ソフトウェア開発における品質保証(QA)の重要性

「開発したソフトウェアにバグが見つかって、ユーザーからクレームが…」

「納期に追われて、品質チェックがおろそかになってしまった…」

そんな経験、ありませんか?

ソフトウェア開発において、品質保証は非常に重要です。

品質保証をしっかり行うことで、

・バグの少ない、高品質なソフトウェアを開発できる

・開発期間を短縮し、コストを削減できる

・ユーザー満足度を高め、企業の信頼を獲得できる

など、多くのメリットがあります。

そこで今回は、ソフトウェア開発における品質保証の基礎知識を、分かりやすく解説!

品質保証の重要性、具体的な手法、成功させるためのヒントまで、網羅的にご紹介しますので、ぜひ最後まで読んで、今後のソフトウェア開発に役立ててください。

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なぜ品質保証(QA)が重要なの?

まずは、品質保証の概要と重要性について見ていきましょう。

品質保証ってどんなこと?

ソフトウェア開発において、品質保証とは、開発するソフトウェアがユーザーの期待通りに動作し、求められる品質を満たしていることを確認するための活動全体を指します。

具体的には、バグの発生を予防するための設計段階でのレビュー、実際にソフトウェアを動かして不具合を見つけるテスト、プログラムのコードを検査するインスペクションなど、様々な活動が含まれます。

品質保証は、開発プロセス全体を通して行われるものであり、開発者だけでなく、テスター、プロジェクトマネージャーなど、様々な人が関わる重要なプロセスです。

品質保証がないとどうなるの?

品質保証を軽視すると、開発したソフトウェアに様々な問題が発生し、ユーザーに多大な迷惑をかけてしまう可能性があります。

たとえば、ECサイトで決済処理が正常に行われなかったり、ゲームアプリが突然フリーズしてしまうなどの不具合は、ユーザーの不満やストレスに繋がり、サービスの利用を諦めてしまう原因にもなりかねません。

また、企業にとっては、顧客離れや売上減少、ブランドイメージの低下など、深刻な影響を与える可能性もあります。

近年では、ソフトウェアの不具合が原因で、個人情報が流出したり、システムが停止したりするなど、社会的に大きな問題に発展するケースも増えています。

このような事態を避けるためにも、品質保証はソフトウェア開発において不可欠なプロセスと言えるでしょう。

品質保証を行うメリット

ソフトウェア開発に品質保証を導入することで、開発者、企業、そしてユーザーに多くの素晴らしいメリットをもたらします。

品質保証は単なるバグ探しではなく、ソフトウェア開発全体をより良くするための活動といえます。

主なメリット5つ

①バグの早期発見と修正

②開発コストの削減

③ユーザー満足度の向上

④開発チーム全体のスキルアップ

⑤企業の信頼獲得

①バグの早期発見と修正

品質保証を開発の初期段階から実施することで、バグを早期に発見し、修正することができます。

早期にバグを発見できれば、修正にかかる時間やコストを大幅に削減できます。

修正が遅れれば遅れるほど、影響範囲が広がり、修正が困難になるため、開発期間の短縮、ひいては納期遵守にも繋がります。

②開発コストの削減

バグの修正には、多くの時間と労力が必要です。

品質保証によってバグを未然に防ぐことで、修正コストを削減し、開発全体のコストを抑えることができます。

また、品質保証によってソフトウェアの信頼性が高まれば、リリース後のサポートコストも削減できる可能性があります。

③ユーザー満足度の向上

高品質なソフトウェアは、ユーザーの期待に応え、快適な使用体験を提供することで、満足度を高めることができます。

ユーザー満足度が高まれば、リピーターの増加や口コミによる評判の向上など、ビジネスにも良い影響を与えます。

④開発チーム全体のスキルアップ

品質保証活動を通して、開発チーム全体で品質に対する意識を高め、スキルアップを促進することができます。

たとえば、コードレビューやテストを通して、開発者は互いのコードを学び、良いコードを書くためのスキルを向上させることができます。

また、品質保証に関する知識や経験を共有することで、チーム全体のレベルアップに繋がります。

⑤企業の信頼獲得

高品質なソフトウェアを継続的に提供することで、企業の信頼を獲得し、ブランドイメージ向上に繋げることができます。

信頼は、長期的なビジネスの成功には不可欠な要素であり、品質保証はそれを支える重要な役割を担っています。

このように、品質保証は、開発者、企業、そしてユーザー、すべてにとって多くのメリットをもたらす重要な活動です。

品質保証(QA)と品質管理(QC)の違い

ソフトウェア開発の現場では、「品質保証」と似た言葉に「品質管理」があります。

どちらもソフトウェアの品質を高めるための活動ですが、その役割や目的には違いがあります。

品質保証(QA)とは

品質保証(QA)は、ソフトウェア開発プロセス全体を対象とし、「ソフトウェアがどのように作られるか」という点に着目します。

開発の初期段階から、計画、設計、実装、テストといった各プロセスに品質を組み込むための活動を行います。

品質保証は、問題が発生するのを予防するための活動といえます。

開発プロセス全体を改善することで、バグの発生を抑制し、高品質なソフトウェアを効率的に開発することを目指します。

品質管理(QC)とは

品質管理(QC)は、完成したソフトウェア自体を対象とし、「ソフトウェアが要求された品質を満たしているか」という点に着目します。

検査やテストを通して、ソフトウェアが仕様書通りに動作するか、バグがないかなどを確認します。

品質管理は、問題が発生した後に、それを検出し、修正するための活動といえます。

完成したソフトウェアを検査することで、品質基準を満たしていることを確認し、ユーザーに安心して使ってもらえる製品を提供することを目指します。

このように、品質保証と品質管理は、どちらもソフトウェアの品質を高めるために重要な活動ですが、そのアプローチや目的が異なります。

両者を適切に組み合わせることで、より効果的にソフトウェアの品質を高めることができます。

品質保証の種類を知ろう!

ソフトウェア開発における品質保証には、様々な手法が存在します。

主な手法としては、レビュー、テストの2つが挙げられます。

①レビュー

・ウォークスルー
・インスペクション
・ピアレビュー

②テスト

・単体テスト
・結合テスト
・システムテスト
・受け入れテスト
など

レビュー

レビューとは、ソフトウェア開発における品質保証活動の一つで、作成されたドキュメントやソースコードを複数人でチェックし、問題点や改善点を洗い出す作業のことです。

レビューを行うことで、開発者一人では見逃してしまうようなミスや、潜在的な問題点を早期に発見することができます。

また、レビューを通して開発者同士がコミュニケーションをとることで、知識やノウハウの共有、スキルアップにも繋がります。

レビューには、大きく分けて以下の3つの種類があります。

ウォークスルー

ウォークスルーは、比較的非公式なレビュー手法で、開発者が作成したドキュメントやソースコードを、他の開発者に説明しながら進めていく方法です。

主に、設計の初期段階で実施され、設計の意図や内容を共有し、大枠での問題点や改善点を発見することを目的とします。

ウォークスルーは、会議室などで参加者が集まり、資料を見ながら行われることが一般的です。

比較的リラックスした雰囲気で、自由な意見交換を通して、問題点の発見だけでなく、新たなアイデアを生み出すことも期待できます。

インスペクション

インスペクションは、ウォークスルーよりも公に行うレビュー手法で、あらかじめ決められた手順に従って、ドキュメントやソースコードを厳密にチェックしていく方法です。

インスペクションでは、モデレーターと呼ばれる進行役が、レビューの進め方を管理し、参加者は決められた役割に従ってチェックを行います。

インスペクションは、主に詳細設計やコーディングの段階で実施され、潜在的なバグや問題点の発見を目的とします。

ピアレビュー

ピアレビューは、開発者同士が互いの成果物をレビューし合う手法です。

同じレベルの開発者同士がレビューを行うため、より具体的な指摘やアドバイスを期待することができます。

ピアレビューは、ウォークスルーやインスペクションに比べて、時間やコストをかけずに実施できるというメリットがあります。

近年では、GitHubなどのツールを利用して、オンライン上でピアレビューを行うことも一般的になっています。

それぞれのレビュー手法の特徴を理解し、プロジェクトの規模や特性に合わせて適切な手法を選択することが重要です。

レビューを効果的に実施するためには、事前にチェックリストを作成したり、レビューの目的を明確にするなどの準備が重要です。

また、レビューの結果を記録し、今後の開発に活かすことも大切です。

テスト

テストとは、プログラムを実際に実行し、期待通りの動作をするかどうかを確認する作業のこと。

様々な種類があり、それぞれ異なる目的と方法で実施されます。

単体テスト

単体テストは、プログラムを構成する最小単位であるモジュール(関数やクラスなど)を個別にテストする工程です。

モジュールが仕様書通りに正しく動作するかを確認することで、プログラム全体の品質向上を目指します。

単体テストは、開発者自身が行うことが多く、コーディングと並行して実施されるケースが多いです。

結合テスト

結合テストは、単体テストを終えた複数のモジュールを組み合わせ、互いに正しく連携して動作するかを確認する工程です。

モジュール間のインターフェースやデータの受け渡しなどが正しく行われているかを検証します。

結合テストは、単体テストよりも大規模なテストとなり、テスト環境の構築やテストデータの準備に時間と労力がかかる場合があります。

システムテスト

システムテストは、ソフトウェア全体を統合し、要求された機能や性能を満たしているかを検証する工程です。

実際の使用環境を想定したテストを実施することで、ソフトウェアがユーザーの期待通りに動作するかを確認します。

システムテストでは、機能テスト、性能テスト、負荷テスト、セキュリティテストなど、様々な種類のテストが行われます。

受け入れテスト

受け入れテストは、開発したソフトウェアがユーザーの要求を満たし、実際に使用できる状態であるかを確認する最終段階のテストです。

ユーザー自身、もしくはユーザーの立場に近い担当者がテストを実施し、ソフトウェアの品質を評価します。

受け入れテストの結果によっては、ソフトウェアの修正や機能追加を行い、ユーザーが満足できる品質に仕上げていきます

品質保証を成功させるためのヒント

品質保証を成功させるためのヒントは、主に以下の4つです。

①早期発見がカギ!
②チームで協力しよう!
③ツールを導入してみよう!
④継続的な改善を心がけよう!

①早期発見がカギ!

品質保証において、最も重要なのは「早期発見」です。

開発の初期段階でバグや問題点を見つけ出すことで、修正にかかるコストを最小限に抑え、開発期間の短縮に繋げることができます。

たとえば、設計段階でレビューを実施することで、設計書の矛盾や不備を早期に発見し、手戻りを防ぐことができます。

また、コーディングの段階で静的解析ツールなどを活用することで、潜在的なバグを早期に発見し、修正することができます。

②チームで協力しよう!

品質保証は、開発者だけの責任ではありません。

プロジェクトマネージャー、テスター、デザイナーなど、開発に関わるすべてのメンバーが協力し、品質向上に取り組むことが重要です。

たとえば、開発者は、テストしやすいコードを記述したり、バグレポートを丁寧に作成したりすることで、テスターの作業をサポートすることができます。

テスターは、発見したバグを分かりやすく報告することで、開発者が効率的に修正を行うことができるように協力します。

このように、チーム全体で品質に対する意識を高め、協力体制を築くことで、より効果的な品質保証活動を行うことができます。

③ツールを導入してみよう!

品質保証を効率的に行い、より高い効果を得るためには、適切なツールの導入が欠かせません。

ツールを活用することで、作業の自動化、効率化、ミスの削減などが可能となり、限られた時間とリソースを有効に使うことができます。

ここでは、品質保証でよく使われるツールを2つの種類に分けてご紹介します。

静的解析ツール

静的解析ツールとは、プログラムのソースコードを解析し、潜在的なバグや問題点を自動的に検出するツールです。

人間が目視でチェックする場合に比べて、網羅的に、かつ迅速にコードを検査することができ、ヒューマンエラーによる見落としを防ぐことができます。

また、コードの可読性や保守性を向上させるための指摘を受けることもできます。

静的解析ツールは、開発の初期段階から導入することで、バグの早期発見・修正に繋がり、開発期間の短縮やコスト削減に貢献します。

さらに、開発者自身のスキルアップにも繋がるというメリットもあります。

テスト自動化ツール

テスト自動化ツールとは、ソフトウェアのテストを自動的に実行するツールです。

これまで人手で実施していたテストを自動化することで、テストにかかる時間と労力を大幅に削減することができます。

また、テストの精度を高め、人的ミスを減らす効果も期待できます。

特に、繰り返し行う回帰テストなどを自動化することで、効率的に品質保証を行うことができます。

テスト自動化ツールは、テストの実行だけでなく、テスト結果の分析やレポート作成などの機能も備えている場合があり、品質保証活動全体をサポートします。

これらのツールを導入することで、品質保証活動を効率化し、より高品質なソフトウェア開発を実現することができます。

ただし、ツールはあくまで補助的なものであり、ツールの導入だけで品質が保証されるわけではありません。

ツールの特性を理解し、適切に活用することが重要です。

④継続的な改善を心がけよう!

品質保証は、一度実施すれば終わりではありません。

開発プロセスや市場のニーズの変化に合わせて、継続的に改善していくことが重要です。

たとえば、過去のバグ発生状況を分析し、再発防止策を検討したり、新しいテスト手法を導入したりすることで、品質保証の精度を高めることができます。

また、ユーザーからのフィードバックを収集し、改善に活かすことも重要です。

まとめ

今回は、ソフトウェア開発における品質保証の基礎知識について解説しました。

品質保証は、高品質なソフトウェアを開発するために非常に重要なプロセスです。

品質保証を軽視すると、バグの発生やユーザー満足度の低下、企業の信頼失墜など、様々な問題に繋がる可能性があります。

品質保証には、レビュー、テストなど様々な手法があり、それぞれ異なる目的と方法で実施されます。

これらの手法を適切に組み合わせることで、効率的にソフトウェアの品質を高めることができます。

品質保証を成功させるためには、早期発見、チームワーク、ツール活用、継続的な改善が重要です。

ぜひ今回の記事を参考にして、品質保証の知識を深め、ユーザーに喜ばれるソフトウェア開発を目指しましょう!

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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。

記事制作:川上サトシ