分かりやすいテスト仕様書の書き方を教えます!
もしかして、テスト仕様書の作成に苦手意識を持っていませんか?
この記事では、テスト仕様書とは何か、その重要性、そして誰でも簡単に書ける作成方法を分かりやすく解説します。
この記事を読めば、テスト仕様書作成のスキルが格段に向上し、バグのないシステム開発に貢献できるようになります。
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テスト仕様書とは?
システム開発の現場では、様々なテストが行われます。単体テスト、結合テスト、システムテスト…と、開発工程に合わせてテストの種類も多岐に渡ります。
これらのテストをスムーズに進めるために欠かせないのが「テスト仕様書」です。
テスト仕様書とは、一言で言えば「テストの設計図」のようなもの。どんなテストを、どのように行うのかを具体的に記述したドキュメントです。
例えば、ログイン機能をテストする場合、テスト仕様書には「有効なユーザー名とパスワードを入力したらログインできるか」「無効なユーザー名とパスワードを入力したらエラーメッセージが表示されるか」といった内容が記載されます。
テスト仕様書がなぜ重要なの?
それはテストの品質を確保し、バグの発生を未然に防ぐためです。テスト仕様書に基づいてテストを行うことで、テストの網羅性を高め、見落としを防ぐことができます。
もし、テスト仕様書なしに場当たり的にテストを行った場合、重要なテスト観点を見逃してしまい、重大なバグが残ってしまう可能性もあります。
テスト仕様書がなかった場合の例
ECサイトの開発において、送料計算のテストを行うとします。
もしテスト仕様書がなく、テスト担当者が各自の判断でテストを実施した場合、「北海道への送料が正しく計算されているか」というテスト仕様書を誰も実施していなかった、ということが起こりえます。
その結果、リリース後に「北海道への送料が誤って計算されている」というバグが発覚し、顧客に迷惑をかけてしまうかもしれません。
テスト仕様書作成のメリット
このように、テスト仕様書はシステム開発において非常に重要な役割を担っています。テスト仕様書を作成することで、開発者は以下のメリットを得られます。
テストの効率化
テスト内容があらかじめ明確になっているため、無駄な作業を省き、効率的にテストを進めることができます。
品質の向上
テストの網羅性を高めることで、バグの発生率を抑制し、システムの品質向上に繋がります。
誰でも同じ品質のテストを実施できる
詳細なテスト仕様書があることで、テスト実施者のスキルに関係なく同じ品質のテストを誰もが実施できるようになります。これによりメンバーのアサインやスケジュールなどの自由度も上がります。
コミュニケーションの円滑化
テスト仕様書を共有することで、開発チーム全体でテスト内容を理解し、認識の齟齬を防ぐことができます。
手戻りの削減
テスト仕様書を早期に作成することで、設計段階での問題点を早期に発見し、手戻りを減らすことができます。
初めてテスト仕様書を作成する方も、これまでなんとなく作成していた方も、その重要性を改めて認識し、より質の高いテスト仕様書を作成することで、開発プロジェクトの成功に貢献しましょう。
テスト仕様書の基本的な書き方
テスト仕様書には、いくつかの必須項目があります。これらの項目を漏れなく記述することで、テストの目的や内容が明確になり、誰でも同じようにテストを実施できるようになります。
テストの流れ
ソフトウェアテストは
テスト計画書 ⇓ テスト設計書 ⇓ テスト仕様書(テストケース) |
といった順に具体化していきます。
テスト仕様書は設計書を落とし込んだもの
テスト仕様書はテスト設計書で記載されているテスト観点やテスト方法をテスト手順に落とし込んだものになります。
テスト仕様書を作成時に一番気を付けなければならないのは、テスト設計書の内容を完全にトレースできているかどうかです。
テスト設計をしたのが他者であった場合、何らかの意図があるはずなので、それを違えるのは大きな失敗につながります。
その作成意図を理解できない場合は、作成者に意図を確認してテスト仕様書を作成しなければなりません。理解できていない場合、これも大きな事故につながる要因になります。
テスト仕様書に記載する項目
主な項目は以下の通りです。
テスト仕様書ID: 各テスト仕様書を一意に識別するための番号です。 テストの目的: テストを実施するうえでの目的を明確化して記載します。 テスト範囲: どのような機能や動作をテストするのかを記述します。例えば、「ログイン機能」や「商品検索機能」などです。 前提条件・テスト条件: テストを実施する際の環境やテスト実施前に設定しておくべき条件などを具体的に記述します。 テスト手順: テストをどのように実行するのかを、具体的な手順として記述します。例えば、「ログイン画面を開く」「ユーザー名とパスワードを入力する」「ログインボタンをクリックする」といった手順を記述します。 期待値: テストを実施した際に、どのような結果になるべきかを記述します。例えば、「ログインに成功し、トップページに遷移する」「エラーメッセージが表示される」などが挙げられます。 |
これらの項目に加え、テストデータや実施日、テスト担当者、備考などを記述することもあります。
仕様書作成のポイント
分かりやすいテスト仕様書を書くためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
まず、簡潔で正確な表現を心がけましょう。曖昧な表現や専門用語を避け、誰にでも理解できる言葉で記述することが大切です。
また、図表を効果的に活用することで、視覚的に分かりやすく説明することができます。例えば、画面遷移図やデータフロー図などを用いることで、テストの流れを明確に示すことができます。
よくあるミスについて
よくある間違いとして、テスト条件や手順が曖昧になっているケースが挙げられます。例えば、「適当な値を入力する」といった記述では、テスト担当者によって解釈が異なり、テスト結果にばらつきが生じる可能性があります。
また期待値が明確に記述されていない場合、テスト結果が正しいかどうかを判断することが難しくなります。
テスト仕様書の作成に慣れていない方は、参考になるテンプレートやサンプルを活用しましょう。
インターネット上には、様々なテンプレートやサンプルが公開されています。これらの資料を参考にしながら、自身のプロジェクトに合ったテスト仕様書を作成していくと良いでしょう。
もっと効率的に!テスト仕様書作成のコツ
テスト仕様書の作成は、ただ闇雲にテスト仕様書を羅列すれば良いというものではありません。効率的に、かつ質の高いテスト仕様書を作成するには、いくつかのコツがあります。
テスト仕様書の設計技法
まず設計技法を理解しておきましょう。
代表的な技法として、「同値分割」と「境界値分析」があります。
同値分割
同値分割とは、入力値をいくつかのグループに分け、各グループから代表値を選んでテスト仕様書を作成する手法です。
例えば「20歳以上100歳未満」という条件がある入力欄の場合、20〜99の数字は何を入れても変化の余地がないため同値クラスとなります。なのでその中のどれかを代表値としてひとつのみ確認すれば良いとのことになります。
こうすることで、全ての値をテストしなくても、代表値をテストするだけで、そのグループ全体の動作を確認することができます。
境界値分析
境界値分析は、入力値の境界値に着目してテスト仕様書を作成する手法です。
例えば「20歳以上100歳未満」という条件がある入力欄の場合、「19歳」「20歳」「99歳」「100歳」を入力し、システムが正しく動作するかを検証します。
境界値はバグが発生しやすいポイントであるため、重点的にテストすることで、効率的にバグを発見することができます。
ツールの活用
Excelなどの表計算ソフトでもテスト仕様書を作成することはできますが、専用のテスト管理ツールを活用することで、より効率的に作業を進めることができます。
テスト管理ツールでは、テスト仕様書の作成、実行状況の管理、バグの報告などを一元的に管理することができます。
また、テスト仕様書のバージョン管理や、過去のテスト結果の参照なども容易に行えます。
さらにテストの自動化も検討してみましょう。MagicPodやSelenium、Appiumなどのテスト自動化ツールを使用することで、Webアプリケーションやモバイルアプリケーションのテストを自動化することができます。
テストの自動化は、繰り返し行うテストや、大量のデータを入力するテストなどに有効です。自動化によって、テストにかかる時間を大幅に削減し、人的ミスを減らすことができます。
これらのコツを踏まえ、効率的にテスト仕様書を作成することで、限られた時間の中で質の高いテストを実施し、システムの品質向上に貢献することができます。
脱・初心者!レベルアップのためのヒント
テスト仕様書の基本的な書き方をマスターしたら、次はさらなるレベルアップを目指しましょう。経験豊富なエンジニアは、どのような点に注意してテスト仕様書を作成しているのでしょうか?
テスト仕様書の粒度
まず、テスト仕様書の粒度を意識することが重要です。
ひとつのテスト仕様書に複数のチェック項目を含めると、どこでエラーが発生したのか特定しづらくなります。
できるだけシンプルな動作確認に絞り込むことで、バグの発見効率を高めることができます。
テストデータのバリエーションを増やす
また、テストデータのバリエーションを増やすことも重要です。
正常系だけでなく、異常系、境界値、限界値など、様々なパターンを想定したテストデータを作成することで、より多くのバグを発見できる可能性が高まります。
テストの目的を明確にする
さらに、テストの目的を明確にすることも大切です。
どのようなバグを見つけたいのか、どの程度の品質を担保したいのかを意識することで、テスト仕様書の設計やテストの実施方法が変わってきます。
これらのテクニックに加えて、テスト設計スキルを磨くためには、継続的な学習が欠かせません。書籍やWebサイト、セミナーなど、様々な方法で情報収集を行い、常に最新の知識を身につけるように心がけましょう。
テスト設計は、奥が深く、習得するには時間と経験が必要です。
しかし、地道に努力を続けることで、必ずスキルアップすることができます。将来的には、テスト設計のスペシャリストとして、開発プロジェクトを成功に導くことができるでしょう。
まとめ
今回はテスト仕様書の基本的な書き方から、レベルアップのためのヒントまでを解説しました。
テスト仕様書とは、テストの実行指示書であり、システム開発において非常に重要な役割を担っています。
テスト仕様書を作成することで、テストの効率化、品質の向上、コミュニケーションの円滑化、手戻りの削減といったメリットを得られます。
分かりやすいテスト仕様書を書くためには、簡潔で正確な表現を心がけ、図表を効果的に活用することが重要です。
さらに、テスト仕様書の設計技法を理解したり、ツールを活用したりすることで、より効率的にテスト仕様書を作成することができます。
テスト設計スキルを向上させるためには、継続的な学習が不可欠です。
この記事を参考にして、質の高いテスト仕様書を作成し、開発プロジェクトの成功に貢献してください!
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この記事の監修
Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ