キーワード駆動テストとは?その仕組みやメリットを徹底解説!

キーワード駆動テストとは、テストの操作を「キーワード」として抽象化し、テスト設計と実装を明確に分離する手法です。

これにより、非エンジニアでもテスト設計に参加できるようになり、チーム全体の協業性が高まります。またテストの自動化にも貢献します。

そこで今回はこのキーワード駆動テストの基本的な概念から、その具体的な仕組み、データ駆動テストといった類似手法との違い、さらに導入のメリット・デメリットまでを網羅的に解説します!

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キーワード駆動テストとは?

キーワード駆動テストとは、テストケースを「キーワード」と「データ」に分解して記述するテストの設計手法です。

従来のテストはプログラミング言語の知識が必要でしたが、この手法では特定の操作や検証を表すキーワードを共通の語彙として定義し、それを組み合わせてテストシナリオを作成します。

たとえば、「ログイン」というキーワードは「ユーザー名とパスワードを入力してログインボタンをクリックする」という一連の操作を抽象化したものです。

この手法の最大の目的は、テストの設計と実装を分離することです。

これにより、ドメイン知識が豊富な非エンジニアでも、キーワードを組み合わせるだけでテストケースを設計できるようになります。

テストの実装(つまり、キーワードに対応する具体的なコード)はエンジニアが担当するため、役割が明確になります。

データ駆動テストなど類似手法との違い

キーワード駆動テストは、データ駆動テストやキャプチャー・リプレイなど、他のテスト手法と混同されがちですが、それぞれに明確な違いがあります。

データ駆動テストとの違い

データ駆動テストは、テストスクリプト(コード)は固定したまま、テストデータだけを外部ファイル(CSVやExcelなど)から読み込んで実行する手法です。

これにより、同じロジックで複数のデータパターンを検証できます。

一方、キーワード駆動テストは、データの違いだけでなく、テストのロジックそのものをキーワードの組み合わせで表現します。

つまり、データ駆動テストが「何をテストするか(データ)」に焦点を当てるのに対し、キーワード駆動テストは「どのようにテストするか(ロジック)」も抽象化する点で異なります。

このため、キーワード駆動テストはより複雑で多様なテストシナリオに対応できます。

キャプチャー・リプレイとの違い

キャプチャー・リプレイはテスト担当者の操作を記録し、それを自動で再生する手法です。

手軽に自動テストを作成できますが、UIの変更に非常に弱く、少しでも画面レイアウトが変わるとテストが失敗しやすくなります。

メンテナンス性が低く、テストの再利用も困難です。

それに対し、キーワード駆動テストは、キーワードという抽象的な層を間に挟むため、UIが変わってもキーワードに対応するコードだけを修正すればよく、テストシナリオ自体を書き換える必要はありません。

これにより、メンテナンス性が格段に向上し、テストの再利用も容易になります。

キーワード駆動テストの仕組み

設計と実装の分離

キーワード駆動テストの最大の特長は、テストの「設計」と「実装」を明確に分離する点にあります。

従来のテスト自動化では、テストエンジニアがテストのロジックをプログラミング言語で記述する必要がありました。

しかし、この手法では、テストの設計はキーワードやデータを用いて表形式で記述され、テストの実装は別のファイルやモジュールとして管理されます。

この分離によって、ドメイン知識を持つ非エンジニアやQA担当者でも、テストの自動化に深く関わることが可能になります。

キーワードの役割

キーワード駆動テストにおけるキーワードは、テストの自動化を支える核となる概念です。

キーワードは、「ログイン」「商品の検索」「カートに入れる」といった特定の操作や検証を表す「命令」の役割を果たします。

これらのキーワードは、テストの目的や手順を人間が理解しやすい言葉で定義したもので、誰が読んでもテストの意図がわかるようにすることが重要です。

たとえば、「ログイン」というキーワードは、内部的には「ユーザー名入力欄に値を設定し、パスワード入力欄に値を設定し、ログインボタンをクリックする」という一連の具体的な操作に対応します。

このように、複数のステップからなる複雑な操作も一つのキーワードとして抽象化できます。

実装コードとの対応付け

キーワード駆動テストでは、キーワードと、そのキーワードに対応する具体的な自動テストのコード(実装コード)を関連付ける必要があります。

この対応付けは、通常「ドライバー」や「テストフレームワーク」と呼ばれるプログラムが担います。このフレームワークが、テストスクリプトに記述されたキーワードを読み込み、それに対応する実装コードを呼び出して実行します。

たとえば、テストスクリプトに「ログイン」というキーワードが書かれていた場合、フレームワークは「ログイン」というキーワードに対応するメソッドや関数を検索し、その中のコードを実行します。

この実装コードには、特定のウェブページのユーザー名入力フィールドを特定し、指定されたデータを入力する、といった具体的な操作が記述されています。

テストスクリプトの構造

キーワード駆動テストにおけるテストスクリプトは、ExcelやCSVファイルなどの表形式で作成されることが一般的です。このスクリプトは主に、「キーワード」と「データ」の二つの要素で構成されます。

キーワード: 実行する操作や検証を表します。

データ: キーワードが操作する具体的な値(例:ユーザー名、パスワード、検索キーワードなど)です。

スクリプトはこれらの要素を行ごとに並べることで、テストシナリオを記述します。

例えば、「ブラウザ起動」というキーワードの後に「ログイン」というキーワードを置き、それぞれのキーワードに対応するデータを指定します。

自動化の流れ

キーワード駆動テストの自動化は、通常以下のステップで進行します。

1.キーワードの定義

テスト自動化エンジニアが、テスト対象システムに必要な操作を洗い出し、再利用可能なキーワードとして定義します。

この際、キーワードに対応する実装コードも同時に作成します。

2.テストスクリプトの作成

ドメイン知識を持つメンバーが、定義されたキーワードとテストデータを組み合わせて、テストケースをExcelなどの表形式で作成します。

3.テストの実行

テスト自動化フレームワークが作成されたテストスクリプトを読み込み、キーワードの記述に従って実装コードを呼び出し、自動でテストを実行します。

4.結果の分析

実行結果のログやレポートが生成され、テストの成否を確認します。

キーワード駆動テストのメリット

依存の排除と保守性向上

キーワード駆動テストを導入することで、テストケースの設計と実装コードの間の依存関係を最小限に抑えられます。

従来の自動テストでは、テストロジックがコードに直接記述されるため、ユーザーインターフェース(UI)の変更などが発生するとテストコード全体を修正する必要がありました。

しかし、キーワード駆動テストでは、テストケースは「ログイン」や「検索」といった抽象的なキーワードで構成されており、具体的な操作内容は実装コードに集約されます。

この構造により、例えばUIのボタンの位置が変わったとしても、修正が必要なのはキーワードに対応する実装コードのみです。

テストスクリプト自体には手を加える必要がないため、テスト仕様のメンテナンス負荷が大幅に軽減されます。

また、キーワードと実装コードが独立していることで、複数のテストケースで同じキーワードを再利用でき、重複したコードの記述も防げます。

結果として、テストコードの保守が容易になり、長期的なプロジェクトにおけるテスト自動化の継続性を高めることが可能になります。

無駄のない再利用性・機能性

キーワード駆動テストは、テストの無駄を排除し、再利用性を最大限に高めるメリットがあります。

テスト対象のシステムにおける共通の操作をキーワードとして定義し、その実装コードを一度作成すれば、あとは異なるテストケースで何度でもそのキーワードを呼び出して再利用できます。

これにより、テストスクリプトの作成が効率化され、テストケースが非常に多いシステムでも、手作業に比べて圧倒的なスピードで自動テストを構築できます。

また、キーワードに渡すデータを外部ファイルで管理することで、一つのテストスクリプトで複数のデータパターンを検証するデータ駆動テストの機能も容易に組み込めます。

これにより、多様なテストシナリオを少ない労力で実現できます。例えば、「ログイン」というキーワードに対して、成功パターンだけでなく、失敗パターンや不正なデータを使ったテストも、データファイルを変えるだけで網羅的に実行できます。

テストの設計と実行が柔軟になるため、効率的かつ網羅性の高いテストを少ない工数で実現できるのです。

非エンジニアも関われる協調性

キーワード駆動テストの大きな利点の一つは、非エンジニアメンバーもテストの設計に積極的に参加できる点です。

従来のテスト自動化はプログラミングスキルが必須であり、テストエンジニアや開発者といった一部のメンバーにしか自動化の権限がありませんでした。

しかしこの手法では、テストスクリプトが「キーワード」と「データ」で構成される表形式になるため、プログラミングの知識がなくてもテストの意図や流れを容易に理解できます。

テストスクリプトの作成を、システムのドメイン知識が豊富なQA担当者やプロジェクトマネージャーが担当し、実装コードをエンジニアが担当するといった役割分担が可能になります。

これにより、ビジネス要件を正確に反映したテストケースを作成でき、テストの網羅性や品質が向上します。

キーワード駆動テストのデメリット

初期構築コストの高さ

キーワード駆動テストの導入には、初期構築に多くの時間とリソースが必要となる場合があります。

この手法を機能させるにはまずテスト対象システムに必要な操作を洗い出し、共通の「キーワード」として定義する作業が必要です。

さらにそれぞれのキーワードに対応する実装コードをゼロから作成しなければなりません。

これにはテストフレームワークの選定や構築、共通ライブラリの整備なども含まれるため、プロジェクトの初期段階で一定の工数と専門知識が求められます。

特に、システムの機能が多岐にわたる場合や、UIが頻繁に変更されるようなプロジェクトでは、このキーワード定義と実装の初期コストが大きくなりがちです。

また、すべてのテストケースをキーワード駆動テストに移行するのではなく、既存の自動テストと併用する場合はそれぞれの管理方法を検討する必要も出てきます。

長期的なメンテナンス性を考えれば有効な投資ですが、短期的なコスト削減を目的とする場合は導入のハードルになる可能性があります。

この初期コストを考慮し、段階的な導入計画を立てることが成功の鍵となります。

キーワード管理の複雑化

キーワード駆動テストを導入・運用していく中で、キーワードの数が膨大になり、管理が複雑化する課題に直面することがあります。

プロジェクトが拡大し、新しい機能が追加されるたびに、新しいキーワードが定義されます。

このプロセスを適切に管理しないと、似たような意味を持つキーワードが複数存在したり、どのキーワードが何を意味するのか不明瞭になったりするリスクがあります。

キーワードが乱立すると、テストスクリプトを作成する際にどのキーワードを選べば良いか迷いが生じ、結果として可読性が低下します。

また重複したキーワードが増えると、実装コードのメンテナンスも煩雑になり、せっかくの保守性のメリットが薄れてしまいます。

この課題を避けるためには、キーワードの命名規則を厳密に定め、定期的にレビューや整理を行う運用体制を確立することが不可欠です。

キーワード辞書を作成し、チーム全体で共有する仕組みを整えることも、この問題を軽減する有効な手段となります。

学習コストや運用定着の難しさ

キーワード駆動テストは、設計と実装が分離されているため、チームメンバー全員がその仕組みを理解し、適切に運用するまでに一定の学習コストがかかります。

特に、これまでプログラミングに触れてこなかった非エンジニアにとっては、キーワードやテストスクリプトの概念を理解し、実際にテストケースを作成できるようになるまで時間がかかる場合があります。

また、プロジェクトの規模やメンバーの入れ替わりが多い場合、新しいメンバーへの教育や、運用ルールの浸透にも労力がかかります。

キーワードの定義や実装コードの作成といった専門的な部分はテストエンジニアに任せられますが、テストスクリプトの作成やキーワードの選択、テスト結果の分析といった作業はすべての関係者が関わることになります。

このためチーム全体でこの手法の価値を共有し、継続的に運用ルールを改善していく必要があります。

導入後の運用定着には定期的な勉強会やドキュメントの整備、そしてチーム全体での継続的な取り組みが求められます。

まとめ

キーワード駆動テストは、テストの「設計」と「実装」を分離することで、エンジニア依存やテスト自動化の課題を解決する強力なアプローチです。

この手法の最大の利点は、プログラミング知識がない非エンジニアでもテスト設計に関われる点にあります。

これにより、ビジネス要件をより正確に反映したテストケースを作成でき、テストの網羅性や品質が向上します。

一方で、初期構築のコストやキーワード管理の複雑さ、そして運用定着までの学習コストといったデメリットも存在します。

導入を成功させるためには、プロジェクトの特性に合わせて最適なキーワードの粒度を見極め、チーム全体で運用ルールを共有することが重要です。

長期的な視点でテストのメンテナンス性や再利用性を向上させたい、あるいはチーム内の協業性を高めたいと考えているなら、キーワード駆動テストは有効な選択肢となります。

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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。

記事制作:川上サトシ