施する際には、いくつかの注意点があります。

目的と範囲の明確化

テストを実施する際は、事前に目的を明確にし、どの部分を対象とするかをしっかりと定義することが重要です。

これにより、テストの結果が有効であり、無駄のない効率的なテストを実施できます。

専門的な知識とスキルの必要性

セキュリティテストは高度な専門知識を要するため、経験豊富な専門家による実施が求められます。特にペネトレーションテストは実際の攻撃手法を用いるため、専門家の判断が重要です。

ツールの適切な選定

使用するツールはテストの目的に応じて選定する必要があります。ツールの選定が誤っていると、正確な結果が得られない可能性があります。

倫理的および法的な配慮

セキュリティテストは、事前に関係者の同意を得た上で実施することが重要です。無断でのテストは法律違反となる可能性があります。

定期的な実施

セキュリティ環境は常に変化するため、テストは一度きりではなく、定期的に行うことで最新の脅威に対応することが重要です。

これらの注意点を守ることで、セキュリティテストを効果的かつ安全に実施することができます。

まとめ

以上、セキュリティテストの内容や種類、実施手順などについてその全体像を解説いたしました。

セキュリティテストは、システムやネットワークの脆弱性を発見し、不正アクセスやサイバー攻撃から守るためのプロセスです。主な目的は、システムの弱点を特定して修正し、法規制や業界標準に準拠することでリスクを軽減することにあります。

アプリケーション診断やプラットフォーム診断という2種類のテストが存在し、手動診断とツール診断を組み合わせて実施することで、包括的なセキュリティ対策が可能になります。定期的なテストの実施は、最新の脅威に対抗するためにも重要です。

セキュリティテストは、最新の脅威に対処するための重要なステップです。内容を正しく理解して、定期的な実行をすることをオススメいたします!

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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。

記事制作:川上サトシ