キャプチャー&リプレイとは?その仕組みや注意点、コツを徹底解説!

日々の開発現場で、リリース前のテストに多くの時間を費やしていませんか?
プロジェクトマネージャーから効率化を求められ、何から手をつけていいか悩んでいるかもしれません。
そこで注目されているのが、「キャプチャー&リプレイ」という手法です。
この手法はテストの自動化をプログラミングの専門知識がない人でも簡単に始められるように設計されており、多忙なQAエンジニアにとって大きな助けとなります。
そこで今回はキャプチャー&リプレイの基本的な仕組みから、直面しがちな課題、そしてそれを乗り越えるための具体的なヒントまで、テスト自動化リーダーが成果を出すために必要な情報を徹底的に解説します。

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キャプチャー&リプレイ(レコード&プレイバック)とは?
テスト工数を効率化するための手法として、「キャプチャー&リプレイ」や「レコード&プレイバック」といった言葉を聞いたことがあるかもしれません。
これは、プログラミングの専門知識がない人でも、簡単にテストの自動化を始められる画期的な手法です。
その基本的な考え方は、非常にシンプルです。
まず、「キャプチャー」や「レコード」と呼ばれるフェーズでは、テスト対象のアプリケーションを実際に操作し、その一連の動作をツールがすべて記録します。
例えば、ログイン画面でIDとパスワードを入力して、ログインボタンをクリックする、といった操作です。
この記録された操作は、まるでビデオカメラで映像を撮るように、詳細なステップとして保存されます。
次に、「リプレイ」や「プレイバック」と呼ばれるフェーズでは、記録した操作を自動で再現します。
ツールが保存されたスクリプトを読み込み、人間が操作するのと同じように、画面上の要素を自動でクリックしたり、文字を入力したりしていきます。
この仕組みによって、毎回手動で繰り返していたテスト作業を、ワンクリックで何度も実行できるようになるのです。
注意点として、キャプチャー&リプレイはあくまで「操作を記録・再生する」仕組みであり、複雑な検証ロジックを自動で組み込むわけではないことを理解しておく必要があります。
例えば、「ログイン後に表示されるユーザー名が正しいか」といった内容を検証するためには、別途ツール側の設定やスクリプトへの追記が必要になる場合があります。
テスト自動化における役割と位置づけ
キャプチャー&リプレイは、テスト自動化の世界で特に「非プログラマーでも使いやすい」という点で重要な役割を担っています。
複雑なコードを書くことなくGUI操作だけでテストスクリプトを作成できるため、テスト自動化の専門家だけでなく、品質保証チームやプロジェクトマネージャーなどさまざまな役割の人が自動化の恩恵を受けられます。
特に、回帰テストの自動化においては、非常に強力なツールとなります。
回帰テストとは、新しい機能を追加したり既存のバグを修正したりした際に、以前は正常に動作していた部分に影響がないかを確認するテストのことです。
このテストは、システムの変更があるたびに毎回同じ手順を繰り返す必要があり、非常に手間がかかります。
キャプチャー&リプレイツールを使えば、初回にテスト手順を記録しておくだけで、その後の回帰テストは再生ボタンを押すだけで完了します。
これにより手作業による実行ミスを防ぎつつ、テスト時間を大幅に短縮できます。
あなたのチームが抱えているリリース前のテスト工数削減という課題に対して、このツールは大きな効果を発揮する可能性があります。
しかし、この手法は万能ではありません。
テストスクリプトのメンテナンスが課題となる場合もあります。
例えば画面のUIが少し変更されただけで、記録したスクリプトが使えなくなることがあります。
これは「画面要素の特定」が、ツールによって変化に弱い可能性があるからです。
ツールによってはこのメンテナンス性を高める工夫がされているため、導入前にその点をしっかり確認することが、将来の運用工数削減につながる重要なポイントとなります。
キャプチャー&リプレイの仕組み
操作をレコーディングしテスト手順を作成する(キャプチャ機能)
キャプチャー&リプレイツールの中核をなすのが「キャプチャ」機能です。
これは私たちがWebブラウザやアプリケーション上で行う一連の操作を、まるで動画を撮影するように記録する機能です。
たとえば、ECサイトで商品を検索し、カートに入れ、購入手続きを進めるという一連のテストを自動化したいとします。
このとき、キャプチャ機能を起動した状態でこれらの操作を手動で実行すると、ツールが各ステップを自動的に記録していきます。
具体的にはどのボタンがクリックされたか、どのテキストボックスにどんな文字が入力されたかといった情報が、まるで台本のように順番に記録されます。
この台本はテストスクリプトと呼ばれ、ツールによってはGUIベースで視覚的に確認できるようになっています。
これにより、コードを書くスキルがなくても、直感的にテストスクリプトを作成できるため、テスト自動化のハードルが大きく下がります。
この機能は、単に操作を記録するだけでなく、記録したスクリプトを編集する機能も備えていることが一般的です。
例えば、テストデータ(ログインIDやパスワードなど)を修正したり、不要なステップを削除したりすることが可能です。
レコーディングした手順をデバッグ実行で確認する(リプレイ機能)
キャプチャ機能で作成したテストスクリプトは、「リプレイ」機能を使って実際に実行(再生)することができます。
リプレイ機能は、記録されたテストスクリプトを読み込み、それに従ってアプリケーションを自動で操作します。
これにより、人間が毎回手動で行っていた繰り返し作業を、ツールが高速かつ正確に再現してくれます。
リプレイ実行時には、単に操作を再現するだけでなく、各ステップが成功したかどうかを自動で検証する機能も備えています。
例えばあるボタンをクリックした後に特定の画面が表示されるべき、という期待値が設定されていれば、ツールはそれが満たされているかを確認します。
もし期待値と異なる結果になった場合は、その時点でテストが失敗したと判断し、エラーを報告します。
さらに、テストの実行中に何らかの問題が発生した場合、どのステップでエラーが起きたかを特定するためのデバッグ機能も重要です。
多くのツールでは、実行中の画面キャプチャや詳細なログを出力することで、問題の切り分けを助けます。
これにより、なぜテストが失敗したのかを素早く特定し、スクリプトやアプリケーションの修正に繋げることができます。
制限事項とよくある課題
不要な手順の混在
キャプチャー&リプレイツールは、テスト手順を簡単に記録できる便利な機能を提供しますが、完璧ではありません。
ツールのレコーディング機能がすべての操作を正確に捉えきれない場合や、逆にテストとは無関係な操作まで記録してしまうことがあります。
たとえばWebアプリケーションのローディング中に意図せずクリックしてしまった操作や、マウスを動かしただけの動作などが不要な手順として記録されることがあります。
これらが混在すると、スクリプトの可読性が低下するだけでなく、リプレイ実行時に予期せぬエラーを引き起こす原因となります。
またキーボードショートカットなど、特定の操作が正しく記録されないケースも存在します。
このような課題を解決するには記録されたテストスクリプトを細かく確認し、不要なステップを削除したり、必要な操作を手動で追記する作業が不可欠です。
初期段階で簡単なテストケースから始め、少しずつ複雑なシナリオに挑戦することで、ツールの特性を理解し、より効率的に作業を進められるようになります。
画面定義の不安定さによる失敗
キャプチャー&リプレイツールがWeb要素を識別する際に、多くの場合「XPath」や「CSSセレクタ」といった技術が用いられます。
これは、WebページのHTML構造における要素の「住所」のようなものです。
しかしこの住所が不安定だと、リプレイ実行時にテストが失敗する大きな原因となります。
たとえば開発者がUIデザインを少し変更したり、ページの構造を更新すると、要素のXPathが変わり以前に記録したスクリプトが該当の要素を見つけられなくなってしまうことがあります。
これが多くの自動化担当者が直面する「テストスクリプトのメンテナンス地獄」の根本的な原因の一つです。
この課題を克服するためにはツールが生成するXPathが絶対パス(HTMLのルート要素から始まる詳細なパス)ではなく、より頑健な相対パス(IDやクラス名など、変化しにくい属性を利用したパス)であるかを確認することが重要です。
またツールによっては、要素の属性を複数組み合わせて安定性を高める機能や、画像認識技術を併用することでUI変更に柔軟に対応できるものもあります。
ツール選定の際には、こうしたメンテナンス性を考慮することが、長期的なテスト自動化の成功に繋がります。
チェックボックスや特殊要素の挙動問題
単純なボタンクリックやテキスト入力は多くのツールで問題なくレコーディングできますが、チェックボックス、ドロップダウンメニュー、カレンダーピッカーといった特殊なUI要素の操作は、時として複雑な挙動を示すことがあります。
特にJavaScriptによって動的に生成されるチェックボックスや、非同期通信でデータが読み込まれるドロップダウンメニューなど、標準的なHTML要素ではないものはツールが正確に操作を記録できない場合があります。
これによりリプレイ実行時に意図した操作が行われず、テストが失敗することがあります。
これらの問題に対処するためには、ツールのドキュメントを詳細に確認し、特殊な要素に対応するための専用のコマンドや設定が用意されているか調べることが大切です。
また手動でスクリプトを編集し、要素が完全に読み込まれるまで待機する「待機コマンド」を追加するなど、状況に応じた調整が必要になります。
素朴な「自動記録」が見落とすもの
キャプチャー&リプレイは、あくまで表面的な操作を記録するに過ぎず、その操作の背後にある「意図」や「シナリオの文脈」を理解しているわけではありません。
これは、この手法の最も重要な限界の一つです。
たとえばユーザーが商品を購入するテストシナリオにおいて、「購入完了」という結果を検証することが目的だったとします。
ツールは、購入ボタンをクリックし、購入完了画面に遷移した事実のみを記録・確認しますが、「在庫が正しく引き当てられたか」「正しい金額が請求されたか」といった、内部的なロジックの検証までは自動では行いません。
これらの検証には、データベースの確認やAPIへのリクエストなど、より高度な操作が必要です。
そのためキャプチャー&リプレイツールを導入する際には、単に操作を記録するだけでなく、テストの目的に合わせて検証ポイントを明確にし、必要に応じてアサーション(検証ロジック)をスクリプトに追加する必要があります。
この作業は、テスト自動化の専門知識が求められる部分であり、テスト自動化リーダーとしてチームに適切な指導を行うことが、品質保証の精度を高める上で不可欠です。
キャプチャー&リプレイを成功させる工夫
読みやすいテストコードを書くには経験が必要
キャプチャー&リプレイツールはプログラミング知識がなくてもテストスクリプトを生成できますが、読みやすく誰が見ても理解できるコードにするには、一定の経験と工夫が必要です。
ツールが自動生成するスクリプトは単調なステップの羅列になりがちで、複雑なシナリオになると全体像を把握しにくくなります。
このような課題を解決するためにはスクリプトにコメントを追加したり、処理のまとまりごとにブロック化したりすることが有効です。
たとえば「ログイン処理」「商品検索」「購入手続き」といったように、機能ごとのブロックに分けることで、テストが何をしているのか一目でわかるようになります。
また変数名や関数名に意味を持たせる命名規則をチーム内で統一することも、可読性を高める上で重要です。
これにより、スクリプトが属人化することを防ぎ、チーム全体でメンテナンスしやすい資産に変わります。
これは従来のプログラミングと同様に、テストスクリプトの品質もチーム全体の生産性に直結するため、テスト自動化リーダーとして、こうしたルールをチーム内で浸透させることが成功の鍵となります。
デバッグ実行中に特定手順で失敗する場合の対処
キャプチャー&リプレイで作成したスクリプトは、一度の記録で完璧に動作するとは限りません。
特にデバッグ実行中に特定のステップで失敗するケースは頻繁に発生します。
原因は多岐にわたりますが、多くの場合、Webページの読み込み遅延や動的な要素の表示タイミングに関連しています。
このような問題に対処するには、失敗したステップの前後に「待機コマンド」を挿入することが有効です。
具体的には、「要素が表示されるまで待つ」といった条件付きの待機を設定することで、ページの読み込みが完了する前に次の操作に進んでしまう事態を防げます。
ツールのログやスクリーンショット機能を利用して、失敗時の状況を詳細に分析することも重要です。
また、要素の識別子が不安定であることが原因の場合もあります。
その際はツールが自動生成した識別子を見直し、より安定したXPathやCSSセレクタに修正することで解決できることがあります。
シナリオ内の「ノイズ」を防ぐ工夫
キャプチャー&リプレイの過程で、テストの目的とは無関係な「ノイズ」がスクリプトに混入することがあります。
たとえば、マウスを動かすだけの操作や、誤ってクリックしてしまった場所への移動などです。
これらのノイズは、スクリプトの可読性を下げるだけでなく、実行時間の増加や予期せぬエラーの原因となります。
このノイズを防ぐためには、レコーディングする際にできるだけシンプルで直線的な操作を心がけることが大切です。
レコーディングが終了したら、必ず生成されたスクリプトを確認し、不要なステップを削除する作業を習慣化しましょう。
またツールによっては、特定の操作を自動でフィルタリングする機能が備わっている場合もあります。
ツール選定の際に、こうしたノイズ除去機能の有無も確認すると良いでしょう。
要素探索の改善
テスト自動化の安定性を大きく左右するのが、Webページの要素を正確に特定する能力です。
キャプチャー&リプレイツールは一般的にIDやクラス名、XPathといった「セレクタ」を利用して要素を特定しますが、これらの情報が不安定だとテストがすぐに失敗する原因となります。
特に開発環境や本番環境でIDやクラス名が動的に生成される場合、スクリプトが使えなくなってしまうことが頻繁に起こります。
このような状況を回避するためにはテスト対象のシステム開発チームと連携し、要素にdata-testidのようなテスト用の属性を意図的に付与してもらうことが非常に有効です。
これにより、UIの変更に左右されにくい安定したセレクタを利用できるようになります。
「人の目」を模倣した探索のアプローチ
従来の要素探索はHTMLの構造に依存するため、UIの変更に弱いという課題がありました。
しかし、近年では、より人間に近い方法で要素を特定するアプローチが登場しています。
これはテキストの内容や要素の視覚的な位置、色、形などを利用して要素を特定する手法です。
たとえば、「ログイン」と書かれた青いボタンをクリックする、といった操作を、人間が目で見て判断するようにツールに指示できます。
このアプローチはXPathのような構造的な情報に依存しないため、UIのデザインが変更されてもスクリプトが壊れにくいというメリットがあります。
ツール選定の際には、このような「ビジュアルリグレッションテスト」や「画像認識」の機能を備えているかどうかも重要な判断基準となります。
これにより、テストスクリプトのメンテナンス工数を大幅に削減し、長期的な自動化の成功に繋げることが可能です。
まとめ
今回はテスト工数の削減に貢献する「キャプチャー&リプレイ」という手法について、その基本的な仕組みから具体的な導入のコツまで解説しました。
手動テストの繰り返し作業を自動化することで、チームの生産性を大幅に向上させ、リリースまでの時間を短縮できる可能性を秘めています。
しかし、この手法は万能ではなく、テストスクリプトのメンテナンスや特殊な要素の操作など、いくつかの課題が存在します。
これらの課題を解決するためには、ツールが生成するスクリプトを単なる「自動記録」と見なすのではなく、可読性を高める工夫や、安定した要素特定のための改善を積極的に行うことが重要です。
また開発チームと連携して、テストしやすい設計を促すことも、長期的な成功には欠かせません。
キャプチャー&リプレイはテスト自動化への道のりをスムーズにする強力なツールですが、その効果を最大限に引き出すにはチーム全体でノウハウを共有し、継続的に改善していく姿勢が求められます。
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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ