【ストーリー】工数・品質・管理の負担を根本から見直すために

ソフトウェア開発の現場では、日々、無数のテストが実行されています。

しかし、「このテスト、前にもやったな…」と感じたことはありませんか?

テストケースの作成は、プロジェクトの初期段階では品質を担保するための重要な作業ですが、プロジェクトが進行し、機能が追加・変更されるたびに、膨大な量のテストケースが重複したり、メンテナンスが困難になったりします。

まるで、苦労して作った貴重な資産が、時間の経過とともにガラクタに変わってしまうかのようです。

そこで今回はある開発チームのリアリティのあるストーリーを通して、この「テスト資産のムダ」が現場にどれほどの負担をかけているのかを浮き彫りにします。

そして、その解決策として、なぜ「テストの再利用」が必要不可欠なのか、その具体的なメリットと戦略を深く掘り下げていきます。

あなたのチームの開発効率と製品品質を劇的に改善するヒントが、ここにあります。

※当記事のストーリーはリアルな現場の状況を想定したフィクションです。

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登場人物と背景

田中悠一、38歳。論理的で穏やかな性格ながら、プロジェクトの品質に強い責任感を持つテストマネージャー。妻と小学2年生の息子を持つ一家の大黒柱でもある。

現在、田中が率いる7名のQAチームは、三つの異なるプロダクトを同時並行で担当しており、協力会社のメンバーも加わっている。

しかし、現場は疲弊していた。メンバーの残業時間は増加し、工数見積もりは当てにならず、何より過去のテスト資産が活かされず、毎回ゼロからテスト設計を繰り返す状態に陥っていた。

田中の頭の中には、常に「このままではいけない」という強い問題意識があった…。

第1章:毎回“ゼロから作り直す”現場に、マネージャーとして限界を感じる

金曜日の夜、オフィスには田中のいる会議室だけがまだ明るかった。

回帰テストの計画書を作り直しながら、田中は深い息を吐く。

「また設計が遅れている…どうして毎回こうなる?」

彼の目は、資料の山をさまよった。

チームに状況を確認すると、返ってくる言葉はいつも同じだ。

「前回のテストケースがどこにあるか見つからなくて…」

「共有フォルダに『最終版_20240901』とか『_最終版_田中』みたいにいくつもあって、どれが最新かわからないんです」

「結局、探す時間だけで1時間以上使いました」

マネージャーである田中にとって、これは単なる遅延では済まされない。

工数見積もりの精度がどんどん落ち、リリース判断の根拠が曖昧になる。

メンバーの生産性が低下し、負荷が偏ることで、プロダクト全体の品質にも影響を及ぼす。

この目に見えない「探すコスト」がチームの活力を奪っていることを、田中は痛感していた。

第2章:品質トラブルで“デグレード”が発生 ― マネージャーとして責任を問われる瞬間

翌週の週次品質会議。緊張感が漂う中、開発部長から厳しい指摘が入った。

「このバグ、1年前にも発生して修正したはずだよね?なぜ今回の回帰テストで検知できなかった?」

田中は即答できなかった。頭の中で過去の記憶を辿る。

確かに、あのバグの再現テストケースは、担当者が丹念に作り上げたExcelファイルとしてどこかに保存されたはずだ。

しかしその時の担当者はすでに別プロジェクトへ異動しており、そのテスト手順が記載されたExcelがどれなのか、最新版はどこにあるのか、手順書の内容が正しいのか。誰も明確に把握できていなかった。

会議後、田中は強い葛藤に苛まれた。

「品質の再現性が保たれていない」

過去に払ったはずのコストが無駄になり、同じミスを繰り返した事実は担当者依存/属人化が完全に浮き彫りになった瞬間だった。

このままでは、チームに対する信頼が失墜する。

田中はマネージャーとして、根本的な解決策を見つけなければならないと強く決意した。

第3章:レビュー会議で露呈する“情報管理の限界”

いよいよリリース前のGo/No-Go会議。プロダクトオーナー(PO)から決済機能のテスト状況について質問があった。

「決済機能のテスト状況、ケース、証跡、バグの対応状況まで、まとめて見せてもらえますか?」

田中は慌てて対応する。Excelでテストケースを開き、Jiraでバグ一覧を参照し、別の共有フォルダからスクリーンショットを引っ張ってくる。

会議室には資料を切り替えるクリック音が響き渡る。

POは不満を隠せない様子で言った。

「田中さん、情報が散らばりすぎていて、何が最新でどこまでテストが完了しているのか、全体像が見えません」。

開発側からも「このテスト結果とバグが紐づいていないと、説得力がない」と声が上がった。

田中の内心は深く沈んだ。

「資料はすべてある。なのに、情報が整理されていないだけで評価が下がり、チームの努力が認められない」

彼は悟った。

これはもう、現場の頑張りや徹夜で資料をまとめる行為で解決できるレベルではない。構造的な仕組みを変えるしかないのだ。

第4章:原因に気づく ― “Excel中心の運用”という構造的な壁

週末の朝、田中はいつものカフェで一人、メンバーから集めた資料を見返していた。

彼が突き止めたのは、次の構造的な問題点だった。

最新版のテストケースが管理できていない(ファイル名の乱立)。

バグ再現手順がExcelの別タブや別ファイルに分散しており、紐づきが弱い。

証跡(スクリーンショットなど)が共有フォルダに散在し、テストケースから辿れない。

そもそも過去の資産を横断的に検索する仕組みが存在しない。

田中はペンを置き、大きく頷いた。

「これはチームの努力不足じゃない。「蓄積・検索・再利用」の仕組みそのものが存在しないのだ。」

Excelを中心とした従来の管理方法こそが、工数膨張、品質リスク、情報混乱の根源であり、これを変えなければ永遠にこの非効率な状況は続くと確信した。

第5章:解決の糸口 ― テスト管理ツールとの出会い

その日、田中は偶然参加したオンラインセミナー「テスト管理の最新トレンド」で衝撃を受けた。

登壇者が語るのは、テスト管理ツールによる「テスト資産の統一構造」と「バグ管理との自動連携」だ。

特に彼の胸に刺さった言葉は、「テスト管理ツールはチームの記憶装置になる」というフレーズだった。

田中の中で、点と点が線で繋がった。

「毎回ゼロから作る必要はない。過去の資産はテンプレートとして活かせる」

「バグとの紐づきも自動化できるなら、情報の散在は起こらない」

「人に依存しない品質管理ができる」

このツールこそが、チームが抱える構造的な壁を打ち破るための、具体的な解決策だと直感した。

第6章:社内説得 ― マネージャーとしての覚悟

田中はすぐに導入提案の準備に取りかかった。

提案資料には、現状のBefore/Afterの比較、残業削減の試算、そして過去のデグレード事例を基にした品質リスクの可視化を盛り込み、テスト管理ツール導入のROI(投資対効果)を論理的に示した。

上長は資料を見て言った。

「確かに、今の運用は限界だ。現場の工数削減と品質向上が見込めるなら、PoC(概念実証)で試してみよう」

そしてチームメンバーに共有した際も「これ、本当に使えたら残業が減って助かります」と、疲弊していたはずのメンバーから期待の声が上がった。

田中は胸の内で静かに、しかし強く思った。

「ツール導入はゴールではない。これは、持続可能なテスト運用へのスタートだ」

彼は、エンジニアとしてチームから信頼される「品質の仕組み化」を担う旗振り役としての覚悟を決めた。

第7章:未来(After) ― チームが“資産型運用”へ変わる姿

数ヶ月後、テスト管理ツールが本格的に稼働した。現場は劇的に変わった。

テストケースは自動的に整理され、検索窓に機能名を入れるだけで即ヒットする。

回帰テストは、前回のテストセットを複製し、変更部分を修正するだけで完了し、設計工数が30%短縮された。

過去のデグレード事例に関するバグ再現テストは履歴として紐づき、品質の再現性が格段に向上した。

リリース会議でも変化は明らかだ。

プロダクトオーナーの質問に対し、田中はツール画面をワンクリックするだけで「テスト状況・バグ・証跡」のすべてを一元的に提示できるようになった。

最も大きな変化は、メンバーの働き方だった。

テスト資産を探す無駄な時間は消え、残業が確実に減少し、チームの雰囲気が明るくなった。

田中は心の中で静かに喜びを感じていた。

「やっと、チーム全体が前を向いて進めるようになった。これが“プロセスとして品質を担保する”ということか。来期は、この仕組みをさらに活用し、効率化を進めたい」

エンディング:マネージャーとしての誇り

その日の夜、田中はいつもより早く帰宅し、ソファに座っていた。

リビングにやってきた小学2年生の息子が、一枚の絵を差し出した。

そこには、にこやかにノートPCを開く田中の姿が描かれていた。

「パパ、きょうは早かったね!」。

その言葉に、彼は静かに、そして温かい気持ちで微笑んだ。

もう、あの頃のように「探すために残業する夜」は戻ってこない。

彼が作り上げた「自分がいなくてもプロジェクトが回る仕組み」は、チームの品質だけでなく、家族との大切な時間をも守る、確かな資産となっていた。

まとめ

物語を通して見てきたように、テストケースの作成と実行は、一度きりの作業ではありません。

それは製品のライフサイクル全体を通じて続く「資産運用」のようなものです。

従来の「場当たり的なテスト作成」は、短期的には問題を解決できても、長期的にはチームに技術的負債とムダな工数を押し付けます。

しかし「テストの再利用」という考え方を取り入れれば、状況は一変します。

標準化されたテスト設計、モジュール化されたテストコード、そしてそれらを管理する適切な仕組み。

これらを導入することで、チームはメンテナンスコストを削減し、新規機能のリリースを迅速化でき、そして何よりも一貫した高い品質を保つことができます。

テストの再利用は、単なる効率化のテクニックではなく、持続可能でスケーラブルな開発体制を築くための最も重要な戦略です。

今日からあなたのチームも、テスト資産を「負債」から「未来への投資」へと変えていきましょう!

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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。

記事制作:川上サトシ