品質問題にさよなら!インスペクションで、開発プロジェクトを成功に導こう
システム開発の現場では、品質問題は常に悩みの種です。
テストでバグが見つかり、修正に追われた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
バグの修正は、開発コストの増加や納期の遅延に繋がり、プロジェクト全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
品質問題を解決し、高品質なシステムを開発するためには、どのような対策を講じるべきでしょうか?
そこで近年、注目されているのが「インスペクション」という手法です。
インスペクションとは、開発の初期段階で、ソースコードや設計書などの成果物をレビューすることで、欠陥を早期に発見し、修正する活動です。
インスペクションを導入することで、以下のような効果が期待できます。
・テスト工程で見つかるバグを減らすことができる ・手戻りを減らし、開発効率を向上させることができる ・開発者全体の品質意識を高めることができる ・品質管理担当者必見! インスペクションの基本をマスターしよう |
そこで今回はインスペクションの基本的な知識から、種類、効果的な実施方法までをわかりやすく解説します!
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インスペクションとは?
ソフトウェア開発の現場で、品質向上に欠かせない取り組みの一つに「インスペクション」があります。
インスペクションとは、プログラムのソースコードや設計書などの成果物を、実際に実行する前にチェックすることで、欠陥を早期に発見する手法です。
インスペクションとテストの違い
インスペクションと聞いて、テストを思い浮かべる方もいるかもしれません。どちらもシステム開発における品質保証活動ですが、その目的や手法は異なります。
テストは、プログラムを実際に実行し、その動作を確認することで欠陥を発見します。
一方、インスペクションは、プログラムを実行することなく、目視やレビューによって欠陥を発見します。
インスペクションは、テストよりも早い段階で欠陥を発見できるため、修正コストを削減できるというメリットがあります。
また、テストでは発見が難しい、設計の誤りや仕様の矛盾なども発見することができます。
インスペクションの目的と効果
インスペクションを実施する目的は、単に欠陥を見つけることだけではありません。
開発プロセス全体を改善し、より高品質なソフトウェアを効率的に開発するために、様々な効果が期待できます。
欠陥の早期発見
開発の初期段階で欠陥を発見することで、修正コストを削減することができます。
一般的に、欠陥は発見が遅れるほど、修正に必要なコストが増加すると言われています。
例えば、要件定義の段階で発見された欠陥の修正コストを1とすると、設計段階では5、プログラミング段階では10、テスト段階では20、運用開始後では100になるという試算もあります。
インスペクションを導入することで、開発の早い段階で欠陥を発見し、修正することで、大幅なコスト削減につながります。
品質向上
欠陥を未然に防ぐことで、ソフトウェアの品質を向上させることができます。
インスペクションでは、ソースコードや設計書だけでなく、テスト計画やマニュアルなど、様々な成果物をレビューすることができます。
これにより、潜在的な欠陥や、仕様の矛盾、設計の不備などを早期に発見し、修正することができます。
結果として、より高品質なソフトウェアを開発することができます。
開発効率向上
手戻りを減らすことで、開発効率を向上させることができます。
開発の後期段階で欠陥が見つかった場合、修正のために多くの時間と労力を費やすことになります。
場合によっては、設計段階まで立ち返って修正が必要になるケースもあり、開発全体の遅延に繋がってしまうことも。
インスペクションを導入することで、開発の初期段階で欠陥を修正できるため、手戻りを減らし、開発効率を向上させることができます。
コミュニケーション促進
インスペクションを通して、開発者間のコミュニケーションを促進することができます。
インスペクションでは、複数の開発者が集まり、成果物について議論を行います。
この過程で、それぞれの開発者の知識や経験を共有し、相互理解を深めることができます。
また、問題点や改善点について率直に意見交換することで、チームワークを高めることができます。
品質意識向上
インスペクションを通して、開発者全体の品質意識を高めることができます。
インスペクションでは、成果物の品質について、チーム全体で議論を行います。
これにより、開発者一人ひとりが品質に対する意識を高め、責任感を持つことができます。
また、インスペクションを通して、品質に関する知識やスキルを習得することもできます。
インスペクションは、これらの目的や効果を達成するために、開発プロセスに組み込まれるべき重要な活動です。
インスペクションの種類
インスペクションと一口に言っても、その実施方法や目的は様々です。プロジェクトの規模や特性、開発フェーズに合わせて、適切な種類を選択することが重要です。
ここでは、代表的なインスペクションの種類をいくつか紹介します。
ウォークスルー
ウォークスルーは、比較的カジュアルなインスペクション手法です。
作成者が中心となり、参加者に成果物を説明しながらレビューを行います。
主な目的は、早期に欠陥を発見することよりも、成果物に対する理解を深め、共通認識を形成することです。
そのため、厳密なチェックよりも、活発な意見交換やアイデアの創出を重視します。
ウォークスルーは、開発の初期段階や、チームメンバーの理解度が不十分な場合に有効です。
レビュー
レビューは、ウォークスルーよりも正式なインスペクション手法です。
あらかじめ決められた手順に従って、レビューアが成果物をチェックし、欠陥を発見します。
レビューでは、欠陥の発見だけでなく、成果物の完成度を高めることも目的となります。
そのため、レビューアには、専門的な知識や経験を持つ人が選ばれます。
レビューは、重要な成果物や、品質に厳しい要求がある場合に有効です。
ピアレビュー
ピアレビューは、同僚やチームメンバーが互いに成果物をレビューする手法です。
レビューアは、作成者と同じレベルの知識や経験を持つ人が担当します。
ピアレビューは、相互に学び合い、スキルアップを図ることも目的となります。
ピアレビューは、チームメンバー間のコミュニケーションを促進し、品質意識を高める効果も期待できます。
インフォーマルインスペクション
インフォーマルインスペクションは、正式な手順を踏まずに、簡易的に行うインスペクションです。
例えば、開発者同士が、ちょっとしたコードの変更を互いに確認し合うような場合が挙げられます。
インフォーマルインスペクションは、手軽に実施できるため、日常的な品質管理活動として取り入れやすいというメリットがあります。
これらのインスペクションの種類を組み合わせることで、より効果的にソフトウェアの品質を保証することができます。
インスペクションは、プロジェクトの規模や特性、開発フェーズに合わせて、適切な種類や手法を選択することが重要です。
インスペクションを成功させるためのポイント
インスペクションは、ただ実施すれば良いというものではありません。
事前準備、記録、フォローアップといったポイントを押さえることで、より効果的にインスペクションを実施し、目的を達成することができます。
事前準備
チェックリストを作っておこう!
インスペクションをスムーズに進めるためには、事前の準備が重要です。
特に、チェックリストを作成しておくことは、レビューの抜け漏れを防ぎ、効率的に欠陥を発見するために有効です。
チェックリストには、例えば以下のような項目を含めることができます。
コーディング規約: コーディング規約に準拠しているか 変数名: 変数名は適切に命名されているか コメント: コメントは分かりやすく記述されているか ロジック: プログラムのロジックに誤りはないか パフォーマンス: パフォーマンスに問題はないか セキュリティ: セキュリティ上の脆弱性はないか |
チェックリストは、レビュー対象の成果物やプロジェクトの特性に合わせて作成する必要があります。
記録
議事録を残して、後から見返せるように!
インスペクションでは、発見された欠陥や議論の内容を記録しておくことが重要です。
記録を残すことで、後から見返すことができ、欠陥の修正漏れや再発防止に役立ちます。
また、記録は、プロジェクトの品質管理記録としても活用することができます。
記録方法としては、議事録を作成する方法が一般的です。
議事録には、以下の項目を含めるようにしましょう。
インスペクションの実施日時: いつインスペクションを実施したのか 参加者: 誰がインスペクションに参加したのか レビュー対象: どのような成果物をレビューしたのか 発見された欠陥: どのような欠陥が発見されたのか 議論の内容: 欠陥について、どのような議論が行われたのか 決定事項: 欠陥をどのように修正するかなど、決定した事項 |
フォローアップ
指摘事項は、きちんと修正!
インスペクションで指摘された欠陥は、必ず修正する必要があります。
修正が完了したら、再度インスペクションを実施し、修正内容を確認する必要がある場合もあります。
フォローアップを徹底することで、欠陥の修正漏れを防ぎ、ソフトウェアの品質を確保することができます。
インスペクションを成功させるためには、これらのポイントを踏まえ、計画的に実施することが重要です。
まとめ
今回はインスペクションの概要、種類、効果的な実施方法について解説しました。
インスペクションとは、プログラムを実行せずに欠陥を発見するレビュー手法であり、開発の初期段階で品質問題に対処することで、手戻りを減らし、開発効率を向上させることができます。
ウォークスルーやレビューなど、様々な種類のインスペクションがあり、プロジェクトの特性に合わせて適切な手法を選択することが重要です。
インスペクションを効果的に実施するためには、事前準備、記録、フォローアップといったポイントを押さえ、計画的に進めることが重要です。
インスペクションを導入し、品質管理体制を強化することで、顧客満足度の高いシステム開発を実現しましょう!
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この記事の監修
Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ