テストシナリオとテストケースの違いとは?具体例・作成順・使い分けをわかりやすく解説

テストシナリオとテストケースの違いを、ECサイトの具体例を使ってわかりやすく解説します。シナリオテストとの違いや作成する順番、使い分け、作成時のポイントまで、ソフトウェアテスト初心者にもわかるよう紹介します。

ソフトウェアテストを設計するとき、「テストシナリオ」と「テストケース」という言葉がよく使われます。

似た意味で使われることもあるため、

  • テストシナリオとテストケースは何が違う?
  • どちらを先に作ればいい?
  • シナリオテストとは別物?
  • テストシナリオだけでは不十分?

と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、実務では次のように整理すると理解しやすくなります。

テストシナリオテストケース
主な役割何を、どのような流れで確認するかを整理するどの条件・手順で、何を確認するかを具体化する
視点ユーザーの行動・業務フロー個別の機能・条件・期待結果
粒度比較的大きい比較的小さい
記載内容目的、利用者、前提条件、一連の操作など入力値、事前条件、操作手順、期待結果など
関係1つのシナリオから複数のテストケースを作ることがあるシナリオを具体的な検証項目へ分解したもの
ECサイトの例「商品を検索して購入を完了する」「在庫あり商品をクレジットカードで正常に購入できる」

簡単に表現すると、

テストシナリオは「ユーザーが何をするかという流れ」、テストケースは「その流れの中で何をどう検証するか」

と考えるとわかりやすいでしょう。

ただし、「テストシナリオ」という言葉は組織やプロジェクトによって意味や粒度が異なることがあります。

そのため、今回は日本のソフトウェア開発現場で一般的に見られる使い方として、ユーザーの行動や業務フローをもとに、テスト対象となる一連の流れを整理したものを「テストシナリオ」として解説します。

目次

テストシナリオとは

テストシナリオとは、ユーザーがシステムを利用する場面を想定し、どのような流れをテストするのかを整理したものです。

例えばECサイトであれば、

ユーザーが商品を検索し、カートへ追加して、決済を行い、購入を完了する

という一連の流れがテストシナリオになります。

単独の機能だけを見るのではなく、複数の画面や機能をまたいだユーザーの行動を考えることがポイントです。

テストシナリオでは「流れ」を確認する

ECサイトには、

  • ログイン
  • 商品検索
  • 商品詳細
  • カート
  • 配送先入力
  • 支払い
  • 注文確定

など、さまざまな機能があります。

それぞれの機能が単独で正常に動作していたとしても、機能同士をつなげたときに問題が発生する可能性があります。

例えば、

「商品はカートへ追加できたものの、決済画面へ進むとカートの商品情報が失われる」

といった不具合です。

このような一連の利用フロー上の問題を発見するために、ユーザーの行動をもとにテストシナリオを設計することが有効です。

テストシナリオの詳しい作り方や具体例については、以下の記事もあわせてご覧ください。

テストシナリオの作り方・具体例はこちら

テストケースとは

テストケースとは、特定の機能や要件を検証するための条件・入力値・操作・期待結果などを具体的に定めたものです。

例えば「ログイン機能を確認する」というだけでは、テスト担当者によって実施内容が変わってしまいます。

そこで、

項目内容
テストケースIDTC-LOGIN-001
目的正しいメールアドレスとパスワードでログインできることを確認する
事前条件有効なユーザーアカウントが登録されている
入力値登録済みメールアドレス、正しいパスワード
操作メールアドレスとパスワードを入力し「ログイン」を押す
期待結果マイページが表示される

といった形で具体化します。

このようにテストケースを作成しておくことで、誰が実施しても同じ条件で検証しやすくなり、テストの再現性を高めることができます。

テストケースの詳しい書き方については、以下の記事で解説しています。

テストケースの書き方について詳しくはこちら

テストシナリオとテストケースの関係

テストシナリオとテストケースは、どちらか一方を選ぶものではありません。

実務では、

テストシナリオ → 複数のテストケース

という関係になることが多くあります。

例えばECサイトの「商品を購入する」というシナリオを考えてみましょう。

テストシナリオ

在庫のある商品を検索し、カートへ追加して購入を完了する

このシナリオだけでは、

  • 正常に購入できる場合
  • 在庫がなくなった場合
  • 支払い情報が間違っている場合
  • 必須項目が未入力の場合

などの条件を十分に検証できません。

そこで、シナリオを複数のテストケースへ分解します。

テストケース

ID確認する条件操作の概要期待結果
TC-001在庫あり・有効なカード商品をカートへ追加して決済する注文が正常に完了する
TC-002決済前に在庫切れ商品を購入しようとする在庫切れであることが表示され購入できない
TC-003無効なカード情報誤ったカード情報で決済する決済エラーが表示され注文が確定しない
TC-004配送先の必須項目が未入力必須項目を空欄にして次へ進む入力エラーが表示される
TC-005ゲストユーザーログインせず商品を購入する設計されたゲスト購入フローが正常に完了する

このように整理すると、

テストシナリオで「ユーザーの流れ」を捉え、テストケースで「条件ごとの動作」を細かく確認する

という役割の違いがわかります。

テストシナリオとテストケースはどちらを先に作る?

ユーザーの業務フローや一連の操作を対象としたテストでは、一般的に、

  1. テストの目的を決める
  2. ユーザーや業務の流れを整理する
  3. テストシナリオを作る
  4. シナリオから確認すべき条件を洗い出す
  5. テストケースへ具体化する
  6. 優先順位を付けて実行する

という流れで設計すると整理しやすくなります。

1. テストの目的を決める

最初に「何を確認するためのテストなのか」を明確にします。

例えばECサイトなら、

ユーザーが商品を選択してから購入を完了するまで、問題なく操作できることを確認する

といった目的を設定します。

目的が曖昧なままテストケースを大量に作ると、重要ではない項目が増え、本当に確認すべきリスクが埋もれてしまう可能性があります。

2. ユーザーの行動や業務フローを整理する

次に、ユーザーが目的を達成するまでの行動を時系列で整理します。

例えば、

商品を検索する
↓
商品詳細を見る
↓
カートへ追加する
↓
配送先を入力する
↓
支払い方法を選ぶ
↓
注文を確定する

という流れです。

3. テストシナリオを作成する

整理したユーザーの行動から、確認するべき一連の流れをシナリオとして定義します。

例えば、

「会員ユーザーが在庫のある商品を検索し、クレジットカードで購入を完了する」

というシナリオです。

ここでは最初から細かな入力値を大量に設定するのではなく、まず「どの利用場面を確認するのか」を明確にします。

4. テスト条件を洗い出す

シナリオが決まったら、結果に影響する条件を洗い出します。

購入シナリオであれば、

  • 会員/ゲスト
  • 在庫あり/なし
  • クーポンあり/なし
  • 正常なカード/無効なカード
  • 必須入力あり/未入力
  • PC/スマートフォン

などが考えられます。

ただし、考えられる組み合わせをすべてテストすると膨大な数になるため、重要度や障害発生時の影響を考えて優先順位を付けることが重要です。

5. テストケースへ具体化する

最後に、重要な条件について、

  • 事前条件
  • テストデータ
  • 操作手順
  • 期待結果

を決め、実行可能なテストケースへ落とし込みます。

この順番で整理すると、何のために作成されたテストケースなのかがわかりやすくなり、テストの抜け漏れも発見しやすくなります。

「テストシナリオ」と「シナリオテスト」は同じもの?

混同しやすいのが、テストシナリオとシナリオテストです。

言葉は似ていますが、ここでは次のように区別します。

用語本記事での意味
テストシナリオテストするユーザーの行動や一連の流れを整理したもの
テストケース特定の条件で実施する具体的なテスト
シナリオテストシナリオをもとにユーザーの一連の利用状況を検証するテストの考え方・アプローチ

つまり、

テストシナリオはテスト設計で使用する内容であり、シナリオテストはそれを利用して検証するアプローチ

と整理すると理解しやすくなります。

なお、ソフトウェアテストの用語は規格・資格体系・企業・プロジェクトによって定義や使用方法が異なる場合があります。

「テストシナリオ」と「テストケース」の境界についてもすべての現場で完全に同じではありません。

そのため、実際のプロジェクトでは用語の意味や記載する粒度をチーム内で最初に決めておくことが重要です。

テストシナリオとテストケースを使い分けるメリット

両者を適切に使い分けることで、テストの品質と管理性を高めることができます。

テスト全体の目的を見失いにくい

テストケースだけを大量に作成すると、「このテストは何のユーザー行動を保証するために存在するのか」がわかりにくくなることがあります。

上位にテストシナリオを設定しておけば、

シナリオ → テストケース

という関係を整理しやすくなります。

ユーザー視点と機能視点の両方から確認できる

テストシナリオでは、ユーザーが目的を達成できるかという大きな流れを確認します。

一方、テストケースでは、条件や入力値ごとの動作を詳細に確認します。

両方を組み合わせることで、一連の利用体験と個別機能の正確性をそれぞれ確認しやすくなります。

テストの抜け漏れを見つけやすい

テストシナリオを先に整理すると、

「正常に購入できる場合はあるが、在庫切れの場合のテストケースがない」

「会員ユーザーは確認しているが、ゲストユーザーのシナリオがない」

といった抜け漏れを発見しやすくなります。

テスト資産を管理しやすい

シナリオとテストケースの関係を明確にしておけば、仕様変更が起きたときにも影響範囲を特定しやすくなります。

例えば「決済方法」が変更された場合、その機能を利用する購入シナリオと関連テストケースを確認することで、修正すべきテスト資産を洗い出しやすくなります。

テストシナリオ・テストケース作成でよくある5つの失敗

1. テストシナリオを細かくしすぎる

テストシナリオへ入力値やクリック単位の操作まですべて書くと、テストケースとの違いがなくなります。

シナリオではまず「どのユーザーが、どのような目的で、どのような流れを利用するか」を整理し、細かな条件はテストケースへ分けると管理しやすくなります。

2. テストケースに期待結果がない

操作手順だけ記載しても、何をもって合格とするのか判断できません。

テストケースでは、

「○○ボタンを押す」

だけではなく、

「○○ボタンを押すと注文完了画面が表示され、注文番号が発行される」

というように、確認できる期待結果を明確にしましょう。

3. 正常系のシナリオしか作らない

ユーザーが仕様通りに操作するとは限りません。

  • 必須項目を入力しない
  • 操作途中で戻る
  • 在庫が途中でなくなる
  • 不正な値を入力する
  • 通信が失敗する

など、実際に発生する可能性と影響度を考えながら異常系・例外系のテストも検討します。

4. シナリオとテストケースの関係がわからない

テストケースを大量に作成しても、それぞれがどのシナリオや要件を確認するためのものなのかわからなければ管理が難しくなります。

テストケースに「関連シナリオID」や「関連要件ID」を持たせるなど、追跡できる状態にしておくと便利です。

5. 作成したテストを更新しない

業務フローやシステムの仕様は変更されます。

古いテストシナリオやテストケースをそのまま使用すると、現在の仕様とは異なるテストを実行してしまう可能性があります。

システム変更時には、関連するテスト資産も見直しましょう。

テストシナリオとテストケースの簡易テンプレート

テストシナリオのテンプレート

項目記載例
シナリオIDSC-001
シナリオ名会員の商品購入
目的会員ユーザーが商品を正常に購入できることを確認する
利用者登録済み会員
前提条件ログイン済み、商品在庫あり
操作フロー商品検索→商品選択→カート→配送先→決済→注文確定
完了条件注文が登録され、購入完了画面が表示される

テストケースのテンプレート

項目記載例
テストケースIDTC-001
関連シナリオSC-001
テスト内容有効なカードによる購入
事前条件ログイン済み、在庫あり
テストデータ有効なカード情報
操作手順商品をカートへ追加し、カード情報を入力して注文する
期待結果注文が正常に登録され、注文番号が表示される
実行結果Pass / Fail
備考不具合IDなど

必要な項目はプロジェクトによって異なります。

最初から項目を増やしすぎるのではなく、テストの再現・評価・管理に必要な情報を残すことを意識しましょう。

テストシナリオとテストケースに関するよくある質問

テストシナリオとテストケースはどちらを先に作りますか?

ユーザーの一連の行動を確認するテストであれば、テストシナリオを整理してからテストケースへ落とし込むと設計しやすくなります。

ただし、すべてのテストで必ずテストシナリオが必要というわけではありません。

個別機能や特定要件を直接確認する場合には、要件やテスト条件から直接テストケースを作成することもあります。

1つのテストシナリオにテストケースはいくつ必要ですか?

決まった数はありません。

対象システムのリスク、条件の組み合わせ、重要度、利用頻度などによって必要なテストケース数は変わります。

数を増やすこと自体を目的にせず、重要なリスクを十分に確認できるかを基準に判断することが重要です。

テストケースだけ作れば十分ですか?

テスト対象によってはテストケースだけで十分な場合もあります。

ただし、複数の機能をまたぐ業務フローやユーザー体験を確認する場合、個々のテストケースだけでは全体像を把握しづらくなることがあります。

その場合は、上位概念としてテストシナリオを整理すると、テスト全体を管理しやすくなります。

テストシナリオとテスト項目の違いは何ですか?

「テスト項目」は非常に幅広く使われる言葉で、企業やプロジェクトによって意味が異なります。

テストケースと同じ意味で使われることもあれば、「確認すべき観点」という意味で使われることもあります。

そのため、「テスト項目」「テストシナリオ」「テストケース」をどの粒度で使用するか、プロジェクト開始時に認識を合わせておくことをおすすめします。

シナリオテストとUATは同じですか?

同じものではありません。

シナリオに沿ったテストはさまざまなテストレベル・目的で利用できます。

一方、UAT(受け入れテスト)は、システムが利用者や業務上の要求を満たしており、受け入れ可能かを確認することを主な目的とします。

UATの中で実際の業務シナリオを使用してテストすることはありますが、目的や位置付けを分けて考える必要があります。

まとめ

テストシナリオとテストケースは似た言葉ですが、実務では役割を分けて考えるとテストを整理しやすくなります。

テストシナリオテストケース
考えること何を、どの流れで確認するかどの条件で、どのように確認するか
視点ユーザー・業務フロー機能・条件・期待結果
粒度大きい小さい
主な役割全体の利用シーンを整理する再現可能な検証内容へ具体化する

重要なのは、言葉の定義だけを覚えることではありません。

テストシナリオでユーザーや業務の流れを捉え、必要な条件をテストケースへ具体化することが、抜け漏れの少ないテスト設計につながります。

また、「テストシナリオ」「テストケース」「テスト項目」といった用語は、企業やプロジェクトによって異なる意味で使用されることがあります。

実際の開発では、チーム内でそれぞれの用語と粒度を定義し、共通認識を持ったうえでテスト設計を進めましょう。

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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。

記事制作:川上サトシ(マーケター、合同会社ぎあはーと代表)