WAFとは?その概要やメリット、種類と選び方などを徹底解説!

インターネットはビジネスに不可欠なツールですが、同時に多くのセキュリティリスクも抱えています。

特に、Webサイトはサイバー攻撃の標的となりやすく、情報漏洩や改ざんなどの被害に遭う可能性があります。

「会社のWebサイトが攻撃されないか心配…」そんなお悩みをお持ちの企業担当者の方も多いのではないでしょうか。

そこで今回はWebサイトをサイバー攻撃から守るためのセキュリティ対策であるWAF(Web Application Firewall)について解説します。

WAFの基本から導入・設定方法まで、あなたの会社のWebサイトを守るために必要な情報をわかりやすくお伝えします。

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WAFとは?

WAFの概要

WAF(Web Application Firewall)とは、Webアプリケーションの脆弱性を悪用した攻撃からWebサイトを保護するセキュリティ対策です。

従来のファイアウォールはネットワーク層で通信を監視し、不正なアクセスを遮断します。

それに対してWAFはアプリケーション層で通信を監視し、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなどのWebアプリケーション特有の攻撃を検知・防御します。

近年、サイバー攻撃は多様化・巧妙化しており、従来のファイアウォールだけでは防ぎきれない攻撃が増えています。

WAFは、Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃に特化して防御するため、Webサイトのセキュリティ強化に不可欠な存在となっています。

WAFの役割

WAFの主な役割は、Webアプリケーションへの不正なアクセスを検知・遮断し、Webサイトを保護することです。

具体的には、Webアプリケーションとユーザー間の通信を監視し、不正なパターンや攻撃コードを検知すると、通信を遮断したり、警告を発したりします。

WAFの仕組み

WAFの仕組みは、主にシグネチャ型、異常検知型、ハイブリッド型の3種類に分けられます。

シグネチャ型は、既知の攻撃パターンをデータベースに登録し、通信内容と照合して不正なアクセスを検知します。

異常検知型は、通常の通信パターンを学習し、そこから逸脱した通信を不正なアクセスとして検知します。

ハイブリッド型は、シグネチャ型と異常検知型を組み合わせたもので、より高度な攻撃にも対応できます。

なぜWAFが必要なのか?

サイバー攻撃は年々巧妙化

現代のサイバー攻撃は、かつてないほど高度化し、その手法は日々進化しています。

従来のファイアウォールやIDS/IPSといったセキュリティ対策では、Webアプリケーション層への攻撃を防ぎきれないケースが増加しています。

例えば、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった、Webアプリケーションの脆弱性を突く攻撃は、従来のセキュリティシステムでは検知が困難です。

これらの攻撃は、Webサイトの改ざんや個人情報漏洩など、企業にとって深刻な被害をもたらす可能性があります。

そのため、Webアプリケーションに特化した防御策であるWAFの導入が不可欠となっています。

WAFがあれば、未知の攻撃も防御可能

WAFは、シグネチャによる検知だけでなく、異常検知や仮想パッチといった技術を組み合わせることで、未知の攻撃にも対応可能です。

シグネチャによる検知は、既知の攻撃パターンと一致する通信を遮断しますが、未知の攻撃には効果がありません。

一方、異常検知は、通常の通信パターンを学習し、そこから逸脱した通信を遮断することで、未知の攻撃を検知します。

また、仮想パッチは、Webアプリケーションの脆弱性が修正されるまでの間、WAF側で脆弱性をカバーすることで、攻撃のリスクを低減します。

これらの技術により、WAFは常に最新の脅威に対応し、Webサイトを保護します。

WAF導入で得られるメリット

WAFを導入することで、Webサイトのセキュリティレベルが向上し、企業は様々なメリットを得ることができます。

まず、Webサイトの改ざんや情報漏洩といったセキュリティインシデントのリスクを低減できます。これにより、顧客や取引先からの信頼を維持し、企業のブランドイメージを守ることができます。

また、セキュリティインシデントが発生した場合の復旧費用や損害賠償といった経済的な損失を回避できます。

さらに、WAFはWebアプリケーションの脆弱性を可視化し、改善を支援する機能も提供します。これにより、開発者はセキュアなWebアプリケーションを開発できるようになり、セキュリティ対策の効率化にも貢献します。

WAFとFW、IPSの違い

WAFとFW(ファイアウォール)の違い

WAFとファイアウォールは、どちらもネットワークセキュリティに不可欠な要素ですが、保護する対象と防御する層が大きく異なります。

ファイアウォールは、ネットワークの境界線に位置し、主にIPアドレスやポート番号に基づいて通信の許可・遮断を制御します。

つまり、ネットワーク層でのアクセス制御に重点を置いているのです。

一方、WAFはWebアプリケーションの前面に配置され、HTTP/HTTPSリクエストの内容を詳細に検査します。

これにより、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった、アプリケーション層に特有の攻撃を防御します。

ファイアウォールは、ネットワーク全体を広範囲に保護するのに対し、WAFはWebアプリケーションに特化した、よりきめ細かい防御を提供します。

WAFとIPS(侵入防御システム)の違い

WAFとIPSもまた、異なるレイヤーで機能するセキュリティツールです。

IPSは、ネットワークを流れるトラフィックを監視し、不正なパターンや攻撃シグネチャに一致する通信を検出し、遮断します。

IPSは、ネットワーク層からアプリケーション層まで、広範囲にわたる攻撃を検知し防御する能力を持っているのです。しかし、Webアプリケーションの脆弱性を突くような、アプリケーション層に特化した攻撃には限界があります。

WAFは、IPSよりもさらにアプリケーション層に深く入り込み、Webアプリケーションの通信内容を解析し、不正なリクエストを遮断します。

例えば、IPSは不正なパケットを検出し遮断しますが、WAFはSQLインジェクションのような、正規のHTTPリクエストに偽装された攻撃を検出し防御します。

このように、IPSはネットワーク全体の脅威に対応し、WAFはWebアプリケーション特有の脅威に特化している点が異なります。

WAFの種類と選び方

ホスト型WAF(ソフトウェア型WAF)

ホスト型WAFは、Webサーバーにインストールするソフトウェア型のWAFです。

アプリケーションと同じサーバー上で動作するため、設定の自由度が高く、詳細なカスタマイズが可能です。

たとえば、特定のアプリケーションに合わせたルール設定や、独自のシグネチャ(攻撃パターン)の追加などができます。

また、サーバーのリソースを直接利用するため、パフォーマンスの最適化も可能です。

しかし、ホスト型WAFは、サーバーに負荷がかかる場合や、他のアプリケーションとの競合が発生する可能性があるため、注意が必要です。

また、WAFの管理やアップデートも自社で行う必要があるため、専門的な知識を持つ人材が求められます。

ゲートウェイ型WAF(ネットワーク型WAF)

ゲートウェイ型WAFは、ネットワークの境界に設置するハードウェア型のWAFです。

Webサーバーへの通信を通過させる前に、WAFが全てのトラフィックを検査し、不正なアクセスを遮断します。ネットワーク全体を保護するため、複数のWebアプリケーションをまとめて保護するのに適しています。

たとえば、複数のWebサーバーを運用している場合や、クラウド環境でWebアプリケーションを運用している場合などに有効です。

ゲートウェイ型WAFは、ネットワークの構成を変更する必要があるため、導入には一定の専門知識が必要です。

また、ハードウェアの購入や設置、メンテナンスにもコストがかかる場合があります。

サービス型WAF

サービス型WAFは、クラウド上で提供されるWAFサービスです。

ユーザーは、ソフトウェアやハードウェアの設置、設定、メンテナンスなどを自社で行う必要がなく、手軽にWAFを導入できます。

たとえば、中小企業や、Webサイトのセキュリティに専門的な知識を持つ人材がいない企業などに適しています。

サービス型WAFは、クラウド上で提供されるため、常に最新のセキュリティ対策が適用され、アップデートも自動的に行われます。

また、従量課金制や月額課金制など、柔軟な料金体系が用意されている場合が多く、コストを抑えてWAFを利用できます。

ただし、サービス型WAFは、提供事業者に依存するため、カスタマイズの自由度が低い場合や、事業者のサービスが停止した場合に影響を受ける可能性があるため、注意が必要です。

WAFの導入方法

WAFの導入方法は、主に3つのステップに分けられます。

まず、自社のWebサイトのセキュリティ要件と、WAFの導入目的を明確にしましょう。

次に、要件と目的に合ったWAFの種類を選定します。

ホスト型、ゲートウェイ型、サービス型のいずれか、またはこれらの組み合わせから、自社の環境に最適なものを選びます。

WAFを選定したら、次は導入と設定です。

ホスト型の場合は、WebサーバーにWAFソフトウェアをインストールし、設定を行います。

ゲートウェイ型の場合は、ネットワーク構成を変更し、WAFハードウェアを設置、設定します。

サービス型の場合は、クラウド上のWAFサービスに申し込み、WebサイトのトラフィックをWAF経由でルーティングするように設定します。

設定では、WAFの動作モード(検知モードまたは防御モード)や、セキュリティルールを設定します。

たとえば、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなどの攻撃を防御するためのルールや、特定のIPアドレスからのアクセスを制限するルールなどを設定します。

WAFの導入後は、定期的な運用と保守が重要です。WAFのログを監視し、不正なアクセスや攻撃を早期に発見、対応します。

また、WAFのセキュリティルールやソフトウェアを最新の状態に保つために、定期的なアップデートやメンテナンスを行います。

WAFの導入は、Webサイトのセキュリティを強化するための有効な手段ですが、適切な計画と運用が不可欠です。

まとめ

今回はWAFの基本から導入・設定方法まで、Webサイトのセキュリティ対策に必要な情報を網羅的に解説しました。

WAFは、Webアプリケーションの脆弱性を悪用した攻撃からWebサイトを保護するセキュリティ対策であり、ファイアウォールやIPSとは異なる役割を担っています。サイバー攻撃が巧妙化する現代において、WAFはWebサイトのセキュリティ強化に不可欠な存在です。

WAF導入により、Webサイトの改ざんや情報漏洩リスクを低減し、顧客や取引先からの信頼を維持できます。また、セキュリティインシデント発生時の経済的損失回避や、Webアプリケーションの脆弱性可視化・改善といったメリットも得られます。

WAFには、ホスト型、ゲートウェイ型、サービス型の3種類があり、それぞれ特徴が異なります。自社のWebサイトのセキュリティ要件と導入目的に合わせて、最適なWAFを選びましょう。

WAFの導入は、目標設定、種類選定、導入・設定、運用・保守の4つのステップで進めます。適切な計画と運用により、WAFはWebサイトのセキュリティを強力に保護します。

この記事が、あなたの会社のWebサイトを守るための一助となれば幸いです。

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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。

記事制作:川上サトシ