Webサービスを安定稼働させる! 負荷テストの基礎知識

近年のWebサービスは、高機能化やユーザー数の増加に伴い、システムへの負荷がますます増大しています。

もし、あなたのWebサービスが、アクセス集中や大量データの処理に耐えられず、パフォーマンスが低下したり、システムダウンを起こしてしまったら…?

ユーザーにストレスを与え、ビジネスにも大きな損失をもたらす可能性があります。

このような事態を防ぐために、負荷テストは必要不可欠です。

負荷テストとは、システムに大量の負荷をかけることで、性能や安定性を評価するテストです。

負荷テストを実施することで、システムの限界値や弱点を把握し、性能改善に役立てることができます。

この記事では、負荷テストについて、基礎知識から実践方法までをわかりやすく解説していきます。

負荷テストを理解し、高品質なWebサービスを提供しましょう!

▼テストの種類について詳しい内容はこちら▼

負荷テストの目的

負荷テストとは、システムに大量のアクセスやデータを処理させることで、 システムの性能 や 安定性 を評価するテストです。

負荷テストを実施することで、システムの 限界値 や 弱点 を把握し、 性能改善 に役立てることができます。

負荷テストの主な目的は以下の点が挙げられます。

システムの性能を評価する

負荷テストでは、 応答時間 や スループット などの指標を測定することで、システムの性能を 客観的に評価 することができます。

応答時間とは、システムがリクエストに応答するまでにかかる時間で、スループットとは、一定時間内にシステムが処理できるデータ量のことです。

これらの指標を測定することで、システムが 期待通りの性能 を満たしているか、 改善が必要 なのかを判断することができます。

システムの安定性を検証する

負荷テストでは、システムに高負荷をかけることで、安定性を検証することができます。

高負荷状態でもシステムが正常に動作するか、エラーや障害が発生しないかを確認します。

安定性を検証することで、システムの信頼性を高め、ユーザー満足度を向上させることができます。

システムのボトルネックを特定する

負荷テストでは、システムのボトルネックを特定することができます。

ボトルネックとは、システムの性能を低下させている原因となる部分のことです。

ボトルネックを特定することで、効率的な性能改善を行うことができます。

システムのセキュリティを検証する

負荷テストでは、システムのセキュリティの一部を検証することもできます。

高負荷状態での 脆弱性 を発見し、 セキュリティ対策 を強化することで、 サイバー攻撃 などのリスクを軽減することができます。

負荷テストは、 システム開発 において非常に重要なテストです。

負荷テストを適切に実施することで、高品質なシステムを構築し、 ユーザー に 快適な操作性 を提供することができます。

※セキュリティを漏れなく評価するためには別途セキュリティテストを実施する必要があります。

負荷テストの種類と特徴

負荷テストには、システムの性能や安定性を様々な角度から評価するために、いくつかの種類があります。

それぞれのテストの目的や手法を理解し、適切なテストを選択することで、より効果的にシステムの性能を評価することができます。

ここでは、代表的な負荷テストの種類を紹介します。

ロードテスト:指定負荷テスト

ロードテストは、システムに 一定の負荷 をかけ、その際の パフォーマンス を測定するテストです。

負荷をかける方法としては、

・想定されるユーザー数でアクセスをシミュレートする
・一定量のデータを処理させる
・特定のAPIを連続で呼び出す

など、様々な方法があります。

ロードテストを実施することで、以下の評価指標を得ることができます。

一定時間内の処理量

システムが1時間あたりに処理できる注文数や、1秒間に処理できるトランザクション数などを測定します。

負荷時のレスポンス変化

負荷が高くなるにつれて、システムの応答時間がどのように変化するかを測定します。

リソース使用量、使用率

CPU使用率、メモリ使用量、ディスクI/Oなど、システムリソースの使用状況を測定します。

これらの指標を分析することで、システムの 性能 や 安定性 、 拡張性 などを評価することができます。

コンカレンシーテスト:並列実行テスト

コンカレンシーテストとは、複数のユーザーが同時にシステムにアクセスした際の挙動を検証するテストです。

Webシステムやオンラインゲームなど、多数のユーザーが同時にアクセスするシステムでは、コンカレンシーテストが特に重要となります。

コンカレンシーテストでは、同時にアクセスするユーザー数を増やしていき、システムの応答時間やスループットの変化を測定します。

これにより、システムがどの程度の同時アクセスに耐えられるのか、同時アクセスが増加した場合にどのような問題が発生するのかを把握することができます。

コンカレンシーテストでは、主に以下の指標を測定します。

応答時間

各リクエストに対するシステムの応答時間を測定します。

同時アクセス数が増加すると、応答時間が長くなる傾向があります。

スループット

一定時間内にシステムが処理できるリクエスト数を測定します。

同時アクセス数が増加すると、スループットが低下する傾向があります。

エラー発生率

エラーが発生する割合を測定します。

同時アクセス数が増加すると、エラー発生率が高くなる傾向があります。

リソース使用率

CPU使用率、メモリ使用率、ディスクI/Oなど、システムリソースの使用状況を測定します。

同時アクセス数が増加すると、リソース使用率が高くなる傾向があります。

これらの指標を分析することで、システムの性能や安定性を評価し、改善点を見つけることができます。

コンカレンシーテストで発生する可能性のある問題としては、以下のようなものがあります。

データの競合: 複数のユーザーが同時に同じデータを更新しようとした場合に、データの整合性が保たれなくなる問題
デッドロック: 複数のユーザーが互いに相手の処理を待ってしまうことで、システムが停止してしまう問題
リソースの枯渇: CPUやメモリなどのリソースが不足し、システムの処理速度が低下したり、システムが停止したりする問題

コンカレンシーテストでは、これらの問題が発生しないかを確認し、問題が発生した場合はその原因を調査し、対策を講じる必要があります。

コンカレンシーテストは、システムの安定稼働とユーザーエクスペリエンスの向上に貢献する重要なテストです。

ロングランテスト:連続負荷テスト

システムを長時間安定して稼働させるためには、ロングランテストが欠かせません。

ロングランテストとは、システムに一定の負荷を長時間かけ続けることで、耐久性や安定性を検証するテストです。

このテストでは、システムのリソース使用状況やパフォーマンスの変化を継続的に監視し、潜在的な問題を発見します。

メモリリークによるメモリ資源の圧迫

メモリリークとは、プログラムが使用済みのメモリ領域を解放せず、メモリ不足を引き起こす現象です。

短時間では問題なくても、長時間稼働するとシステムが不安定になり、最悪の場合、クラッシュしてしまうこともあります。

ロングランテストでは、メモリ使用量の推移を監視することで、メモリリークの兆候を早期に捉えることができます。

作業ファイルなどの残置によるストレージの圧迫

システムが一時的に作成する作業ファイルなどが、ストレージを圧迫するケースがあります。

これらのファイルが蓄積されていくと、ディスク容量不足を引き起こし、システムのパフォーマンス低下や障害に繋がる可能性があります。

ロングランテストでは、ストレージの使用状況を監視することで、容量不足のリスクを事前に把握することができます。

データ量の増加によるリソースの圧迫や処理速度の低下

システムの運用に伴い、データ量は増加していきます。

データ量が増加すると、データベースへのアクセスやデータ処理に時間がかかるようになり、システムのパフォーマンスが低下する可能性があります。

ロングランテストでは、データ量を増加させながらテストを行うことで、データ量の増加がシステムに与える影響を評価することができます。

ロングランテストは、Webサービスやオンラインゲームなど、長時間稼働が求められるシステムにおいて特に重要です。

潜在的な問題を早期に発見し、対策を講じることで、安定したサービス提供を実現することができます。

負荷テストの実施手順

負荷テストは、適切な手順で実施することで、より効果的にシステムの性能を評価し、問題点を発見することができます。

ここでは、負荷テストの実施手順を5つのステップに分けて解説します。

テスト計画

負荷テストを実施する前に、まずはテスト計画を立てる必要があります。

テスト計画では、以下の項目を決定します。

テストの目的

負荷テストを通して何を明らかにしたいのかを明確にします。

テスト対象

どのシステムや機能をテストするのかを明確にします。

性能目標

応答時間やスループットなど、どの程度の性能を目標とするのかを明確にします。

テスト環境

テスト環境をどのように構築するかを検討します。

テストツール

どの負荷テストツールを使用するかを検討します。

テストデータ

どのようなテストデータを使用するかを検討します。

スケジュール

テストの実施時期や期間を決定します。

担当者

テストの実施担当者を決定します。

テスト環境構築

負荷テストを実施するための環境を構築します。

テスト環境は、本番環境と同じ構成にすることが理想です。

ただし、本番環境と同じ構成を用意できない場合は、可能な限り本番環境に近い構成でテスト環境を構築する必要があります。

テスト環境の構築には、サーバー、ネットワーク機器、データベースなど、様々なハードウェアやソフトウェアが必要となります。

テストケース作成

負荷テストを実施する際には、どのような操作をどの程度の負荷で行うのかを明確にする必要があります。

そのため、具体的なテストケースを作成することが重要です。

テストケース作成は、主に以下の3つのステップで行います。

1. シナリオの作成

シナリオとは、利用者がシステムを使用する際の一連の操作を指します。

例えば、ECサイトであれば、「トップページにアクセスする」「商品を検索する」「商品をカートに入れる」「注文手続きを行う」といった操作が考えられます。

負荷テストでは、このシナリオに沿って、システムに負荷をかけていきます。

シナリオを作成する際には、負荷テスト実施時の具体的な手順を決定します。

どのページにアクセスするか、どのような操作を行うか、どのくらいの頻度で操作を行うかなどを明確に定義します。

アクセス集中時には、検索や閲覧、注文、決済など、多様な操作が行われることが想定されます。

そのため、複数のシナリオを検討する必要があります。

例えば、ECサイトの負荷テストであれば、「商品を閲覧するだけのシナリオ」「商品を検索するシナリオ」「商品を購入するシナリオ」など、複数のシナリオを作成します。

2. シナリオの混成方法

複数のシナリオを作成したら、それらをどのように組み合わせるかを検討します。

アクセス集中時の利用者の操作比率を想定し、各シナリオの混成割合を設定します。

例えば、ECサイトの負荷テストであれば、「検索・参照70%、選択・注文20%、履歴・状況確認10%」のように設定することができます。

シナリオの混成割合は、実際の業務状況を考慮して設定する必要があります。

アクセスログなどを分析することで、実際のユーザーの行動パターンを把握し、より現実的なシナリオを作成することができます。

3. 負荷の設定

負荷テストでは、システムにかける負荷をどのように設定するかを検討する必要があります。

ロードテストでは、低い負荷から徐々に増やしていくことで、システムの状態を段階的に確認することができます。

最大負荷をかける際の計画も重要です。

負荷の増加方法、ピークの持続時間などを設定することで、より効果的にシステムの性能を評価することができます。

ストレステストでは、負荷増加のパターンを検討する必要があります。

徐々にアクセスが増えていくパターンや、一気にアクセスが激増するパターンなど、様々なパターンを想定してテストを行うことができます。

負荷の設定は、システムの性能要件やテストの目的に合わせて、適切に行う必要があります。

テスト実行

作成したテストシナリオに基づいて、負荷テストを実行します。

負荷テストツールを使用して、システムに負荷をかけ、応答時間やスループットなどの指標を測定します。

テスト実行中は、システムの挙動を監視し、エラーや障害が発生しないかを確認します。

結果分析

負荷テストの実施後、収集したデータを分析し、結果を評価します。

分析結果を基に、システムの改善点を特定し、性能向上のための対策を検討します。

負荷テストの注意点

負荷テストを実施する際には、いくつかの注意点があります。これらの注意点を押さえておくことで、テストをスムーズに進め、正確な結果を得ることができます。

本番環境への影響は?

負荷テストは、システムに高負荷をかけるため、本番環境に影響を与える可能性があります。

そのため、負荷テストは、本番環境とは分離されたテスト環境で実施することが重要です。

テスト環境を構築する際には、本番環境と同じ構成にすることが理想ですが、それが難しい場合は、可能な限り本番環境に近い構成で構築する必要があります。

また、負荷テストの実施期間中は、本番環境の監視を強化し、異常が発生した場合にはすぐに対応できるようにしておく必要があります。

テストデータの準備は?

負荷テストでは、大量のテストデータが必要となります。

テストデータは、本番環境そのままのデータを使用することが理想です。

ただし、本番環境のデータを使用できない場合は、テストデータ生成ツールなどを使用して、現実的なテストデータを作成する必要があります。

テストデータの準備には、時間と手間がかかるため、事前に十分な準備を行っておく必要があります。

ツールの選定は?

負荷テストツールは、様々な種類があります。

オープンソースのツールから商用のツールまで、機能や価格も様々です。

ツールを選定する際には、以下の点を考慮する必要があります。

・システムの規模
・テストの目的
・予算
・サポート体制
・ツールの使いやすさや導入のしやすさ

負荷テストツールには、JMeterやLoadRunnerなど、代表的なものがあります。

これらのツールは、豊富な機能を備えており、様々なシステムの負荷テストに対応することができます。

負荷テストは、システムの品質を向上させるために重要なテストです。

注意点を理解し、適切に実施することで、高品質なシステムを構築することができます。

まとめ

この記事では、負荷テストの目的、種類、実施手順、注意点などを解説しました。

負荷テストとは、システムに大量のアクセスやデータを処理させることで、システムの性能や安定性を評価するテストです。

実施することで、システムの限界値や弱点を把握し、性能改善に役立てることができます。

負荷テストには、ロードテスト、ロングランテストなど、様々な種類があります。

実施する際には、テスト計画、テスト環境構築、テストケース作成、テスト実行、結果分析といった手順を踏む必要があります。

また、本番環境への影響、テストデータの準備、ツールの選定など、注意点もいくつかあります。

適切に実施することで、高品質なシステムを構築し、ユーザーに快適な操作性を提供していきましょう!

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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。

記事制作:川上サトシ