スクラム開発とは?アジャイル開発との関係や進め方を徹底開発
スクラム開発は、アジャイル開発の代表的な手法の一つであり、柔軟で迅速なソフトウェア開発を可能にします。
進捗確認や改善を重視し、透明性、検査、適応を基盤としながら、短期間の開発サイクル「スプリント」を繰り返して進めていきます。
今回はそんなスクラム開発について、その特徴やメリット・デメリット、進め方について解説します!
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スクラム開発はアジャイル開発の手法のひとつ
スクラム開発とは、アジャイル開発の代表的な手法のひとつです。
アジャイル開発とは、柔軟で迅速なソフトウェア開発手法です。小規模な反復作業(イテレーション)を繰り返すことで、頻繁にリリースを繰り返しながら進めることができます。
これにより、変化に対応しやすく、高品質なシステム開発が可能になります。その代表的な手法の一つがスクラム開発です。
スクラム開発では進捗確認や改善を重視し、透明性、検査、適応を基盤としながら、短期間の開発サイクル「スプリント」を繰り返して進めていきます。2002年にケン・シュエイバーとマイク・ビードルによって広まりました。
スクラム開発の特徴
スクラム開発では、チームワークを重視します。その名前はラグビーのプレイに由来し、固定的なメンバーで役割を明確にして進めるのが特徴です。
プロダクトオーナー、開発者、スクラムマスターの三役が連携し、スプリントと呼ばれる短期間の開発サイクルを繰り返します。
スクラム開発には「透明性」「検査」「適応」という3本柱があります。
「透明性」は、プロセスや作業状況、個人の状況を見える化し、「検査」は進捗状況やプロセスの問題を確認します。「適応」は検査結果に基づきプロセスやプロダクトを改善し、常に最良の状態を目指します。
スクラム開発は少人数で進め、密接なコミュニケーションを重視します。5~10名のチームが最適とされ、全メンバーが各フェーズに関わります。
プロジェクトマネージャーを置かず、スクラムマスターが調整役としてプロジェクトを円滑に進行させます。各スプリントは4週間以内で、一連の要件定義、設計、実装、テスト、リリースを含みます。
このようにスクラムは透明性を高め、チーム全体で検査と適応を繰り返すことで、高品質なプロダクトを短期間で開発する手法です。
スクラムマスターとプロダクトオーナーの支えが重要で、チームは自律的に考え行動することが求められます。
スクラム開発のメリット
スクラムの導入には多くのメリットがあります。
発注側の要求に柔軟に対応できる
まず、発注側の要求に柔軟に応えられることが挙げられます。スクラムは短期間の開発サイクルを繰り返しながら進めるため、途中で要求が変更されても柔軟に対応できます。
また同様に市場のニーズにも対応しやすいです。
これにより、従来のウォーターフォール型開発と比べて迅速に市場の変化に対応できるのが特徴です。
スプリントごとにテストしながら開発できる
ウォーターフォール開発の場合、リリース直前に大規模なテストをする必要があります。そこで大きな問題が見つかった場合、工程を回帰させて修正をしていかなければなりません。
スクラム開発ではスプリントごとにテストを行うことで、プロジェクト終盤での大規模な問題発生を回避でき、生産性の向上が期待できます。
チームワークが強化される
また細かいコミュニケーションによりチームワークを強化し、生産性を向上させる効果もあります。
固定的なメンバーで開発を進めるため、メンバー同士の得手不得手を理解し、効率的にプロジェクトを進行させることが可能です。
工数の見積もりが正確
さらに、スクラム開発ではスプリント単位で開発をおこなうため、工数の見積もりが正確になります。また、スプリント単位での見積もりが可能です。
これらの特徴から、スクラムは短期間での最大限の成果を期待できる手法として注目されています。
スクラム開発のデメリット
スクラム開発には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
スケジュール管理が難しい
まず全体のスケジュール管理が難しいことがデメリットです。仕様変更に対応しやすい反面、スケジュールの全体像が見えにくくなり、管理が煩雑になることがあります。
プロジェクトが肥大化する可能性
スコープクリープによるプロジェクトの肥大化も挙げられます。仕様変更が容易であるため、プロジェクトが際限なく拡大する可能性があるのです。
綿密なコミュニケーションが必要
コミュニケーションが不足すると、プロジェクトが円滑に進まない可能性もあります。スクラム開発では、メンバー間の綿密なコミュニケーションが不可欠であり、これが欠けるとプロジェクトの進行が大幅に遅れることがあります。特に、途中でメンバーが離脱した場合、プロジェクト全体に大きな影響が及びます。
各メンバーの高いスキルが必要
スクラム開発を成功させるには、高い技術力を持つメンバーが必要です。短期間・少人数での開発には、各メンバーのスキルが重要であり、初心者が多いチームでは効率的に作業を進めるのが難しい場合があります。
スクラム開発の進め方
スクラム開発は以下の4つのプロセスによって構成されています。
スプリントプランニング
スプリントの最初に行われる計画作成のプロセスです。プロダクトバックログから優先度の高いタスクを抽出し、チーム全員で具体的なタスクに分解して進行を確認します。これにより、全員が同じ目標と認識を共有します。
デイリースクラム
毎日決まった時間に行われる15~30分程度の短いミーティングです。メンバー全員が前日の作業進捗や今日の予定、そして障害となっている問題点を共有し、スプリントゴールに向けた進捗を確認します。
スプリントレビュー
スプリントの終わりに行われるレビューで、開発された機能やソフトウェアの評価を行います。開発側と顧客側が参加し、成果物の確認とフィードバックを受け、新たなバックログの追加など次のスプリントに向けた準備をします。
スプリントレトロスペクティブ
スプリントの最後に行う振り返りです。チーム全員が集まり、スプリント中の良かった点や改善点を共有し、次のスプリントで同じ問題が発生しないように対策を講じます。この振り返りを通じて、チームのプロセスやパフォーマンスの改善を図ります。
アジャイル開発のその他の手法例
エクストリームプログラミング(XP)
エクストリームプログラミング(XP)では最初にプロジェクト全体の詳細な計画を立てず、アジャイル開発の中でも特にスピードとシンプルさを追求し、最小限のドキュメンテーションで進める手法です。
特徴として2名のプログラマーによるペアプログラミングや顧客との密接なコミュニケーションがあり、高品質なコードをより効率的に作成できます。
またテスト駆動開発(TDD)を駆使することで、完成したコードをわかりやすく書き換えるリファクタリングを随時おこなうことができます。
XPのメリットは顧客満足度の向上、デメリットは共同作業による効率低下の可能性です。
▼テスト駆動開発(TDD)についてはこちらの記事へ▼
ユーザー機能駆動開発(FDD)
ユーザー機能駆動開発(FDD)は、ユーザー目線で価値のある機能を中心として、短期間でよりユーザーファーストなソフトウェアを提供するというアジャイル開発手法です。
1997年にジェフ・デ・ルーカが考案し、全体モデルの作成から機能リストの構築、計画、設計、構築の5つの基本活動を繰り返します。
FDDのメリットは高品質なシステム作成と大規模プロジェクト対応ですが、ユーザーニーズ把握に時間がかかる点とスケジュールが遅延しやすい点がデメリットです。
リーンソフトウェア開発(LSD)
リーンソフトウェア開発(LSD)は、トヨタの「リーン生産方式」を応用した手法で、無駄を省き効率を最大化することを目指します。
2003年にメアリー・ポッペンディークとトム・ポッペンディークにより提唱されました。無駄の排除、品質の構築、知識の創出、決定の遅延、迅速な提供、人の尊重、全体の最適化という7つの原則に基づいて開発をおこないます。
テスト駆動開発や継続的インテグレーションを用いて品質を高め、顧客のフィードバックを迅速に反映させることで、高品質なソフトウェアを提供しますが、コストが高くなる場合があります。
適応型ソフトウェア開発(ASD)
ASD(Adaptive Software Development)は、アジャイル開発手法の一つで、変化の多い環境に適応しながらソフトウェアを開発します。
「思索」「協調」「学習」の3段階のイテレーションを繰り返すことで進行し、思索で機能や手順を決定し、協調でチームが密接にコミュニケーションを取りながら開発し、学習でレビューを通じて改善します。
ASDは仕様が明確でないプロジェクトや頻繁に変化する状況に適しており、高品質なソフトウェアを提供しますが、スケジュール管理がより難しいというデメリットもあります。
カンバン
カンバンはトヨタの生産方式に由来するソフトウェア開発手法で、タスクの可視化、同時進行タスクの制限、タスク完了の平均時間短縮が特徴です。
タスクを「To-Do」「進行中」「完了」の3つに分けて配置するカンバンボードを使い、視覚的に管理します。
これにより、進捗状況の把握や柔軟な対応が可能になり、チームのコミュニケーションが活性化し、問題の迅速な解決が図れます。
しかし、タスク間の依存関係の把握が難しく、長期的なプロジェクトには不向きな点がデメリットです。
まとめ
今回はアジャイル開発の代表的な手法のひとつであるスクラム開発について、その特徴やメリット・デメリット、進め方について解説させていただきました。
スクラム開発は、アジャイル開発手法の中でも特にチームワークと柔軟性を重視する手法です。プロダクトオーナー、開発者、スクラムマスターが協力し、短期間の開発サイクルを繰り返すことで、高品質なプロダクトを迅速に提供することが可能です。
そのメリットとして、スプリントごとにテストを行うことで問題の早期発見と解決が期待できる点や、チームワークが向上し生産性が上がることが挙げられます。
一方で、全体のスケジュール管理が難しく、プロジェクトの肥大化やメンバー間の高いスキルが求められるなどのデメリットも存在します。
スクラム開発の特徴を理解し、適切に導入することで、プロジェクトの成功率を高めることができるでしょう。
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この記事の監修
Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ