テストケースが重要な理由
システム開発の現場で、「リリース後にバグが見つかって大慌て…」なんて経験、ありませんか?
顧客からのクレーム、徹夜での修正作業…考えただけでもゾッとしますよね。そんな苦い経験をもう二度と繰り返さないためにも、テストケースは重要な存在です。
実は、テストケースをしっかり作成するだけで、開発精度やチームの作業効率がアップする可能性があります。
そこで今回は、テストケースの重要性から、効果的な作成方法、効率化のコツまで、QAエンジニアのあなたが知っておくべき情報を余すことなくお伝えします。
▼テストケースについて詳しい内容はこちら▼
テストケースって何がそんなに重要なの?
テストケースがないとどうなるの?
テストケースがない、または不十分な場合、開発者は一体何を基準にテストすれば良いのか分からなくなってしまいます。
まるで地図を持たずに目的地を目指すようなもので、場当たり的なテストになってしまい、結果としてリリース後に重大なバグが見つかるなんてことも…。そうなると、顧客からの信頼を失うだけでなく、修正作業のために多大な時間とコストがかかってしまいます。
またテストケースがないと、テストの進捗状況やテスト範囲を把握することも難しくなり、結果的にテストの漏れや重複が発生する可能性も高まります。
テストケースがあることのメリットとは?
テストケースは、システムテストにおける「設計図」のようなもの。
正しくテストケースを作ることでシステムの品質向上、テストの効率化、コミュニケーション促進、過去のテストケースの再利用、客観的な評価をおこなうことが可能になります。
システムの品質向上
テストケースに基づいてテストを行うことで、結果的にシステムの品質を向上させることができます。
テストケースは、システムのあらゆる側面を検証するための具体的な手順を定義します。これにより、テストの精度を高め、潜在的なバグやエラーを早期に発見し、修正することができます。
より高品質なシステムを顧客に提供することができるので、顧客満足度向上にも繋がります。
テストの効率化
テストケースがあれば、テストの抜け漏れを防ぎ、効率的にテストを進めることができます。
テストケースは、テストに必要な情報を明確に定義しているため、テスト担当者は迷うことなくテストを実行できます。
また、テストケースを再利用することで、テストの効率をさらに高めることも可能です。
コミュニケーション促進
テストケースは、開発者やテスト担当者など、チームメンバー間での共通認識を形成するのに役立ちます。
テストケースを共有することで、各メンバーがテストの目的や内容を理解しテスト対象の仕様についても理解が深まるため、協力してテストを進めることができます。
また、テストケースをレビューすることで、誤解や認識のズレを防ぎ、コミュニケーションの円滑化にも繋がります。
過去のテストケースの再利用
一度作成したテストケースは、内容によって今後の開発のテストにも再利用することができます。
システムに変更があった場合でも、既存のテストケースを修正・追加することで、効率的にテストを行うことができます。
また、過去のテストケースを参考に新しいテストケースを作成することも可能です。
客観的な評価
テストケースに基づいてテストを行うことで、システムの品質を客観的に評価することができます。
テストケースは、期待される結果を明確に定義しているため、テスト結果を客観的に判断することができます。これにより、システムの品質に関する議論がスムーズに進み、開発チーム全体の品質意識向上にも繋がります。
もうバグは見逃さない!効果的なテストケース作成のコツ
「漏れ・ダブり・無駄」をなくす技法
効果的なテストケースを作成するためには、網羅性と効率性のバランスを取ることが重要です。
網羅的なテストをしようとすると、テストケースが膨大になり、現実的にテストを実施することが難しくなってしまいます。開発期間は限られていますし、他の業務もある中で、テストだけに膨大な時間を割くわけにはいきませんよね。
そこで、同値分割や境界値分析などのテスト設計技法を活用しましょう。これらの技法を使えば、効率的にテストケースを作成し、テストの抜け漏れを防ぐことができます。
同値分割
同値分割法は、入力データを同じ処理が行われるグループ(同値クラス)に分割するテスト手法です。
この方法では、グループ内の代表的なデータを1つ選んでテストすることで、他のデータもテストしたとみなします。
例えば「20歳以上100歳未満」という条件がある入力欄の場合、20〜99の数字は何を入れても変化の余地がないため同値クラスとなります。なのでその中のどれかを代表値としてひとつのみ確認すれば良いとのことになります。
境界値分析
境界値分析は、同値クラスの端(境界値)とその前後の値をテストデータとして使用する手法です。
境界の値で多くのバグが発見されやすいという特性を利用し、効率的にバグを見つけるために境界値を狙ってテストを行います。
例えば「20歳以上100歳未満」という条件がある入力欄の場合、「19歳」「20歳」「99歳」「100歳」を入力し、システムが正しく動作するかを検証します。
境界値分析と同値分割は非常に関わりが深いテスト技法になります。両方の考え方を同時に考える事で効率よくテストケースを設計していくことができます。
誰が見ても分かるテストケース作成のコツ
テストケースは、自分だけでなく、他のチームメンバーも理解できるように、分かりやすく記述することが大切です。
具体的に記述する、期待結果を明確にする、定量的に記述する、テスト環境や前提条件を明確にする、効率的なテストケース管理をする、といったコツをおさえて運用することが大切です。
動作を具体的に記述する
指定する動作が曖昧だと、テストを正確に実行できません。
「ログインする」だけでなく、「ユーザー名⚪️⚪︎とパスワード××を入力し、ログインボタンをクリックする」のように、具体的な手順を記述しましょう。
期待結果を明確にする
期待される結果を具体的に記載していないと、なにが正なのかが不透明になってしまいテストの意味がありません。
「エラーメッセージが表示される」だけでなく、「『パスワードが正しくありません』というエラーメッセージが表示される」のように、具体的に記述しましょう。
定量的に記述する
テストケースに曖昧な表現があると、その受け取り方によってテストの結果が変わってしまいます。
例えば「大きい」や「長い」などの主観的な記載ではなく、「10cm」や「10秒」など具体的な数字にすることで、誰がテストしても同じ結果になるようにすることが重要です。
テスト環境や前提条件を明確にする
テスト環境や前提条件なども明確に記述することが大切です。
例えば「Windows 10のChromeブラウザでテストを行う」といった情報を追加することで、再現性を高めることができます。
効率的なテストケース管理
テストケースが増えてくると、管理が煩雑になってしまいます。Excelで管理するのもひとつの手ですが、テスト件数が増えてくると、検索や共有、レポート作成が大変になり、効率が悪くなってしまいます。
そこで、テスト管理ツールの活用がおすすめです。テスト管理ツールを活用することで、テストケースの管理やレポート、可視化などを一元的に行うことができるため、大規模なプロジェクトや、大人数で開発を行う場合に特に便利です。
プロジェクトの規模や予算、チームの状況に合わせて、最適なツールを選び、効率的にテストケースを管理しましょう。
開発スピードUP!テストケース作成の効率化
テスト自動化ツールの活用
テスト自動化ツールはその名のとおり、テストを自動で実行してくれるツールです。手動でテストを行うよりも圧倒的に早く、しかもミスなくテストを実行してくれるので、QAエンジニアの負担を大幅に軽減できます。
特に、回帰テストのような、システム変更のたびに繰り返し行う必要があるテストは、自動化ツールの得意分野です。一度テストスクリプトを作成してしまえば、あとはボタンひとつでテストを実行できるので、時間と手間を大幅に節約できます。
ただし、すべてのテストを自動化できるわけではありません。
例えば、ユーザーインターフェース(UI)の使い勝手やデザインに関するテストは、人間の目で見て判断する必要があるため、自動化が難しい場合があります。自動化に適したテストケースを見極め、効果的に自動テストを活用しましょう。
具体的な自動テストツールとしては、Selenium、Appium、Cypressなどが挙げられます。これらのツールは、Webブラウザやモバイルアプリの操作を自動化することができ、様々なテストケースに対応できます。
またエンジニアでなくてもノーコードで簡単に操作ができるMagicPodなどのツールもあります。以下の記事でツールのご紹介をしているのでぜひ一読ください!
▼テスト自動化ツール25製品の完全比較はこちら▼
テンプレートを活用しよう
テストケースを作成するたびに、毎回ゼロから考えていては時間がいくらあっても足りません。そんな時は、テストケーステンプレートを活用しましょう。
テンプレートを使えば、必要な項目があらかじめ用意されているので、効率的にテストケースを作成することができます。
インターネット上には、様々な無料テンプレートが公開されています。これらのテンプレートを参考に、プロジェクトの特性に合わせてカスタマイズすることで、より効果的なテストケースを作成することができます。
ただし、テンプレートに頼りすぎるのはNGです。
テンプレートはあくまで雛形なので、プロジェクトの要件や仕様をテストベースとしてテスト設計を実施し、それに従い適切に修正・追記などをすることが必須となります。同値分割や境界値分析などのテスト設計技法を活用、テストボリュームを削減するなどの工夫をして、独自のテストケースを作成することが大切です。
チームで協力!レビュー体制の構築
テストケース作成は、一人で抱え込むのではなく、チーム全体で協力して行うことが重要です。他のメンバーの視点を取り入れることで、より質の高いテストケースを作成することができます。
レビュー体制を構築し、他のメンバーにもテストケースを見てもらうようにしましょう。レビューを通して、
・抜け漏れや誤りがないか ・テストケースが分かりやすいか ・テストケースが要件を満たしているか |
などを確認することができます。また、レビューを通して、チームメンバー間での知識共有やスキルアップにも繋がります。
さらに、コミュニケーションを密に取り、疑問点や不明点を解消しておくことも大切です。開発者やプロダクトオーナーと積極的にコミュニケーションを取ることで、テストケースの品質向上だけでなく、開発全体の効率化にも貢献できます。
まとめ
今回はテストケースの重要性、効果的な作成方法、そして効率化のためのテクニックを紹介しました。
テストケースは、システム開発において品質向上、効率化、コミュニケーション促進など、様々なメリットをもたらします。
特に、テストケースがない、または不十分な場合のリスクは大きく、リリース後のバグ発生や手戻り工数の増加に繋がりかねません。
効果的なテストケースを作成し、適切に管理することで、これらのリスクを最小限に抑え、高品質なシステムを開発することができます。
テストケース作成は、単なる作業ではなく、システムの品質を左右する重要なプロセスです。この記事でご紹介した内容が効率的かつ効果的なテストケースの作成に貢献できれば幸いです!
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この記事の監修
Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。