効果的なソフトウェアテスト実施のための10のコツ
1. 要件の理解と明確な目標の定義
ソフトウェアテストを効果的に行うための最初のステップは、テスト対象のソフトウェアの要件を深く理解することです。
開発者はどのような機能を実現しようとしているのか、ユーザーはどのようにソフトウェアを使うことを想定しているのかを把握することで、テストすべき範囲や重点項目を明確にすることができます。
例えば、ECサイトの決済機能をテストする場合、「クレジットカード決済、銀行振込、コンビニ決済に対応している」「セキュリティ対策が施されている」「エラーが発生した場合の処理が適切である」といった要件を理解しておく必要があります。
さらに、テストの目標を明確に定義することも重要です。
例えば、「主要な機能に致命的なバグがないことを確認する」「リリース前にセキュリティ上の脆弱性をすべて解消する」といった具体的な目標を設定することで、テストの方向性を定めることができます。
要件を理解し、明確な目標を設定することで、効果的かつ効率的なテストを実施することができます。
2. テストの計画と戦略
闇雲にテストを実行するのではなく、事前に綿密な計画を立てることが、効果的なソフトウェアテストには不可欠です。
テストの計画では、テストの範囲、スケジュール、必要なリソース、そしてリスク管理などを考慮する必要があります。
まず、テストの範囲を明確にしましょう。
全ての機能を網羅的にテストできれば理想ですが、現実的には時間やリソースの制約があります。
そのため、どの機能を優先的にテストするか、どの程度の深さでテストを行うかなどを、プロジェクトの状況に合わせて決定する必要があります。
次に、テストのスケジュールを作成します。
各テストフェーズにどれくらいの期間を割り当てるか、いつまでにテストを完了させる必要があるのかを明確にすることで、計画的にテストを進めることができます。
さらに、テストに必要なリソースを確保しましょう。
テストに必要な人員、テスト環境、テストツールなどを事前に準備しておくことで、スムーズにテストを実施することができます。
リスク管理も重要な要素です。
テストの実施中に発生する可能性のあるリスクを事前に予測し、対応策を検討しておくことで、リスク発生時の混乱を最小限に抑えることができます。
例えば、「テスト担当者が病気で休んでしまった場合」「テスト環境に障害が発生した場合」などのリスクを想定し、代替要員を確保したり、バックアップ体制を構築したりする必要があります。
包括的なテスト計画を立てることで、テスト工程を効率的に管理し、高品質なソフトウェア開発に貢献することができます。
3. テストケースの設計
テストケースとは、ソフトウェアの特定の機能や動作を検証するために設計された、具体的なテスト手順のことです。
効果的なテストケースを設計することで、テストの効率性と網羅性を高め、バグの発見率を向上させることができます。
テストケースを設計する際には、以下のポイントを意識しましょう。
・具体的な手順:テストの手順を明確に記述することで、誰でも同じ手順でテストを実行できるようにします。 ・期待される結果:テストを実行した際に、どのような結果が得られるべきかを明確に定義します。 ・網羅性:テストケースが、テスト範囲全体を網羅していることを確認します。 ・現実的なシナリオ:ユーザーが実際にソフトウェアを使用する状況を想定した、現実的なシナリオに基づいてテストケースを設計します。 ・バリエーション:正常系だけでなく、異常系や境界値などの様々なケースを想定したテストケースを作成します。 |
例えば、ECサイトのログイン機能をテストする場合、
・正常系:正しいユーザー名とパスワードを入力してログインできることを確認する ・異常系:間違ったユーザー名やパスワードを入力した場合に、適切なエラーメッセージが表示されることを確認する ・境界値:ユーザー名やパスワードの文字数制限ギリギリの値を入力した場合の動作を確認する |
といったテストケースを設計することができます。
テストケースを設計する際には、以下の項目を明確に記述しておくと良いでしょう。
・テストケースID ・テストケース名 ・テスト対象 ・テスト条件 ・テスト手順 ・期待結果 ・合否判定基準 ・備考 |
これらの情報を整理することで、テストケースの管理や共有がスムーズになります。
詳細で網羅的なテストケースを設計することで、ソフトウェアの品質向上に大きく貢献することができます。
4. 初期のテストと最新の方法論
ソフトウェア開発におけるテストは、できるだけ早い段階から開始することが重要です。
開発の初期段階でテストを行うことで、バグを早期に発見し、修正することができます。
早期にバグを発見できれば、修正コストを抑えることができるだけでなく、手戻りを減らし、開発期間を短縮することができます。
従来のウォーターフォール型の開発プロセスでは、要件定義、設計、実装、テスト、リリースといった工程を順番に進めていくため、テストは開発の後期段階で行われることが一般的でした。
しかし、近年では、アジャイル開発やDevOpsといった、開発と運用を連携させる手法が主流になりつつあります。
アジャイル開発では、短いサイクルで開発を繰り返すため、テストも開発と並行して行う必要があります。
DevOpsでは、開発チームと運用チームが連携して、開発からリリース、運用までを一体的に行うため、テストもそのサイクルに組み込まれます。
これらの最新の方法論では、継続的インテグレーション(CI)や継続的デリバリー(CD)といったツールやプラクティスを活用することで、テストの自動化や効率化を図り、迅速なリリースサイクルを実現しています。
初期段階でのテストと最新の方法論を組み合わせることで、ソフトウェアの品質向上と開発期間の短縮を両立することができます。
5. 異なるテストタイプを組み合わせる
ソフトウェアには、様々な側面があり、単一のテストタイプだけでは、その品質を十分に保証することはできません。
多様なテストタイプを組み合わせることで、ソフトウェアのあらゆる側面を検証し、包括的な品質評価を行うことができます。
例えば、ECサイトの新規会員登録機能をテストする場合、
・機能テスト:会員登録フォームが正しく動作するか、入力値チェックが適切に行われているかなどを検証します。 ・非機能テスト:大量のユーザーが同時にアクセスした場合でも、会員登録機能が正常に動作するかを検証します。 ・セキュリティテスト:個人情報が適切に保護されているか、不正アクセスを防ぐ対策が施されているかを検証します。 ・ユーザビリティテスト:ユーザーにとって会員登録フォームが使いやすいかどうかを検証します。 |
といったように、複数のテストタイプを組み合わせてテストを実施することで、より多角的な視点からソフトウェアの品質を評価することができます。
6. バグを効果的に報告する
テスターの重要な役割の一つに、発見したバグを開発者に正確に報告することがあります。
バグ報告は、単にバグの存在を知らせるだけでなく、開発者が迅速にバグを修正し、ソフトウェアの品質を向上させるために必要な情報を提供するものでなければなりません。
効果的なバグ報告を作成するために、以下のポイントを意識しましょう。
・明確で簡潔な記述:バグの内容を簡潔でわかりやすい言葉で記述します。 ・再現手順:バグを再現するための手順を明確に記述します。 ・期待される結果と実際の結果:バグが発生した場合の実際の結果と、本来期待される結果を明確に記述します。 ・スクリーンショット:バグ発生時の画面のスクリーンショットを添付します。 ・エラーメッセージ:エラーメッセージが表示される場合は、その内容を正確に記述します。 ・環境情報:バグが発生した際のOS、ブラウザ、デバイスなどの環境情報を記述します。 ・重大度の分類:バグの重大度を、深刻なものから軽微なものまで分類します。 |
例えば、ECサイトの商品購入画面で、数量を選択できないバグを発見した場合、以下のようなバグ報告を作成することができます。
件名:商品購入画面で数量を選択できない 発生箇所:商品購入画面 再現手順: 1.商品詳細ページから「カートに入れる」ボタンをクリックする 2.カートページで「購入手続きへ進む」ボタンをクリックする 3.商品購入画面で数量を選択しようとすると、ドロップダウンリストが表示されない 4.期待される結果: 数量を選択できるドロップダウンリストが表示される 実際の結果:ドロップダウンリストが表示されず、数量を選択できない スクリーンショット:添付 環境情報: OS: Windows 10ブラウザ: Google Chrome 最新版重大度: 高 バグ報告は、開発者とテスター間のコミュニケーションツールとして重要な役割を果たします。 正確で詳細なバグ報告を作成することで、開発者は効率的にバグを修正することができ、ソフトウェアの品質向上に繋がります。 |
7. テスター以外のメンバーの参加
ソフトウェアテストは、テスターだけの仕事ではありません。
開発者、デザイナー、プロジェクトマネージャー、そして時には顧客など、様々なメンバーをテストに巻き込むことで、多様な視点からソフトウェアを評価し、品質向上に繋げることができます。
開発者は、ソフトウェアの内部構造を理解しているため、テスターが見落としてしまうようなバグを発見できる可能性があります。
また、デザイナーは、ユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)の観点から、ソフトウェアの使いやすさを評価することができます。
プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体の進捗状況を把握しているため、テストの優先順位やスケジュール調整に役立つ情報を提供することができます。
顧客は、実際にソフトウェアを使用する立場から、ソフトウェアの使い勝手や機能に対する意見を述べることができます。
テスター以外のメンバーをテストに参加させる方法としては、以下のようなものがあります。
・レビュー:開発者やデザイナーに、テスト仕様書やテストケースをレビューしてもらうことで、テストの抜け漏れを防ぐことができます。 ・ペアテスト:テスターと開発者がペアを組んでテストを行うことで、バグの発見率を高めることができます。 ・ユーザーテスト:顧客にソフトウェアを実際に使ってもらい、フィードバックを収集します。 |
テスター以外のメンバーをテストに巻き込むことで、以下のようなメリットがあります。
・多様な視点:様々な視点からソフトウェアを評価することで、より多くのバグを発見することができます。 ・コミュニケーションの促進:テスターと開発者間のコミュニケーションを促進することで、相互理解を深め、開発効率を高めることができます。 ・責任感の向上:テスター以外のメンバーもテストに参加することで、ソフトウェアの品質に対する責任感を共有することができます。 |
ソフトウェアテストは、チーム全体で取り組むべき課題です。
多様なメンバーをテストに巻き込むことで、より質の高いソフトウェアを開発することができます。
8. 自動化テストを賢く利用する
ソフトウェアテストを効率化し、より多くのテストを短時間で行うために、自動化テストの活用は非常に有効な手段です。
自動化テストとは、テストツールを使用して、テストの実行、結果の検証、レポート作成などを自動的に行う手法です。
自動化テストを導入することで、
・時間短縮:繰り返し行うテストを自動化することで、テストにかかる時間を大幅に短縮できます。 ・コスト削減:テストの自動化により、人材コストを削減することができます。 ・ヒューマンエラーの防止:自動化によって、人為的なミスを減らし、テストの精度を高めることができます。 ・テストカバレッジの向上:自動化テストでは、手動では難しいテストケースを網羅的に実行することができます。 ・24時間テスト:自動化テストは、夜間や休日でも実行することができます。 |
しかし、すべてのテストを自動化することが適切とは限りません。
自動化テストは、初期投資やメンテナンスコストがかかるため、自動化するテストケースを適切に選択することが重要です。
一般的に、以下の条件を満たすテストケースは、自動化に適していると言えます。
・繰り返し実行するテストケース ・単純なテストケース ・時間のかかるテストケース ・データ量が多いテストケース |
一方、以下の条件を満たすテストケースは、自動化に不向きです。
・複雑なテストケース ・創造性や主観的な判断が必要なテストケース ・UI/UXに関するテストケース |
自動化テストを導入する際には、テストツール選定も重要なポイントです。
様々なテストツールが提供されているため、テスト対象や予算、スキルレベルに合わせて適切なツールを選ぶ必要があります。
自動化テストを賢く利用することで、テストの効率化と品質向上を両立することができます。
9. テスト管理プラットフォームの活用
ソフトウェアテストは、多くの場合、複数人でチームを組んで行います。
チームでテストを行う際に、テストケースの管理、進捗状況の共有、バグ情報の共有などを効率的に行うためには、テスト管理ツールの活用が不可欠です。
主な機能としては、以下のようなものがあります。
・テストケース管理:テストケースの作成、編集、管理を行うことができます。 ・テスト実行管理:テストの実行状況を記録し、進捗状況を管理することができます。 ・バグ管理:バグの報告、追跡、管理を行うことができます。 ・レポート作成:テスト結果をまとめたレポートを作成することができます。 ・チームコラボレーション:テスト担当者間で情報共有やコミュニケーションを行うことができます。 |
テスト管理ツールを活用することで、以下のようなメリットがあります。
・テストの効率化:テスト工程を効率的に管理し、テスト作業の時間を短縮することができます。 ・品質向上:テストの抜け漏れや重複を防ぎ、テストの質を高めることができます。 ・コスト削減:テスト管理プラットフォームの活用により、人為的なミスを減らし、テストにかかるコストを削減することができます。 ・情報共有の促進:テスト担当者間で情報共有を促進することで、チーム全体で品質向上に取り組むことができます。 ・リスク管理:テストの進捗状況やバグ発生状況をリアルタイムに把握することで、リスクを早期に発見し、対応することができます。 |
テスト管理ツールは、クラウドサービスとして提供されているものや、自社サーバーにインストールして利用するものなど、様々な形態があります。
テスト対象や予算、チーム規模に合わせて、適切なテスト管理プラットフォームを選定しましょう。
10. 常に測定と分析を行う
ソフトウェアテストは、一度実施したら終わりではありません。
テストの実施状況や結果を継続的に測定・分析し、改善を繰り返すことで、テストの質を高め、より効果的なテストプロセスを構築することができます。
測定・分析の対象としては、以下のような項目が考えられます。
・テストカバレッジ:テストケースが、要件や仕様をどの程度網羅しているかを測定します。 ・バグ発生率:テストで発見されたバグの数を測定します。 ・バグ修正率:発見されたバグのうち、修正されたバグの割合を測定します。 ・テスト工数:テストにかかった時間を測定します。 ・テストの進捗状況:テスト計画に対して、どの程度テストが進んでいるかを測定します。 |
これらのデータを収集・分析することで、テストプロセスにおける課題や改善点を発見することができます。
例えば、テストカバレッジが低い場合は、テストケースの追加や見直しが必要となります。
バグ発生率が高い場合は、テストケースの質を見直したり、開発プロセスに問題がないかを検討したりする必要があります。
分析結果に基づいて、テストプロセスを改善することで、より効率的に、より質の高いテストを実施することができます。
改善活動の一環として、以下のような取り組みが有効です。
・振り返り:テスト終了後に、テストプロセスを振り返り、良かった点、悪かった点を分析します。 ・プロセス改善:振り返り結果に基づいて、テストプロセスを改善します。 ・ツール導入:テスト管理ツールや自動化ツールを導入することで、テストの効率化を図ります。 ・スキル向上:テスト担当者のスキル向上のための研修や教育を実施します。 |
継続的な測定と分析、そして改善を繰り返すことで、ソフトウェアテストの質を高め、開発プロセス全体を効率化することができます。
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この記事の監修
Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ