受け入れテスト(UAT)のシナリオ作成方法!
受け入れテスト(UAT)は、システムが要求通りに動作するかを確認するため発注者がおこなう最終段階のテストです。
このプロセスは、システム開発の中でも特に重要なステップであり、実際の業務環境での動作確認を通じてシステムの品質を確保します。
今回は、UATの流れを具体的に説明し、テストシナリオやテストケースの作成方法、さらにテスト管理を効率化するためのツールの活用についても解説します。
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受け入れテスト(UAT)の流れ
UATは、計画の立案から結果の報告まで、以下のステップを経て進行します。
テスト計画の作成
UATの最初のステップはテスト計画の作成です。
テスト計画は、UAT全体の基盤となる重要なプロセスであり、テストの目的、範囲、スケジュール、リソース配分、リスク管理などを明確にします。
計画を立てることで、テストチーム全体が何をテストするのか、どの順序で進めるのかを理解し、一貫したアプローチでテストを進行させることができます。
また、テスト計画には、各ステークホルダーの役割や責任も明記されるため、プロジェクトの透明性が高まり、関係者全員が同じ目標に向かって作業を進めることが可能となります。
テスト計画の段階で考慮すべき要素には、ユーザーが実際に利用するシナリオに基づいたテスト項目の選定(テストシナリオの作成)や確認すべきシステムの重要な機能の洗い出し(テストケースの作成)があります。これにより、テストの効果を最大化し、重要な問題が見落とされるリスクを最小限に抑えることができます。
テスト方針の合意
テスト計画が作成された後、次におこなうのがテスト方針の合意です。
テスト方針とは、テストの進め方や評価基準、そしてテストの成功条件などを定義したもので、これに基づいてテストを実施します。
ステークホルダーとの間でテスト方針を合意することで、全員が同じ基準でテスト結果を評価できるようになります。これにより、テスト結果が出た際に評価基準を巡る誤解や意見の相違が発生するのを防ぐことができます。
また、テスト方針の合意は、テストチームがテストの実施に向けて一貫したアプローチを取るためのガイドラインとして機能します。
この段階でしっかりと認識を合わせることで、後の工程で発生する可能性のあるトラブルや手戻りを大幅に減少させることができるため、非常に重要なプロセスと言えます。
テストシナリオの作成
次に実際にテストシナリオを作成します。
テストシナリオとは、ユーザーが実際にシステムを使用する場面を想定して作成されたテストの流れで、業務フローに基づいて設計されます。これにより、システムが期待通りに動作するかどうかを検証することができます。
ユーザーの視点からシステムの利用状況をシミュレートできるため、実際の使用状況に即したテストをおこなうことができます。
たとえばECサイトの場合、ユーザーがカートに商品を入れた際に実際に正常にカウントされるか、合計金額が正しく反映されるか、入力ミスがあったときにエラーメッセージが適切に表示されるか、などを確認します。
この段階でのシナリオ作成が丁寧であればあるほど、テストの精度が高まり、システムの品質向上につながります。
シナリオ作成の際には、ユーザーがシステムをどのように操作するかを具体的に想像し、シナリオに反映させることが重要です。
テストケースの作成
次にテストシナリオに基づいて、具体的なテストケースを作成します。
テストケースとは、システムの各機能を詳細にチェックするための手順や期待される結果を記載したものです。
テストケースは、システムが正確に動作するかどうかを確認するためのツールであり、各テストケースには、どの機能をどのようにテストするか、期待される結果は何かが明記されます。これにより、テストが漏れなく行われ、システムに潜在する問題をより確実に洗い出すことができます。
また、テストケースは、テストの進行状況を追跡し、どの部分がテスト済みで、どの部分に問題が発生しているのかを明確にするためにも役立ちます。
テストケースを作成する際には、なるべく細かいシステム単位での動作項目を記載することが大切です。これにより、システムが正確に機能できる品質を持っているかどうかを確認することができます。
テストの実施
計画に基づいて、テストを実施します。この段階では、事前に作成されたテストシナリオに従ってシステムを操作し、テストケースのとおりに各機能が正常に動作するかを確認します。
テストを実施する際には、予期しない動作や不具合が発生しないかをチェックすることが重要です。発見された問題は、リリース前に修正されるべきであり、テストの実施段階は、システムの品質を確保するための最後のチャンスでもあります。
このステップでは、テスト結果を逐一記録し、問題が発生した場合には開発チームにフィードバックを行い、迅速に修正をおこなうことが求められます。
また、テストの進捗状況を管理し、スケジュール通りにテストが進んでいるか、遅れが出ていないかを確認することも重要です。テストの実施段階での徹底した検証作業により、システムが高い品質を持ってリリースされることが保証されます。
テストの実行自体はテスト自動化ツールを使用することが多いです。
テスト結果報告書の作成
テストが完了したら、次におこなうのがテスト結果報告書の作成です。
報告書には、テストの実施状況や発見された不具合、さらに今後の対応策などが詳細に記載されます。
報告書は、ステークホルダーとテスト結果を共有し、システムのリリースに関する最終的な判断をおこなうための重要なドキュメントです。
また、報告書を作成することで、テストプロセス全体を振り返り、今後のプロジェクトに活かすべき教訓を得ることもできます。
報告書には、テストの成功基準に達しているかどうか、発見された問題がどの程度システムに影響を与えるか、そしてリリースの準備が整っているかどうかを明確に示す必要があります。
この報告書をもとに、関係者はシステムが業務環境で使用するにふさわしい品質を持っているかどうかを評価し、リリースの是非を決定します。
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テストシナリオの作成方法
前述のとおり、テストシナリオとは、特定の状況や条件下での一連の動作や操作を詳細に記述したものです。
ユーザーがアプリケーションを使用する際の具体的な操作手順に対して、システムがどのように応答するかを定義します。シナリオ作成は、ユーザーの視点からシステムの動作を理解するための大切な準備です。
まず、シナリオを作成する際には、実際の業務フローを詳細に把握し、その流れに沿ってシステムがどのように使用されるかを具体的に想定します。ユーザーがシステムをどのように操作するのか、どのような状況でどの機能を利用するのかを考慮し、ユーザー目線でシナリオを設定することが求められます。
たとえば業務の開始から終了までの一連の操作だけではなく、そこで起こりうるユーザー側の入力ミスをシナリオに含めることで、システムの多様な使用状況に対応したテストが可能になります。
シナリオは、業務の進行に合わせて時系列に整理するのが基本ですが、条件別に分けて整理することも有効です。これにより、特定の条件下でのシステムの動作を詳細に検証できます。
さらに、作成するシナリオの優先順位を明確にすることも重要です。すべてのシナリオを網羅するのが理想的ですが、現実的には限られた時間やリソースの中で、特に重要な業務や頻繁に使用される機能に重点を置く必要があります。そのため、優先順位の高いシナリオから順に作成していくことで、効率的かつ効果的なテストが実施できるようになります。
また、シナリオの作成には関係者との協議が不可欠です。実際の業務を担当するユーザーや開発者と密にコミュニケーションを取り、シナリオが現実的であり、システムの目的に合致していることを確認します。こうした準備を経て、テストシナリオが完成すると、テストの精度が向上し、システムの品質向上に大きく寄与します。
テストケースの作成方法
テストケースとは、システムの特定の機能や要件を検証するため、一連の手順・入力データ・予想される結果を具体的に記述した文書のことです。
テストケースは各機能視点で正しい動作をチェックするために使用されます。これにより、詳細な動作や結果を検証することが可能になります。
テストケースの作成は、システムテストの精度を高めるために非常に重要なステップです。まず、テストシナリオに基づいて、各システム機能の具体的な操作手順や期待される結果を詳細に記載します。この作業では、どのような手順で操作をおこなうのか、どのような条件下でテストが実施されるのかを明確に示し、誰が実行しても同じ結果が得られるように、記述をできるだけ具体的かつ明確にすることが求められます。
たとえば、ユーザーがログインする操作をテストする場合、ログイン画面にアクセスし、正しいユーザー名とパスワードを入力した際に表示されるべき正しい結果(ログイン成功、など)や、ミスがあった際に予想される結果(エラーメッセージの表示など)を詳細に書き起こします。これにより、テストを実施する際に手順の曖昧さや誤解を防ぎ、正確な結果を得ることが可能となります。
さらに、テストケースにもテストの優先度を設定します。すべてのケースを一度にテストすることは難しいため、特に重要な機能やリスクの高い部分を優先的にテストするための指針を明確にします。これにより、限られた時間やリソースを最も重要な部分に集中させることができます。
また、判定基準の設定もテストケース作成の重要な要素です。判定基準は、テストの結果をどのように評価するかを示すもので、テストが成功したか、失敗したかを客観的に判断できるようにします。たとえば、期待される結果と実際の結果が一致した場合は合格、不一致の場合は不合格とするような基準を設定します。これにより、テスト進行中に発生する問題点を迅速かつ正確に判断し、次のステップに進むべきかどうかを適切に決定することができます。
このように、テストケースの作成は、システムの品質を確保するための基礎となるものであり、詳細かつ具体的な記述と明確な基準設定が求められます。
テスト管理はツールの利用がオススメ!
テスト管理を効率的に進めるためには、テスト管理ツールの活用が非常に効果的です。
これらのツールは、テストケースの管理やテストの進捗状況の可視化、結果の集計など、テストプロセス全体を一元管理できるため、チーム全体での情報共有がスムーズに行えます。
特に、複数のステークホルダーが関与する大規模なプロジェクトでは、手作業での管理が煩雑になり、ミスが発生しやすくなりますが、ツールを導入することでこのようなリスクを大幅に軽減できます。
テスト管理ツールには、テストケースの作成や編集、優先度の設定、担当者の割り当てなどの機能が備わっており、テストの計画段階から実施、結果の確認まで一貫して管理することが可能です。
また、リアルタイムでの進捗管理ができるため、プロジェクト全体の状況を即座に把握でき、必要に応じて適切な対応を取ることができます。これにより、テストの効率が向上し、プロジェクト全体のスケジュールを守りやすくなります。
また過去のテスト結果を再利用できるため、作業の手間を省き、他の重要な業務にリソースを集中させることができます。
以上のように、テスト管理ツールは、UATを含むテストプロセス全体を効率化し、ミスを防ぎ、チームの生産性を向上させるための強力なサポートとなります。特に複雑なプロジェクトでは、その効果は一層大きく、プロジェクトの成功に欠かせない要素となるでしょう。
まとめ
受け入れテスト(UAT)は、システムが要求通りに動作するかを確認するための重要なプロセスです。
計画の立案から実施、報告書の作成までの流れをしっかりと押さえ、効果的にテストを進めることが成功の鍵です。
また、テスト管理ツールを活用することで、効率的なテスト実施が可能になります。
ぜひこれらのステップを参考に、UATを成功に導いてください!
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この記事の監修
Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ