ユースケースとテストケースの違いとは?
システム開発でよく聞く「ユースケース」と「テストケース」、その違いに悩んでいませんか?
そこで今回はそれぞれの定義や目的、具体的な作成方法まで徹底解説します!
違いを理解し、効果的なテスト設計に活かしましょう。
▼テストケースについて詳しい内容はこちら▼
ユースケースとは
ユースケースの定義
ユースケースとは、システムがどのように使われるかを記述したものです。具体的には、ユーザーがある目標を達成するために、システムとどのように対話するかを、一連のアクションとして表現します。例えば、ECサイトでの「商品の購入」というユースケースを考えてみましょう。この場合、ユーザーは商品を検索し、カートに追加し、支払いを行い、最終的に商品を受け取るという一連のアクションを行います。ユースケースは、このようなユーザーの行動を詳細に記述することで、システムの機能要件を明確にします。
アクターの役割
ユースケースには、アクターと呼ばれる登場人物が存在します。アクターは、システムを利用するユーザーや、システムと連携する外部システムなどを指します。先ほどのECサイトの例で言えば、購入者や決済システムなどがアクターとなります。アクターは、システムとのインタラクションをシミュレートすることで、システムがどのように利用されるかを明確にします。
ユースケースの視覚化
ユースケースは、単なるドキュメントとしてだけでなく、図を用いて視覚的に表現されることもあります。この図は、システムと関わるすべてのコンポーネントを含む概要図で、ユースケース図と呼ばれます。ユースケース図を見ることで、システム全体の機能と、それぞれの機能がどのように連携しているかを直感的に理解することができます。
概要図の構成要素
ユースケース図は、以下の3つの要素で構成されます。
・アクター: システムを利用するユーザーや外部システムなどを表します。 ・ユースケース: アクターがシステムを使って実行するアクションや目標を表します。 ・関係: アクターとユースケース間の関係性を表します。 |
これらの要素を線で繋ぐことで、アクターがどのユースケースを実行できるのか、ユースケース同士がどのように関連しているのかなどを視覚的に表現します。
ユースケースの設計
ユースケースは、システムの要件定義や設計の段階で作成されます。システムが満たすべきビジネス要件を基に、エンドユーザーがシステムをどのように利用し、システムがどのように動作すべきかを記述します。ユースケースを作成することで、開発者とユーザーの間で認識のズレを防ぎ、開発の方向性を明確にすることができます。
後の段階での活用
ユースケースは、設計段階だけでなく、開発やテストの段階でも重要な役割を果たします。ユースケースを基に、具体的なテストケースを作成したり、ユーザーマニュアルやヘルプドキュメントを作成したりすることができます。ユースケースは、システム開発のあらゆる段階で参照される重要なドキュメントとなります。
ユースケースのメリット
ユースケースを作成する主なメリットは以下の点が挙げられます。
・エンドユーザーとシステムのインタラクションに焦点を当てる: ユーザー視点でシステムの振る舞いを記述するため、ユーザーニーズを満たすシステム開発に繋がります。 ・システムの動作を要件に基づいて理解するのに役立つ: システムが満たすべき要件を明確化し、開発者とユーザーの間での認識のズレを防ぎます。 ・インタラクションを明確に視覚化できる: ユースケース図を用いることで、システム全体の機能とアクターの関係性を視覚的に表現できます。 ・テストケースの強固な基盤として機能する可能性がある: ユースケースを基にテストケースを作成することで、網羅的で効率的なテスト設計が可能になります。 |
テストケースとは
テストケースの定義
テストケースとは、システムやソフトウェアの特定の機能や部分が、正しく動作しているかを確認するための一連の手順や条件、期待される結果をまとめたものです。例えるなら、料理のレシピのようなもの。レシピには材料や手順、完成形が書かれていますよね? テストケースも同様に、テストの目的、具体的な手順、そして期待される結果が明確に記述されています。
テスト結果の比較
テストケースには、「期待される結果」が予め記載されています。テストを実施した結果と、この期待される結果を比較することで、システムが正しく動作しているかを判断します。もし、期待される結果と実際の結果が一致すれば「合格」、そうでなければ「不合格」となります。テストケースがあることで、テスト結果を客観的に評価し、システムの品質を確保することができます。
テストカバレッジの向上
テストケースを作成し、それに基づいてテストを実施することで、システムの重要な部分を漏れなくテストすることができます。闇雲にテストを行うのではなく、テストケースに従って計画的にテストを進めることで、効率的かつ効果的なテストが可能になります。これにより、テストの網羅性を高め、システムの品質向上に貢献できます。
チームの連携強化
テストケースは、開発者、テスター、プロジェクトマネージャーなど、プロジェクトに関わる様々なメンバーにとって、共通の認識を形成するための重要なツールとなります。テストケースを共有し、レビューすることで、各メンバーがテストの目的や内容を理解し、協力してプロジェクトを進めることができます。
再利用可能性
一度作成したテストケースは、将来のテストやシステム改修の際にも再利用することができます。これにより、テストケース作成の手間を削減し、効率的なテスト実施が可能になります。また、過去のテストケースを参考に新しいテストケースを作成することもでき、テスト設計の品質向上にも繋がります。
ユースケースとテストケースの比較
ユースケースとテストケースはどちらもシステム開発における重要な概念ですが、その役割や作成方法は異なります。以下の表で、両者の違いを比較してみましょう。
項目 | ユースケース | テストケース |
定義 | ユーザーがシステムを使って特定の目標を達成するまでの、一連の操作やシステムの振る舞いを記述したもの | 特定の機能や要件が正しく動作することを検証するための、具体的な手順や期待される結果を記述したもの |
目的 | システムの機能要件を明確にし、ユーザー視点でのシステムの振る舞いを記述する | システムの品質を保証し、バグや不具合を発見・修正する |
作成者 | ビジネスアナリスト、システムエンジニア、顧客など | テストエンジニア、QAエンジニア |
作成タイミング | 要件定義、設計段階 | テスト設計段階 |
記述内容 | アクター、ゴール、前提条件、基本フロー、代替フロー、例外フロー、事後条件など | テストケースID、テスト項目、テストデータ、期待結果、実行結果、備考など |
視点 | ユーザー視点 | テスト視点 |
粒度 | システム全体の機能やユースケース | 個別の機能や要件 |
抽象度 | 抽象的(具体的な操作手順は含まれない) | 具体的(具体的な操作手順を含む) |
網羅性 | システムの主要な機能やユースケースを網羅 | 個別の機能や要件に対するテストを網羅 |
再利用性 | テストケース作成の基盤として再利用可能 | 同じ機能や要件のテストで再利用可能 |
この表から分かるように、ユースケースとテストケースは、それぞれ異なる役割と特徴を持っています。ユースケースは、システム全体の機能やユーザーの利用シーンを把握するための抽象的な記述であり、テストケースは、具体的なテスト手順や期待される結果を定義した具体的な記述です。
両者を適切に使い分けることで、効率的かつ効果的なテスト設計を行い、高品質なシステム開発を実現することができます。
まとめ
今回はシステム開発における重要な概念である「ユースケース」と「テストケース」の違いについて解説しました。
ユースケースは、ユーザー視点からシステムの利用シーンを描き出すもので、システム全体の機能やユーザーの行動を理解するのに役立ちます。一方、テストケースは、具体的なテスト手順と期待される結果を定義し、システムの品質保証を目的としています。
両者は、視点や抽象度、網羅性など、様々な点で異なりますが、どちらもシステム開発において重要な役割を果たします。ユースケースを基にテストケースを作成することで、より効率的かつ効果的なテスト設計が可能になります。
これらの概念を正しく理解し、適切に使い分けることで、高品質なシステム開発に貢献し、顧客満足度を高めることができるでしょう。
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この記事の監修
Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ