テスト自動化のメリットとは?
システム開発において、テストは品質保証の要。
しかし、従来の手動テストは時間とコストがかかり、人的ミスも発生しやすいという課題がありました。
そこで注目されているのが「テスト自動化」です。
今回はテスト自動化の基本から導入メリット、そして自動化が適さないケースまで詳しく解説します。
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テストの自動化とは?
テストは重要
ソフトウェアやWebアプリケーションを開発する上で、テストは品質保証の非常に重要な側面です。
テストをしっかりと行うことで、バグやエラーを早期に発見し、修正することができます。これにより、ユーザーに高品質な製品を提供し、顧客満足度を高めることができます。
手動テストから自動テストへの移行
数年前までは、テストといえば手動で行うのが一般的でした。
しかし、近年では、テスト自動化が主流になりつつあります。これは、ソフトウェア開発のスピードアップや、テストの効率化、品質向上などを実現するための重要な取り組みです。
テスト自動化の定義
テスト自動化とは、自動化ソリューション(ツールやスクリプトなど)を使用してテストを実行し、その結果と期待される結果を比較するソフトウェアテストの方法です。
自動化ツールは、人間が行うような操作を模倣し、テストシナリオに沿って自動的にテストを実行します。
テスト自動化の目的
テスト自動化の目的は、手動テストに完全に取って代わることではありません。
むしろ、質の高いエンジニアが、より短時間で、より多くのテストを実行できるようにすることにあります。
自動化によって、単純な繰り返し作業や、時間のかかるテストを効率化することができます。
これにより、エンジニアは、より複雑なテストケースの作成や、パフォーマンス分析、セキュリティテストなど、高度なスキルを必要とする作業に集中することができます。
また、テスト自動化は、テストの精度向上にも貢献します。
人間が行う手動テストでは、どうしてもヒューマンエラーが発生する可能性があります。一方、自動テストは、常に同じ手順でテストを実行するため、テスト結果の再現性が高く、より正確な評価を行うことができます。
テストの自動化が重要なのはなぜ?
手動テストの課題と限界
システム開発において、テストは品質保証の要です。
しかし、従来の手動テストには、多くの課題と限界が存在します。
まず、手動テストは、同じテストケースを繰り返し実行する必要があり、非常に退屈で時間がかかる作業です。また、アプリケーションの規模が大きくなるにつれて、テストケースも複雑化し、手動でのテストはますます困難になります。
さらに、手動テストは人間が行うため、どうしてもヒューマンエラーが発生しやすく、見落としや勘違いによるバグの混入リスクが高まります。
このような手動テストの非効率性とエラー率の高さが、開発プロジェクト全体の生産性を低下させ、リリース後のバグ発生に繋がる可能性があります。
低品質ソフトウェアがもたらす巨額の損失
低品質なソフトウェアは、企業にとって多大な損失をもたらします。
米国国立標準技術研究所(NIST)の調査によると、米国では低品質なソフトウェアが原因で、年間約2兆8,400億ドルもの経済的損失が発生していると推定されています。
この損失には、バグ修正費用、システムダウンタイムによる機会損失、顧客からの信頼失墜などが含まれます。
また、バグ修正のコストは、開発段階で発見された場合と、リリース後に発見された場合では大きく異なります。
IBM Systems Sciences Instituteの調査によると、開発段階でのバグ修正コストは100ドルですが、本番環境での修正には10,000ドルもかかるとされています。
つまり、バグを早期に発見し修正することが、企業にとって非常に重要であると言えるでしょう。
自動テストのメリットとは?
1. 時間と費用の節約
現代の開発現場では、アジャイル開発などの手法により、開発サイクルが加速しています。
しかし、従来の手動テストでは、このスピードに対応することが難しく、テスト工程がボトルネックになってしまうケースも少なくありません。
自動テストを導入することで、繰り返し行うテストにかかる時間と労力を大幅に削減できます。これにより、開発者はより重要な業務に集中できるようになり、結果として開発期間の短縮やコスト削減につながります。
2. テスト範囲の拡大
手動テストでは、時間的制約や人的リソースの限界から、どうしてもテスト範囲が限定されてしまいます。
自動テストを導入することで、短時間で広範囲のアプリケーションをテストすることが可能になります。これにより、テストカバレッジが向上し、ソフトウェア全体の品質向上に貢献します。
3. 精度の向上
手動テストは、どうしてもヒューマンエラーや見落としが発生する可能性があります。
自動テストでは、あらかじめ定義されたテストスクリプトに基づいてテストが実行されるため、常に一貫性のある結果を得ることができます。
これにより、テストの精度が向上し、バグの検出率を高めることができます。
4. 継続的テストのサポート
自動テストは、継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)パイプラインに組み込むことで、開発サイクル全体を通して継続的にテストを実行することが可能になります。
これにより、問題の早期発見、迅速なフィードバック、ビジネスリスクの低減を実現し、高品質なソフトウェアを迅速にリリースすることができます。
5. 再利用性の向上
一度作成した自動テストスクリプトは、何度でも再利用することができます。
これにより、手動テストで必要となる繰り返し作業を削減し、テストエンジニアの負担を軽減することができます。
また、ソフトウェアのバージョンアップや機能追加時にも、既存のテストスクリプトを流用することで、効率的にテストを実施することができます。
6. 迅速なフィードバック提供
自動テストでは、テスト結果を即座に確認することができます。
これにより、開発者はバグを早期に発見し、迅速に修正することができます。結果として、開発サイクルが短縮され、顧客により良いエクスペリエンスを提供することができます。
7. チームの士気向上
自動テストを導入することで、開発チームは、繰り返し行う退屈な手動テストから解放され、より創造的な業務に集中できるようになります。
これにより、チーム全体の生産性とモチベーションが向上し、より良いソフトウェア開発につながります。
8. 情報セキュリティの向上
一部の自動テストソリューションでは、テストデータの作成と保護を支援する機能が提供されています。
これにより、機密性の高い顧客情報などを扱うテストにおいても、セキュリティリスクを低減することができます。
9. 簡単なレポート作成
自動テストでは、テスト結果を自動的にレポートとして出力することができます。これにより、エラーの特定や修正が容易になり、テスト結果の共有や管理が効率化されます。
10. スケーラビリティの提供
手動テストでは、テスト対象の規模が大きくなると、それに比例してテスト工数も増大します。一方、自動テストでは、比較的容易にスケールアップすることができ、短時間でより多くのテストを実行することができます。
これにより、大規模なシステム開発においても、効率的にテストを実施することができます。
テストを自動化すべきでないケース
探索的テスト
探索的テストは、テスターの経験や直感に基づいてテストケースをその場で設計・実行していく手法です。
柔軟性が高く、未知の不具合を発見しやすいメリットがある一方、テストケースがあらかじめ決まっていないため、自動化には適していません。
エンドユーザーのユーザビリティテスト
ユーザビリティテストは、実際のユーザーがアプリケーションを操作し、使い勝手や操作性を評価するテストです。
ユーザーの主観的な意見や感情を収集することが目的となるため、自動化ツールでは再現が難しく、手動でのテストが適しています。
戦略的思考や開発を伴うアプリケーションのテスト
高度な戦略的思考や、開発作業そのものを伴うような複雑なアプリケーションのテストも、自動化には不向きです。
このようなテストは、状況に応じて柔軟に対応する必要があるため、自動化ツールでは対応しきれないケースが多いでしょう。
ユーザーエクスペリエンステスト
ユーザーエクスペリエンステストは、ユーザーがアプリケーションを使用した際の全体的な体験を評価するテストです。
視覚的なデザイン、操作性、パフォーマンスなど、多岐にわたる要素を総合的に評価する必要があるため、自動化ツールだけでは十分な評価が難しく、手動でのテストが望ましいです。
ROI(投資対効果)が低いテストケース
テスト自動化には、初期導入コストやスクリプト作成・メンテナンスコストなどが発生します。そのため、テストケースによっては、自動化によるメリットがコストを上回らない場合があります。
特に、実行頻度が低いテストケースや、複雑な設定が必要なテストケースは、自動化によるROIが低くなる可能性があるため、注意が必要です。
インストールとセットアップのテスト
インストールとセットアップのテストは、環境依存性が高く、自動化ツールで再現するのが難しい場合があります。
また、一度設定してしまえば、その後繰り返し実行する必要がないケースも多いため、手動でのテストが適していることが多いです。
自動化が手動テストよりも時間がかかる場合
テストケースによっては、自動化スクリプトの作成や実行に、手動テストよりも多くの時間がかかる場合があります。
このような場合は、自動化による効率化のメリットが得られないため、手動テストを優先する方が良いでしょう。
非反復的なテストケース
一度しか実行しないテストケースや、頻繁に変更されるテストケースは、自動化スクリプトの作成・メンテナンスコストに見合わないため、自動化には不向きです。
このようなテストケースは、手動で実行する方が効率的です。
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この記事の監修
Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ