Excelによるテスト管理のデメリット
ソフトウェアテストにおいて、Excelはテストケースの作成やバグの管理など、様々な用途で活用されています。
特に、小規模なプロジェクトやテストチームでは、導入の容易さや使い慣れた操作性から、Excelがテスト管理の主要なツールとして利用されているケースが多いのではないでしょうか。
テストチームが立ち上がったばかりの頃は、Excelで十分にテスト管理ができていたかもしれません。テストケースの数も少なく、バグの発生件数も限られている段階では、Excelのシンプルな表計算機能で、テスト結果の記録や計画の管理、簡単なレポート作成などが行えます。
しかし、プロジェクトが進むにつれて、テストケースやバグの数が膨大になり、チームメンバーが増加していくと、Excelの限界が見えてきます。
・大量のシートやファイルの中から、必要なテストケースを探すのに時間がかかる。 ・テストの進捗状況やプロジェクト全体の状況を把握するのが難しい。 ・最新情報が反映されていない古いExcelシートでテストを実施してしまい、時間を無駄にしてしまう。 ・Excelファイルの保存ミスや紛失によって、テスト結果や作業内容を失ってしまうリスクがある。 ・テストケースの内容が簡潔すぎて、テスト実施に必要な情報が不足しているケースが多い。 |
もし、これらの問題点が1つでも当てはまるのであれば、Excelを使ったテスト管理方法を見直す必要があると言えるでしょう。
Excelは、本来、業務を効率化するためのツールです。しかし、テスト管理においては、Excelが逆に作業効率を低下させ、コストや時間の無駄に繋がってしまう可能性があります。
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視認性が悪い
少人数で開発を行うような小規模なプロジェクトの場合、1つのExcelシートを共有し、チームメンバー間でコミュニケーションを取りながらテストを進めていくことは比較的容易です。変更箇所や意見をすぐに共有し、認識を合わせながら作業を進めることができます。
しかし、チームの規模が大きくなり、プロジェクトが複雑化すると、Excelでのテスト管理は視認性の悪さという課題に直面します。
テストケースやバグレポートなどが複数のシートに分散し、それぞれが独立した情報として管理されるため、全体像を把握することが難しくなります。
例えば、
・ある機能のテストケースが、どのシートに記載されているのか探すのに時間がかかる。 ・各シートの更新状況がバラバラで、最新の情報がどこにあるのか分かりにくい。 ・複数のシートを参照しながらテストを実行しなければならず、ミスが発生しやすい。 ・テストの進捗状況や、どの機能に問題が多いのか、といった全体的な傾向を把握しにくい。 |
といった問題が発生しやすくなります。
プロジェクトが成長し、テストケースの数が増加するにつれて、これらの問題はさらに深刻化します。複数のシートにわたる変更履歴を管理することは非常に困難になり、情報が錯綜し、誤った情報に基づいてテストが実行されるリスクも高まります。
視認性の悪さは、テスト担当者だけでなく、プロジェクトマネージャーや開発者にとっても大きな負担となります。関係者全員が、必要な情報を容易に探し出し、正確に理解できるような、分かりやすいテスト管理体制を構築することが重要です。
構成管理が困難
ソフトウェア開発プロジェクトを成功させるためには、構成管理が不可欠です。構成管理とは、ソフトウェアの構成要素(ソースコード、ドキュメント、テストケースなど)を識別し、変更を管理し、常に最新の状態を維持するためのプロセスです。
構成管理の中でも特に重要なのが、バージョン管理と変更管理です。
バージョン管理は、ソフトウェアの変更履歴を管理し、過去のバージョンに戻せるようにする仕組みです。変更管理は、誰がいつどのような変更を加えたのかを記録し、変更内容を承認するプロセスです。
開発工程において、ソースコードの管理にGitなどの構成管理ツールが用いられるように、テスト工程においても、テストケースやテストデータ、テスト結果などの情報を適切に管理する必要があります。しかし、Excelは構成管理の面で、いくつかの課題を抱えています。
・変更管理機能が弱い:Excelでは、誰がいつどのような変更を加えたのかを記録することが難しく、変更内容の追跡が困難です。 ・権限管理機能が弱い:誰でも自由にファイルの内容を編集できてしまうため、誤って重要な情報を削除したり、変更してしまうリスクがあります。 ・テストデータや結果の信頼性維持が難しい:複数の担当者が同じファイルにアクセスして編集を行うため、データの整合性を維持することが難しく、誤った情報に基づいてテストが実行される可能性があります。 ・Excelシートが紛失、誤保存、上書きされやすい:ファイルのバージョン管理が難しく、誤って古いバージョンで作業してしまったり、重要なファイルを上書きしてしまうリスクがあります。 ・変更のたびに新しいバージョンを作成・共有するのが難しい:変更のたびにファイルをコピーして保存し、関係者に共有する必要があるため、手間がかかり、ミスが発生しやすくなります。 |
これらの課題を解決するためには、テスト管理に特化したツールを導入する必要があります。テスト管理ツールは、バージョン管理、変更管理、アクセス権限管理などの機能を備えており、Excelよりも安全かつ効率的にテスト資産を管理することができます。
テストの計画と実行が困難
Excelを用いたテスト管理では、テストの計画と実行が煩雑になりがちです。
例えば、1000件のテストケースが複数のシートに散らばっている状況を想像してみてください。必要なテストケースを探し出すだけでも一苦労ですし、テストの進捗状況を把握したり、各担当者に適切にタスクを割り振ったりするのも容易ではありません。
アジャイル開発でよく用いられるスプリントのように、短いサイクルで開発とテストを繰り返す場合、さらに困難さが増します。
スプリントごとに必要なテストケースをコピーして新しいExcelシートを作成したり、既存のシートにタグやフィルターを追加して編集したりする必要があり、手間と時間がかかります。
また、複数のExcelシートを行き来しながらテストを実行すると、混乱が生じやすく、どのテストケースを実行済みで、どのバグが未修正なのか、といった情報共有がスムーズに行われない可能性があります。
このような状況は、テストの効率を低下させるだけでなく、担当者のストレスを増大させ、ミスや抜け漏れに繋がるリスクも高めます。
一方、テスト管理ツールを活用すれば、これらの課題を解決することができます。
テスト管理ツールは、テスト計画の作成、テストケースの管理、テストの実行、バグの追跡など、テスト工程全体をサポートする機能を備えています。
ツール上でテスト計画を立案し、作業範囲を各担当者に割り当てることで、誰がどのテストを担当しているのかが一目でわかるようになります。また、テスト実行結果はツールに直接記録されるため、誤ったテストを実行してしまったり、テスト結果を紛失してしまったりするリスクを減らすことができます。
さらに、テスト管理ツールは、Excelでは実現できないような便利な機能を備えています。例えば、テストケースの自動生成、テスト結果の自動集計、バグの発生傾向分析など、様々な機能が提供されています。
これらの機能を活用することで、テスト担当者は同じ作業を繰り返す必要がなくなり、より効率的にテスト業務を進めることができます。
テスト状況の報告が困難
Excelを使ったテスト管理では、テスト状況の報告を作成するのも一苦労です。
複数のExcelシートに分散した情報を集約し、分かりやすいレポートにまとめる作業は、非常に手間がかかります。担当者それぞれが作成したExcelシートから必要なデータを抽出し、手作業で集計していく必要があるため、時間もかかり、ミスが発生するリスクも高まります。
また、テストの進捗状況をリアルタイムに把握することも困難です。各担当者に個別に状況をヒアリングしたり、Excelシートの更新状況を確認したりする必要があり、テスト管理者は頻繁に各担当者の元へ足を運ばなければなりません。
特に、アジャイル開発のように、短いサイクルで開発とテストを繰り返す場合は、スプリントごと、あるいはリリースごとにテスト結果をまとめる必要があり、Excelでの情報集約は大きな負担となります。
Excelには、SUM関数やAVERAGE関数のような基本的な集計機能に加えて、高度な計算式やマクロ機能も備わっています。
しかし、これらの機能を駆使したとしても、必要な情報をすべてExcelで表現するには限界があります。
例えば、あるテストケースがどの要件に紐づいているのか、どのバグがどのテストケースに関連しているのか、といった情報を確認するためには、結局、複数のシートを参照する必要が生じます。
さらに、トレーサビリティマトリックスの作成もExcelでは困難です。トレーサビリティマトリックスとは、要件、テストケース、バグなどの関連性を表形式で可視化したものです。
Excelでマトリックスを作成するには、手作業で情報を整理し、表を作成する必要があり、非常に手間がかかります。
また、プロジェクトの進捗に伴い、要件やテストケースが変更されるたびに、マトリックスを手作業で更新していく必要があるため、情報の整合性を維持することも容易ではありません。
一方、テスト管理ツールを活用すれば、これらの課題を容易に解決することができます。テスト管理ツールは、テストの実行状況やバグ情報などを自動的に集計し、分かりやすいレポートを作成する機能を備えています。
そのため、テスト管理者は、リアルタイムでテストの進捗状況を把握し、必要な情報を簡単に抽出することができます。
多くのテスト管理ツールは、Jiraなどの不具合管理ツールやタスク管理ツールと連携する機能を備えています。そのため、テストで発見されたバグを、追加作業なしで不具合管理ツールに登録したり、タスクボードで進捗状況を追跡したりすることができます。
例えば、PractiTestは、Excelで作成した既存のテストケースを簡単にインポートすることができます。そのため、Excelからテスト管理ツールへの移行もスムーズに行えます。
PractiTestでは、テストケースを階層構造で管理したり、タグ付けして分類したりすることができるため、Excelよりも柔軟にテストケースを整理することができます。
また、PractiTestは、ダッシュボード機能により、テストの進捗状況、バグ発生状況、テストカバレッジなどを分かりやすく可視化することができます。これらの情報は、リアルタイムで更新されるため、常に最新の状況を把握することができます。
実際に、イスラエルのソフトウェアテスト会社であるSymcotech社は、PractiTestを導入することで、テストプロセスの効率化と透明性の向上を実現し、顧客満足度を高めることに成功しています。
Excelからテスト管理ツールに移行することで、テストプロセスを合理化し、より透明性の高いテスト管理体制を構築することができます。テスト管理ツールは、Excelよりもはるかに強力で効率的なテスト管理を可能にするツールです。
テスト管理業務の効率化ならPractiTest
システムテストを効果的に行うためには、優れたテスト管理ツールの導入が不可欠です。PractiTestは、プロジェクトごとのカスタマイズ性やすでにあるテスト資産の再利用性、他ツールとの連携性にすぐれた総合テスト管理ツールであり、あらゆるテスト活動を一元管理することができます。システムの品質向上とテスト業務の効率化を図りたいと考えているなら、ぜひPractiTestの導入を検討してみてください!
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この記事の監修
Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ