優れたテストケースを作成するためのポイント

効果的なテストケース作成は、システムの品質向上に不可欠です。

しかし、闇雲にテストケースを作成するだけでは、時間とリソースの無駄遣いにつながりかねません。

そこで今回は、テストケース作成の効率と効果を最大化するための基本的なポイントをご紹介します。

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優れたテストケースを作成するポイント

リスクと優先順位に基づいてテストケースを選定する

テストケースを作成する前に、システムのリリース予定やアプリケーションのリスク要因を考慮し、テストケースの優先順位を決めましょう。

すべてのテストケースを同じ重要度で扱うのではなく、クリティカルな機能やリスクの高い部分に重点を置くことで、限られた時間の中で効率的にテストを実施できます。

80/20ルール

「80/20ルール」をご存知でしょうか? 

これは、全体の20%の要素が、全体の80%の結果を生み出すという法則です。テストケースにもこの法則を当てはめることができます。

つまり、全体の20%のテストケースで、システムの80%をカバーできる可能性があるのです。

まずは、システムの基本的な機能を網羅的に確認する「健全性テスト」や、主要な機能が正常に動作するかを確認する「スモークテスト」を実施しましょう。

これらのテストで問題がなければ、より詳細なテストに進むことができます。

アウトソーシング可能なテストケースの作成

すべてのテストケースを自分で抱え込む必要はありません。

他のメンバーでも実行できるような、比較的簡単なテストケースは積極的に作成し、共有しましょう。これにより複雑で専門性の高いテストケースの作成や、リスクの高いタスクに集中することができます。

チーム全体の効率化にも繋がり、開発期間の短縮にも貢献できます。

「完璧」ではなく「十分な」テストケースを

完璧主義は素晴らしいですが、テストケース作成においては、時には「完璧」よりも「完了」が重要になります。

すべてのケースを網羅しようとすると、時間ばかりかかってしまい、開発スケジュールに影響が出てしまう可能性があります。

まずは、現時点で「十分な」テストケースを作成し、必要に応じて後から修正・追加していくという、アジャイルなアプローチを取り入れましょう。

完璧なテストケースは、システム開発と並行して徐々に作り上げていくことができます。

将来を見据えたテストケースの作成

現在のスプリントやビルドにばかり気を取られず、将来のシステム変更や機能追加にも対応できるようなテストケースを作成しましょう。

例えば、

・将来的に変更される可能性のある設定値は、変数として定義しておく

・新しい機能が追加された際に影響を受ける可能性のある箇所を考慮したテストケースを作成しておく

といった工夫をすることで、後々のテストケースのメンテナンスコストを削減し、効率的なテスト運用を実現できます。

リストを作成してからテストを開始

テストケースを作成したら、すぐにテストを開始するのではなく、まずはリスクや優先順位に基づいてリストを作成しましょう。

これにより、テストの全体像を把握し、効率的にテストを進めることができます。

また、テスト中に新たなテストケースを思いついた場合は、リストに追加し、後から実行するようにしましょう。

テストケースを分類

テストケースを、ビジネスシナリオや機能に基づいて分類することで、テストの整理と実行を効率化できます。

例えば、

・ログイン機能に関するテストケース

・商品検索機能に関するテストケース

・購入手続きに関するテストケース

といったように、機能ごとにテストケースを分類することで、関連するテストケースをまとめて実行することができます。

テストを試行する

テストケースを完成させる前に、実際にテストを1〜2回実行してみましょう。これにより、

・テストケースに誤りや不足がないか

・テスト手順が分かりやすいか

・期待される結果が適切か

などを確認し、改善することができます。

テストケースの定期的な更新

システム開発は常に変化し続けるものです。アプリケーションのアップデートや環境の変化に対応するため、テストケースも継続的に更新していく必要があります。

定期的にテストケースを見直し、

・古い情報や不要なテストケースを削除する

・新しい機能や変更点に対応したテストケースを追加する

・表現の分かりにくさや曖昧な部分を修正する

といった小さな改善を積み重ねることで、テストケースの鮮度を保ち、常にプロジェクトに役立つ状態を維持することができます。

優れたテストケースとは

単純な答えはない

「優れたテストケース」とは何か、一言で定義するのは難しい問題です。プロジェクトの規模や特性、開発チームの体制、そして何より「品質」に対する考え方によって、その答えは変わってきます。

しかし、共通して言えるのは、優れたテストケースは、単にバグを見つけるためだけのものではないということです。それは、システムの品質を保証し、ユーザーに最高の体験を提供するための重要なツールなのです。

テストの関連性を維持し、リスクを見逃さない

優れたテストケースは、常に変化するプロジェクトの状況に合わせて、柔軟に変化していく必要があります。

開発の進捗に合わせて、テストケースを追加・修正したり、優先順位を見直したりすることで、常にテストの関連性を維持し、重大なリスクが未発見のままにならないようにしましょう。

例えば、新しい機能が追加された場合は、その機能に関するテストケースを追加するだけでなく、既存の機能への影響も考慮したテストケースを作成する必要があります。

テスト管理ツールを活用しよう

テストケースの数が増えてくると、管理が煩雑になり、効率が低下してしまうことがあります。そんな時は、テスト管理ツールの導入を検討してみましょう。

テスト管理ツールを使えば、

・テストケースの一覧管理や検索

・テストの実行状況や結果の記録

・テスト結果の分析やレポート作成

などを効率的に行うことができます。

また、ツールによっては、

・テストケースの自動生成

・テストの自動実行

・バグトラッキングシステムとの連携

など、さらに高度な機能を備えているものもあります。

テスト管理ツールを活用することで、テストケース作成や管理にかかる時間を削減し、より重要なテスト設計や分析に集中することができます。

しかし、ツールに頼りすぎるのも危険です。ツールはあくまで補助的な役割であり、テストケースの品質を保証するものではありません。ツールを活用しつつも、常にテストケースの内容や妥当性を意識することが大切です。

優れたテストケースを作成することは、QAエンジニアとしてのあなたのスキル向上に繋がり、市場価値を高めることにも貢献します。今回の記事で紹介したポイントを参考に、効果的なテストケース作成を実践し、プロジェクトの成功に貢献しましょう!

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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。

記事制作:川上サトシ