受け入れテスト(UAT)計画のコツを徹底解説!
システム開発の最終段階で行われる受け入れテスト。
顧客に満足してシステムを使ってもらうためには、受け入れテストを成功させることが重要です。
しかし、初めて受け入れテストに携わる方は、
「どんな計画を立てればいいの?」
「どんなテストをすればいいの?」
「どうやって進めればいいの?」
など、不安に思うことも多いのではないでしょうか?
そこで今回は、受け入れテストで失敗しないための3つのコツを紹介します。
これらのコツを押さえれば、スムーズにテストを進め、顧客満足度の高いシステムを構築することができます。
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受け入れテスト(UAT)とは?
システム開発の最終段階では、受け入れテスト(UAT)と呼ばれるテストが実施されます。
UATは、User Acceptance Test の略で、日本語では「ユーザー受け入れテスト」と呼ばれます。
発注側がおこなうテスト
受け入れテストは、システムを発注した側、つまりユーザー側が主体となって実施するテストです。
開発されたシステムが、発注側の要求を満たしているか、問題なく動作するかなどを確認します。
具体的には、ユーザーが実際にシステムを使用し、機能や性能、使い勝手などを評価します。
受け入れテストは、システム開発の最終関門であり、システムの品質を左右する重要なテストです。
受け入れテストを適切に実施することで、高品質なシステムを構築し、リリース後のスムーズなソフトウェア運用に繋げることができます。
最終的にシステムを承認するかどうかを決定する
システム開発では、開発側も様々なテストを実施します。
単体テスト、結合テスト、システムテストなど、開発工程の中で様々なテストが実施されます。
しかし、これらのテストは、あくまでも開発側の視点で行われるテストです。
ユーザー側の視点でシステムを評価するのは、受け入れテストが初めてとなります。
そのため、受け入れテストは、システムの品質を最終的に確認する重要な機会となります。
受け入れテストの結果に基づいて、発注側はシステムを承認するかどうかを決定します。
受け入れテストで問題が発見された場合は、開発側に修正を依頼します。
修正が完了したら、再度受け入れテストを実施し、問題が解決されていることを確認します。
受け入れテストは、顧客満足度を向上させ、企業の信頼を獲得するためにも重要なプロセスです。
①受け入れテストの目的と基準を明確にする
受け入れテストを成功させるためには、まずテストの目的と基準を明確に定義しておくことが重要です。
これは、テストの方向性を定め、適切な計画を立てるために非常に重要です。
受け入れテストの目的と基準を定義化
受け入れテストの目的は、プロジェクトによって異なりますが、一般的には、以下のいずれか、または複数を組み合わせたものになります。
・システムが要件を満たしているかを確認する ・ユーザーが問題なくシステムを利用できることを確認する ・システムの品質に問題がないことを確認する ・システムが本番環境で安定稼働することを確認する ・ユーザーにシステムの操作方法を習得してもらう ・ユーザーにシステムへの理解を深めてもらう ・ユーザーにシステムに対する意見や要望をヒアリングする |
同じ要件定義を基にしたテストとの違いの明確化
受け入れテストは、システムテストや運用テストと混同されがちですが、それぞれ目的が異なります。
システムテストは、開発者がシステムの機能や性能を検証するためのテストです。
運用テストは、運用担当者がシステムの運用を想定し、安定稼働を確認するためのテストです。
一方、受け入れテストは、発注者がシステムを受け入れるかどうかを判断するためのテストです。
つまり、システムテストや運用テストは開発側が主体となって実施するのに対し、受け入れテストは発注者が主体となって実施する点が大きく異なります。
受入検収の判断基準を事前に決めておく
受け入れテストを開始する前に、合格基準を明確に定義しておくことが重要です。
合格基準は、具体的で測定可能な指標である必要があります。
より明確にすることで、テストの合否判定を客観的に行うことができるでしょう。
受け入れテスト定義の例
以下は、受け入れテストの定義例です。
概要
業務運用マニュアル、業務フローをテストベースとして検証 |
目的
フロントエンドと管理画面の要件網羅性を確認 |
システム利用部門のキーマン(要件定義参加者)、情報システム部門のキーマン目線で要求事項を満たしているか確認
UAT1
テストレベル:機能要件 テストタイプ:機能テスト、画面遷移テスト、状態遷移テスト テスト目的:システムに対する要求事項をすべて満たしているかを確認、個々の機能要件をすべて満たしているかを確認 テスト観点:要件定義をテストベースとして実施、要求機能全XX機能について全て実装されているか確認 |
UAT2
テストレベル:業務要件 テストタイプ:シナリオテスト テスト目的:業務フロー通り業務が実施できるかを確認、日次、月次といった業務イベントを含む日をまたいだ業務が正しく行われるか確認 テスト観点:業務運用マニュアル、業務フローをテストベースとして検証 |
受け入れテストの目的と基準を明確にすることで、テストを効率的に進め、システムの品質向上に繋げることができます。
②適切なテストタイプを選定する
受け入れテストでは、テスト実行前の計画段階が重要です。
テストの目的や対象範囲を明確にし、適切なテストタイプを選定することで、効率的かつ効果的なテストを実施することができます。
テスト実行前の計画段階が重要
受け入れテストの計画段階では、以下の項目を検討する必要があります。
テストの目的: 受け入れテストを通して何を明らかにしたいのかを明確化します。 テストの範囲: どのシステムや機能をテストするのかを明確化します。 テストの種類: どのような種類の受け入れテストを実施するかを決定します。 テスト環境: テスト環境をどのように構築するかを検討します。 テストツール: どのテストツールを使用するかを検討します。 テストデータ: どのようなテストデータを使用するかを検討します。 スケジュール: テストの実施時期や期間を決定します。 担当者: テストの実施担当者を決定します。 |
これらの項目を検討した上で、適切なテストタイプを選定します。
テストすべき機能や要件を明確にする
テストタイプを選定する際には、対象となるシステムやアプリケーションの特性を把握し、テストすべき機能や要件を明確にする必要があります。
例えば、Webアプリケーションであれば、Webブラウザの種類やバージョン、画面サイズ、ネットワーク環境などを考慮する必要があります。
また、スマートフォンアプリであれば、OSの種類やバージョン、端末の種類、画面サイズなどを考慮する必要があります。
さらに、システムのセキュリティや性能、信頼性なども考慮する必要があります。
どのテストが必要なのか選択する
テストタイプは、テストの目的に合わせて選択する必要があります。
例えば、システムの基本的な機能を検証したい場合は、機能テストを実施します。
ユーザーの利用シーンを想定したテストを実施したい場合は、シナリオテストを実施します。また、システムの性能を検証したい場合は、性能テストを実施します。
受け入れテストの種類には、以下のようなものがあります。
・機能テスト ・ユーザビリティテスト ・性能テスト ・セキュリティテスト ・互換性テスト ・回帰テスト ・運用テスト |
選択したテストをどのように実施するのか
テストタイプを選定したら、どのように実施するかを具体的に検討します。
テストケースの作成、テストデータの準備、テスト環境の構築など、必要な準備を行います。
また、テストの実施手順や結果の評価方法なども明確にしておく必要があります。
計画した手順をフローチャートにする
テストの実施手順をフローチャートにすることで、テストの流れを視覚的に把握することができます。
フローチャートを作成することで、テストの抜け漏れや重複を防ぐことができます。
受け入れテストは、システム開発の最終段階における重要な工程です。
適切なテスト計画を立て、実行することで、高品質なシステムを構築することができます。
③計画は早いタイミングで実施する
受け入れテストは、システム開発における最終工程の一つです。
そのため、開発の遅延や他のテスト工程の延長などにより、受け入れテストに十分な時間を確保できないケースも少なくありません。
しかし、受け入れテストは、システムの品質を左右する重要な工程であり、決して手を抜くことはできません。
そこで、受け入れテストを成功させるためには、計画を早いタイミングで実施することが重要です。
受け入れテストは時間が圧迫される傾向
受け入れテストは、システム開発の最終工程に位置づけられることが多く、開発の遅延や他のテスト工程の延長などにより、時間が圧迫される傾向があります。
受け入れテストに十分な時間が確保できないと、テストが不十分になり、品質に問題が発生する可能性があります。
また、テストが遅延することで、システムのリリースが遅れ、顧客に迷惑をかけてしまう可能性もあります。
早いタイミングで準備に着手するべき
受け入れテストを成功させるためには、品質とリソースの確保が重要です。
品質を確保するためには、十分な時間をかけてテストを実施する必要があります。
リソースを確保するためには、テストに必要な人員や機材を事前に確保しておく必要があります。
これらの点を考慮すると、受け入れテストの準備は、早いタイミングで着手することが重要です。
ユーザー部門の現場メンバーのアサイン
受け入れテストには、ユーザー部門の現場メンバーが参加することが重要です。
現場メンバーは、システムを実際に利用するユーザーの視点でテストを行うことができます。
しかし、現場メンバーは、通常業務を抱えているため、受け入れテストに参加するための時間を確保するのが難しい場合があります。
そのため、早い段階で現場メンバーのスケジュールを調整し、テストへの参加を依頼しておく必要があります。
実施環境の整備
受け入れテストを実施するためには、適切な環境を整備する必要があります。
テスト環境は、本番環境と同様の構成にすることが理想ですが、それが難しい場合は、可能な限り本番環境に近い構成で構築する必要があります。
テスト環境の構築には、時間と費用がかかるため、早い段階で準備を開始する必要があります。
開発ベンダーのテスト計画時にUAT計画も進める
UATは開発ベンダーのテストがすべて終了したあとにおこなわれます。
しかしそのタイミングで計画を進めるのでは遅すぎます。開発ベンダーがテスト計画を作成するのと並行して、発注側も受け入れテストの計画を進めることがポイントとなります。
これにより受け入れテストを素早く実行でき、効率的なテストを実施することができます。
また、早期に計画を立てることで、問題点やリスクを早期に発見し、対応することができます。
まとめ
今回は受け入れテストを成功させるための3つのコツを紹介しました。
1つ目は、受け入れテストの目的と基準を明確にすることです。
受け入れテストの目的は、プロジェクトによって異なりますが、システムが要件を満たしているか、ユーザーが問題なくシステムを利用できるかなどを確認することが主な目的となります。
受け入れテストの基準としては、バグの発生率やテストケースの合格率などを設定することができます。
2つ目は、適切なテストタイプを選定することです。
受け入れテストには、機能テスト、ユーザビリティテスト、性能テストなど、様々な種類があります。
プロジェクトの目的やシステムの特性に合わせて、適切な種類のテストを実施する必要があります。
3つ目は、計画を早いタイミングで実施することです。
受け入れテストは、システム開発の最終工程に位置づけられることが多く、時間が圧迫される傾向があります。
そのため、早い段階で計画を立て、準備をしっかりと行うことが重要です。
これらのコツを踏まえることで、受け入れテストを成功させ、顧客に満足してもらえるシステムを開発することができます。
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この記事の監修
Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ