状態遷移図マスター講座|初心者でも仕様書がスラスラ書ける!

システム開発におけるドキュメント作成は、多くのエンジニアが頭を悩ませる作業です。仕様書作成に時間がかかり、残業が増えてしまうという声も少なくありません。
しかし、状態遷移図を効果的に活用することで、この状況を大きく改善できます。
状態遷移図は、システムの挙動を視覚的に表現し、関係者間の認識のズレを防ぎます。そのため、手戻りが減り、結果として残業時間の削減につながるのです。
そこで今回は状態遷移図の基本から実際の書き方、応用的な知識までを徹底解説します!

1.【基本編】状態遷移図って何?
状態遷移図の基本と役割
状態遷移図は、システムの「状態」と、状態がどのように変化するかを視覚的に表現する図です。
システム開発において、複雑なシステムの挙動を明確化し、関係者間で共通認識を持つために不可欠なツールと言えるでしょう。
例えば、スイッチで点灯するライトを考えてみましょう。「点灯」「消灯」というふたつの状態があり、それぞれの状態は、スイッチの「オン」と「オフ」を入れ替えることで変化します。

このように、状態遷移図を用いることで、システムの挙動を正確に把握し、設計や開発におけるミスを減らすことができるのです。
仕様書に状態遷移図を記載することで、システム全体の動きが分かりやすくなり、認識の齟齬を防ぎ、手戻りの少ない開発に繋がります。
状態、遷移、イベントって?
状態遷移図を構成する主要な要素は、「状態」「遷移」「イベント」の3つです。
「状態」とは、システムがある時点でどのような状況にあるかを示します。
例えば、信号機であれば「青」「黄」「赤」が状態に該当します。
「遷移」とは、ある状態から別の状態へ移り変わることを指し、矢印で表現されます。信号機の例では、「青」から「黄」への変化が遷移です。
「イベント」とは、状態の変化を引き起こすきっかけとなる出来事です。信号機の例では、時間経過やセンサーによる検知がイベントになります。
これらの要素を組み合わせることで、システムの挙動を分かりやすく表現できるため、専門用語に対して身構える必要はありません。
2.【実践編】状態遷移図を書いてみよう!
状態遷移図作成の流れ
状態遷移図の作成は、システム開発を効率化するための重要なステップです。
まず、システムの「状態」を洗い出します。
次に、状態間の「遷移」と、それを引き起こす「イベント」を明確にします。
最後に、洗い出した状態、遷移、イベントを図に落とし込みます。
例えば、オンラインショッピングサイトの購入フローを考えてみましょう。
最初に「商品選択」、次に「カートに追加」、そして「購入手続き」、最後に「購入完了」といった状態が考えられます。
これらの状態と、ユーザーの操作によって状態がどのように変化するかを図にすることで、システムの挙動が明確になります。
このプロセスを踏むことで、複雑なシステムも整理しやすくなるでしょう。
【例題】自動販売機の遷移図を作成
ここでは、自動販売機を例に状態遷移図の作成手順を解説します。
自動販売機の状態は、「待機」「商品選択」「払い出し」とします。
「待機」状態からお金が投入されると「商品選択」状態へ遷移し、商品が選択されると「払い出し」状態へ遷移します。
商品が払い出されると「待機」状態へ遷移します。

このように、状態と遷移を順番に整理していくことで、システムの挙動が分かりやすくなります。
例題では自動販売機を例に解説しましたが、他のシステムでも基本的な考え方は同じです。
まずは簡単な例から始め、徐々に複雑なシステムに挑戦していくと良いでしょう。
状態遷移図作成ツール紹介
状態遷移図を作成するツールは数多く存在しますが、ここでは特におすすめのツールを3つ紹介します。
GitMind
GitMindは、多機能なオンライン作図ツールとして、状態遷移図の作成にも非常に便利です。
特徴としては、まずそのアクセシビリティの高さが挙げられます。
ウェブブラウザ上で動作するため、インストール不要でどこからでもアクセスでき、チームでの共同作業もスムーズに行えます。
状態遷移図に必要な図形やコネクタが豊富に用意されており、ドラッグ&ドロップの直感的な操作で、初心者でも容易に図を作成できます。
また、多様なテンプレートが用意されているため、ゼロから図を作成するのが不安な場合でも、既存のテンプレートをベースに編集することで、効率的に作業を進めることが可能です。
さらに、作成した図はクラウド上に保存されるため、データの共有やバックアップも容易であり、チームでのプロジェクトに最適です。
Lucidchart
Lucidchartは、プロフェッショナルな図作成ツールとして、特にビジネスシーンでの利用に適しています。
状態遷移図を含む様々な図を、高度な機能と使いやすいインターフェースで作成できます。
特筆すべきは、共同編集機能の充実度です。リアルタイムでの共同編集が可能であり、チームメンバーと同時に作業を進めることで、効率的なコミュニケーションとスムーズな図作成が実現します。
また、多様なテンプレートや図形ライブラリが用意されており、プロフェッショナルな図を容易に作成できます。
さらに、Google WorkspaceやMicrosoft Officeなどの外部ツールとの連携も可能であり、既存のワークフローにLucidchartを組み込むことで、より効率的な作業環境を構築できます。
ただし、無料プランでは機能に制限があるため、本格的な利用を検討する場合は有料プランへの加入を検討する必要があります。
これらのツールを使いこなすことで、状態遷移図の作成が効率化され、より正確なシステム設計が可能になるでしょう。
無料、高機能、テキスト生成と、それぞれのツールで特徴が違うため、自分の用途に合わせて使い分けるのが良いでしょう。
3.【応用編】状態遷移図でレベルUP!
状態遷移図でよくあるNG例
状態遷移図を作成する際、陥りがちなNG例がいくつか存在します。
例えば、状態遷移が複雑になりすぎると、図が煩雑になり、かえって理解を妨げる可能性があります。
また、状態や遷移の定義が曖昧だと、関係者間で認識の齟齬が生じやすくなります。
さらに、例外ケースを考慮漏れすると、システムの挙動が不完全になる恐れがあります。
これらの罠を回避するためには、状態遷移図をシンプルに保ち、状態や遷移の定義を明確にし、例外ケースも網羅的に考慮することが重要です。
具体的には、状態数を必要最小限に抑えたり、状態遷移の条件を具体的に記述したり、エラー処理などの例外ケースも図に含めるなどの対策が考えられます。
これらの点に注意することで、より質の高い状態遷移図を作成し、システム開発をスムーズに進めることができるでしょう。
複雑なシステムも怖くない!
複雑なシステムの状態遷移図を作成する際は、いくつかのコツを押さえておくことで、混乱を避け、効率的に作業を進めることができます。
まず、システムを小さな部分に分割し、それぞれの部分の状態遷移図を作成します。
次に、分割した状態遷移図を統合し、全体のシステムの状態遷移図を作成します。この際、階層構造を利用すると、複雑なシステムも整理しやすくなります。
また、状態遷移図を作成する際は、関係者とのコミュニケーションを密にし、フィードバックを積極的に取り入れることが重要です。第三者に状態遷移図をレビューしてもらうことで、新たな視点から改善点を見つけられるかもしれません。
これらのコツを活用することで、複雑なシステムも体系的に理解し、正確な状態遷移図を作成することができるでしょう。
仕様書レビューをスムーズにする方法
状態遷移図は、チーム内での情報共有や仕様書レビューを円滑に進めるための強力なツールとなります。
状態遷移図を用いてシステムの挙動を視覚的に表現することで、言葉だけでは伝わりにくい複雑なロジックも、チームメンバー間で正確に共有できます。
また、仕様書レビューの際には、状態遷移図を基に議論することで、認識の齟齬を減らし、効率的にレビューを進めることができます。
レビュー担当者は、状態遷移図と照らし合わせながら仕様書をチェックすることで、システムの挙動をより深く理解し、的確な指摘を行うことができるでしょう。
さらに、レビューで指摘された修正箇所も、状態遷移図上で視覚的に確認できるため、手戻りを減らし、スムーズな仕様書作成に繋がります。
まとめ
状態遷移図は、システム開発における強力なツールであり、仕様書作成の効率化、チーム内のコミュニケーション円滑化、そしてエンジニア自身のスキルアップに大きく貢献します。
今回は状態遷移図の基本概念から実践的な書き方、さらには応用的なテクニックまでを網羅的に解説しました。
基本編では、状態遷移図の役割や構成要素を理解し、システム開発におけるその重要性を確認しました。
実践編では、自動販売機を例に状態遷移図の作成手順を学び、具体的なツール紹介を通じて、状態遷移図の作成をより身近に感じていただけたかと思います。
応用編では、よくあるNG例とその回避策、複雑なシステムに対応するためのコツ、そしてチームでの連携に役立つ方法を紹介しました。
状態遷移図をマスターすることで、仕様書作成の時間が短縮され、残業時間の削減にもつながります。
また、チームメンバーとの認識のズレが減り、スムーズなコミュニケーションが可能になります。
さらに、自身のスキルアップにも繋がり、より高度なプロジェクトに挑戦できる機会も増えるでしょう。
状態遷移図を使いこなして、より効率的で質の高いシステム開発を目指しましょう!
まずはホワイトペーパーをご覧ください!

この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ