受け入れテスト(UAT)のプロセスについて徹底解説!

開発されたシステムが、発注側の満足できる内容かどうか確認するために受け入れテスト(UAT)というものがあります。

このテストを適切に実施することで、開発されたシステムを最終確認し、スムーズな運用につなげることができます。

しかし、受け入れテストを初めて経験する担当者の中には、

「どんな準備をすればいいの?」

「どんな種類のテストをすればいいの?」

「どうやってテストを進めればいいの?」

といった疑問を抱える方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、受け入れテストのプロセスについて、4つの段階(計画、準備、実行、承認・検収)に分けて詳しく解説します。

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受け入れテスト(UAT)とは?

システム開発の最終段階では、受け入れテスト(UAT)が実施されます。

受け入れテストとは、発注側がシステムを受け入れるかどうかを判断するためのテストです。

発注側が実際にシステムを使用し、要件を満たしているか、問題なく動作するかなどを確認します。

受け入れテスト(UAT)を実施するタイミング

受け入れテストは、システム開発側での検証テストの終了後に実施されます。

開発側が「完成」と判断したシステムを、発注側が最終チェックする工程となります。

受け入れテストで問題が発見されなければ、システムは発注側に納品され、運用が開始されます。

逆に、受け入れテストで問題が発見された場合は、開発者に差し戻し、修正を行います。

受け入れテストは、システム開発の最終関門であり、システムの品質を左右する重要なテストです。

受け入れテストを適切に実施することで、高品質なシステムを構築し、リリース後のスムーズなソフトウェア運用に繋げることができます。

テスト工程における受け入れテストは大切

受け入れテストを成功させるためには、テストの目的や種類を理解し、計画的に進めることが重要です。

また、テストの進捗状況や結果を共有し、チーム全体で品質向上に取り組むことが大切です。

チームで共有できるリストやチェック表を用いて管理することも有効です。

受け入れテストは、顧客満足度を向上させ、企業の信頼を獲得するためにも重要なプロセスです。

プロセス1:計画

受け入れテストをスムーズに進めるためには、事前の計画が重要です。

計画段階では、テストの目的や範囲、スケジュール、担当者などを明確に定義することで、後々の混乱や手戻りを防ぐことができます。

受け入れテストの計画を立てる際には、以下の項目を検討する必要があります。

受け入れテストの目的

受け入れテストを実施する目的を明確に定義します。

これは、テストの方向性を定め、適切な計画を立てるために非常に重要です。

受け入れテストの目的は、プロジェクトによって異なりますが、一般的には、以下のいずれか、または複数を組み合わせたものになります。

・システムが要件を満たしていることを確認する

・ユーザーが問題なくシステムを利用できることを確認する

・システムの品質に問題がないことを確認する

・システムが本番環境で安定稼働することを確認する

・ユーザーにシステムの操作方法を習得してもらう

・ユーザーにシステムへの理解を深めてもらう

・ユーザーにシステムに対する意見や要望をヒアリングする

受け入れテストのスコープ

テストの対象範囲を明確に定義します。

システム全体をテストするのか、特定の機能に絞ってテストするのか、などを明確にします。

スコープを明確にすることで、テストに必要な工数や期間を推測し、計画を立てることができます。

また、スコープを明確にすることで、テスト担当者の役割分担を明確にし、テストの効率化を図ることもできます。

受け入れテストのスケジュール

テストの実施時期や期間を明確に定義します。

開発スケジュールと調整し、余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。

スケジュールが遅延すると、プロジェクト全体の遅延に繋がる可能性があるため、注意が必要です。

また、スケジュールには、テストの実施期間だけでなく、テストの準備期間や結果分析期間なども含める必要があります。

受け入れテストの実施メンバー

テストの実施担当者を明確に定義します。

プロジェクトマネージャー、テストリーダー、テスター、開発者など、それぞれの役割と責任を明確にすることで、テストをスムーズに進めることができます。

また、必要に応じて、外部の専門家をテストに招集することもできます。

受け入れテストの管理フロー

テストの実施手順、バグの報告方法、修正手順などを定義します。

テストの実施手順を明確にすることで、テストを効率的に進めることができます。

バグの報告方法や修正手順を明確にすることで、バグ修正の漏れや遅延を防ぐことができます。

また、テストの進捗状況を管理するためのツールやシステムを導入することも有効です。

シナリオ策定の方針

どのようなシナリオに基づいてテストケースを作成するかを定義します。

ユーザーの利用シーンを想定したシナリオを作成することで、より実践的なテストを行うことができます。

シナリオを作成する際には、ユーザーの行動パターンやシステムの利用頻度などを考慮する必要があります。

また、シナリオは、テストケース作成の基となる重要なドキュメントであるため、作成後も定期的に見直し、必要があれば更新する必要があります。

これらの項目を明確に定義することで、受け入れテストをスムーズに進め、システムの品質向上に繋げることができます。

プロセス2. 準備

受け入れテストをスムーズに進めるためには、入念な準備が欠かせません。

準備段階で、テスト環境やテストデータ、必要な機材、参加者などを整えておくことで、テストを効率的に進め、正確な結果を得ることができます。

テスト環境を用意

まずは、受け入れテストを実施するための環境を準備します。

理想的には、本番環境と全く同じ構成のテスト環境を用意することが望ましいです。

これにより、本番環境で発生する可能性のある問題を、事前に発見することができます。

しかし、本番環境と同じ構成のテスト環境を用意することが難しい場合もあるでしょう。その場合は、可能な限り本番環境に近い構成でテスト環境を構築することが重要です。

具体的には、サーバー、ネットワーク機器、データベースなど、システムの構成要素を本番環境と同等にするか、それに近いスペックのものを用意します。

また、ソフトウェアのバージョンや設定なども、本番環境と一致させるようにします。

テスト参加者や実施場所についての準備

受け入れテストは、発注側が主体となって実施するテストです。

そのため、事前にテストに参加する発注側の担当者を決定し、それぞれの役割分担を明確にしておく必要があります。

さらに、テストを実施する場所についても、事前に決めておく必要があります。

発注側のオフィスで実施する場合や、テスト専用のスペースを用意する場合など、状況に応じて適切な場所を選定しましょう。

準備すべき項目

以下は、受け入れテストの準備項目の例です。

参加者

どのような仮想ユーザーがテストに参加するのかを決定します。

ユーザーの属性(年齢、性別、職業、ITスキルなど)や、システムの利用頻度などを考慮して選定します。

実施場所

テストを実施する場所を決定します。

静かで集中できる環境であることが望ましいです。

利用端末

テストで使用する端末を準備します。

ユーザーが実際に使用する端末とOS、ブラウザのバージョンを揃えることが重要です。

アカウント権限

テストで使用するアカウントを準備し、権限を設定します。

ユーザーが実際に利用する権限と同じ権限を設定することで、より現実的なテストを行うことができます。

テスト環境

テスト環境を構築します。本番環境と同様の構成にすることが理想です。

テストデータ

テストで使用するデータを準備します。

個人情報を含む場合は、マスキングなどの処理を行い、セキュリティに配慮する必要があります。

これらの準備を事前に行うことで、受け入れテストをスムーズに進めることができます。

プロセス3. 実行

いよいよ受け入れテストを実施する段階です。

準備段階で作成した計画書に基づき、テストを実行していきます。

受け入れテストを実行

実行段階では、テスト計画書で定義した内容に従って、テストケースを実行していきます。

テストケースは、システムの機能や仕様を網羅的に検証できるよう、詳細に作成されている必要があります。

また、テストケースの実行手順を明確にすることで、テストを効率的に進めることができます。

テスト実行中は、バグや問題点などの発生状況を記録し、必要に応じてスクリーンショットなどを取得しておきましょう。

受け入れ管理表でチーム内に共有

テスト実行中は、受け入れ管理表を使用して、検証結果や要望をまとめていきます。

受け入れ管理表には、少なくとも以下の項目を記載します。

・テストケースID

・テストケース名

・テスト結果(OK/NG)

・問題点や不具合の内容

・修正担当者

・修正状況

受け入れ管理表は、テストの進捗状況や問題点の発生状況を把握するために重要なツールです。

また、チーム内で情報を共有するためにも活用します。

受け入れテストの例

受け入れテストには、様々な種類があります。

プロジェクトの目的やシステムの特性に合わせて、適切な種類のテストを実施する必要があります。

以下は、受け入れテストの種類の例です。

機能テスト

システムの機能が仕様書通りに動作するかを検証するテストです。

基本的なテストであり、システムのあらゆる機能が設計どおりに動作するかを確認します。

例えば、ログイン機能、新規登録機能、検索機能、注文機能など、システムの主要な機能をテストします。

機能テストでは、正常系のテストだけでなく、異常系のテストも重要です。

異常系のテストでは、無効な値を入力したり、想定外の操作を行ったりすることで、システムがエラーを発生させずに適切に処理できるかを確認します。

シナリオテスト

ユーザーの業務フローに沿ってシステムを操作し、問題なく業務が遂行できるかを検証するテストです。

ユーザーが実際にシステムを使用する場面を想定し、一連の操作をテストします。

例えば、ECサイトであれば、「商品を検索する」「カートに入れる」「注文手続きを行う」「注文履歴を確認する」といった一連の操作をテストします。

業務シナリオテストでは、ユーザーの視点に立って、システムが使いやすく、効率的に業務を遂行できるかを確認することが重要です。

疎通テスト

システムが外部システムと連携して正しく動作するかを検証するテストです。

多くのシステムは、他のシステムと連携して動作します。

例えば、ECサイトであれば、決済システムや配送システムなどと連携しています。

疎通テストでは、これらの外部システムとの連携が問題なく行われているかを確認します。

具体的には、データの送受信が正しく行われているか、エラーが発生した場合に適切に処理されているかなどを確認します。

性能テスト

システムの処理速度や応答速度、安定性などを検証するテストです。

システムに負荷をかけて、パフォーマンスの変化を測定します。

例えば、Webサイトに大量のアクセスが集中した場合でも、問題なく動作するかを確認します。

回帰テスト

プログラムの修正後、既存の機能に影響がないかを検証するテストです。

システムの改修や機能追加を行った際に、既存の機能に影響がないかを確認します。

回帰テストを行うことで、予期せぬバグの発生を防ぐことができます。

セキュリティテスト

システムのセキュリティ強度を検証するテストです。

不正アクセスや情報漏えいなどのリスクがないかを確認します。

セキュリティテストを行うことで、システムの安全性を確保することができます。

ユーザビリティテスト

システムの使いやすさを検証するテストです。

実際のユーザーにシステムを使ってもらい、操作性や分かりやすさなどを評価します。

ユーザビリティテストを行うことで、ユーザーにとって使いやすいシステムを開発することができます。

これらのテストを組み合わせることで、システムの品質を多角的に評価することができます。

プロセス4. 承認・検収

受け入れテストが完了したら、いよいよ承認・検収のプロセスに進みます。

このプロセスでは、システムが発注内容の要求を満たしているか、問題なく動作するかを最終確認することで、納品の承認とプロジェクトの完了を目指します。

不具合やトラブルがなければ承認する

受け入れテストで発見されたバグや問題点がすべて修正され、システムが満足できる内容であるかを確認した後、承認を行います。

基準を満たさない場合は開発側の対応が必要

受け入れテストで発見された問題点が修正されなかった場合や、発注側としてシステムに満足できなかった場合は、承認をすることはできません。

このような場合は、開発側にコンタクトをとって協力し、問題点の解決に取り組む必要があります。

問題点が解決した後には、再び受け入れテストを実施し、確認をする必要があります。

承認・検収ができない場合の要因の例

承認・検収ができない要因としては、以下のようなものが考えられます。

品質が悪い: システムにバグや不具合が多く、安定して動作しない。

多くの機能上のバグ: システムの機能が仕様書の通りに動作しない。

要件からの逸脱: システムが顧客の要求を満たしていない。

市場要件に合致していない: システムが市場のニーズに合致していない。

まとめ

今回は受け入れテストのプロセスについて、計画、準備、実行、承認・検収の4つの段階に分けて解説しました。

受け入れテストは、システム開発の最終段階で実施される重要なテストです。

発注側の要求を満たしたシステムであるかを確認するため、発注側自身が受け入れテストを適切に実施することが不可欠です。

受け入れテストを成功させるためには、事前の計画が重要です。

テストの目的や範囲、スケジュール、担当者などを明確に定義することで、後々の混乱や手戻りを防ぐことができます。

また、テスト環境やテストデータの準備、テスト参加者の選定など、入念な準備も必要です。

受け入れテストには、機能テスト、業務シナリオテスト、疎通テストなど、様々な種類があります。

プロジェクトの目的やシステムの特性に合わせて、適切な種類のテストを実施しましょう。

受け入れテストの実行段階では、テスト計画書で定義した内容に従って、テストケースを実行していきます。

テスト実行中は、バグや問題点などの発生状況を記録し、必要に応じてスクリーンショットなどを取得しておきましょう。

受け入れテストが完了したら、承認・検収のプロセスに進みます。

システムが発注側の要求を満たしているか、問題なく動作するかを最終確認し、開発側に対して承認をすることで、プロジェクトの完了を目指します。

受け入れテストは、顧客満足度を高め、企業の信頼を獲得するためにも重要なプロセスです。

この記事で紹介した内容を参考に、受け入れテストを成功させ、ユーザーに喜んでもらえるシステムを開発しましょう!

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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。

記事制作:川上サトシ