TDD(テスト駆動開発)とは?その特徴やメリット・デメリット、実施の流れなどについて徹底解説!
テスト駆動開発(Test-Driven Development: TDD)は、テストを繰り返しながら実装をしていく開発の手法です。
主にアジャイル開発において用いられ、不具合を早い段階で検出できたり、実装がシンプルにできるなどのメリットがあります。
効率的なアプリケーション開発の現場において、知っておくべき手法のひとつといえるでしょう。
そこで今回はテスト駆動開発について、その概要やメリットデメリット、基本的な流れについて解説します。
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テスト駆動開発(TDD)とは
テスト駆動開発(Test-Driven Development: TDD)は、テストを繰り返しながら実装をしていく開発の手法です。プログラムの実装前にテストコードを先に書き、そのテストに適合するように実装とリファクタリングを繰り返します。
※リファクタリングとは、コードの外部の動作を変えずに内部の構造を改善し、読みやすく保守しやすい状態に整理することを指します。
TDDでは、最初にテストを行い、その後で実装と修正を短いサイクルで繰り返します。これにより、システムの品質を高めつつ、追加開発の際のストレスを減らすことができます。
たとえば企業が新しい販売管理システムを導入する場合、TDDでは最初に販売データの入力やレポート生成のテストを作成します。
次に、そのテストが通るように最低限の実装を行い、テストが成功するまで修正を繰り返します。最終的に、リファクタリングを行い、シンプルで美しいコードを目指します。
この手法は、2002年にKent Beck氏が書いた「Test Driven Development By Example」によって広く知られるようになりました。また、アジャイル開発やエクストリームプログラミング(XP)でも推奨されている方法です。
※エクストリームプログラミング(XP)は、アジャイル開発の一種で、短い開発サイクルで頻繁にリリースを行い、迅速にフィードバックを得て改善を続ける手法です。
TDDは、テストファーストで開発を進めるため、テストの結果を基にして確実に開発を進めることができます。これにより、不具合の早期発見や品質の高いシステムの提供が可能になります。
一方、TDDとテスターがおこなうテストは異なるものであり、混同しないよう注意が必要です。テスターのテストは問題点の発見が主な目的ですが、TDDは開発プロセスそのものを計画通りに進めるための手法です。
アジャイル開発とは?
アジャイル開発は、変化の激しいビジネス環境に対応するための迅速なソフトウェア開発手法です。
特徴は、短い期間で機能を追加しながら開発を進める「反復増加型」プロセスです。多くの場合、1〜2週間の反復期間ごとに計画、開発、リリースを繰り返します。これにより、ユーザーの要求やビジネスの変化に柔軟に対応しやすくなります。
またアジャイル開発の利点として、要望の高い機能を素早く提供できる点があります。
優先度の高い機能から着手し、段階的にシステムを完成させることで、早期に利用可能な製品をリリースできます。これにより、ビジネスの立ち上げを迅速化でき、利用者の満足度を高めることができます。
従来の上流工程から下流工程へと順番に開発が進められていくウォーターフォール開発とは異なり、アジャイル開発ではプロジェクトの初期段階で全ての要件を確定する必要がなく、開発途中での仕様変更に柔軟に対応できます。これにより、無駄な機能を作らずに済み、必要な機能を確実に実装できます。
アジャイル開発は、短い反復期間での実装とテストを繰り返しながら、迅速に高品質なソフトウェアを提供するための効果的な手法です。
テスト駆動開発のメリット
次に、TDDのメリットについて解説します。
不具合を早い段階で検出できる
テスト駆動開発(TDD)の大きな利点の一つは、不具合を早い段階で検出できることです。
開発者はまずテストコードを書き、そのテストに合格するための最低限のコードを実装します。これにより、実装と同時にテストが行われるため、不具合が発生した場合、すぐに気づくことができます。
こうして、早期に不具合を発見し修正することで、後の工程での大規模なトラブルを防ぐことができます。これにより、リリース前の大規模な修正や再テストの手間を減らし、プロジェクト全体の効率が向上します。
システムの仕様を深く理解できる
テスト駆動開発では、テストコードを書くためにシステムの仕様を詳細に理解する必要があります。
開発者は、仕様に基づいてテストケースを設計し、そのテストに合格するための実装を行います。これにより、システムの各機能がどのように動作するべきかを自然と深く理解することができます。
実装がシンプルになる
テスト駆動開発では、テストに合格するための最低限のコードを書いていくため、実装がシンプルになります。
シンプルな実装は見通しが良く、不具合が起こりづらくなります。たとえば複雑なアルゴリズムを実装する場合でも、最初は簡単な部分から始め、段階的に複雑さを増していくことで、各ステップでの動作確認が容易になります。
シンプルなコードは他の開発者にとっても理解しやすく、後から修正や機能追加をおこなう際にかかる時間を短縮できます。
新しいメンバーがプロジェクトに参加した場合も、シンプルで明確なコードであれば短期間で全体の構造を把握でき、効率的に作業を進めることができます。
これにより、チーム全体の生産性が向上し、プロジェクトの進行がスムーズになります。
開発者の不安や心理的負担が軽減される
テスト駆動開発では、コードの追加や変更のたびにテストを実行するため、開発者は常にプログラムの正常性を確認しながら作業できます。
これにより、「変更を加えたことで他の部分が壊れてしまうのではないか」という不安が軽減されます。
また頻繁にテストをおこなうことで、プログラムの品質が維持され、エラーや不具合が早期に発見されやすくなります。これにより、開発者はストレスを感じることなく、効率的に作業を進めることができます。
結果として、プロジェクト全体の進行がスムーズになります。
テスト駆動開発のデメリット
テスト駆動開発(TDD)にはいくつかのデメリットがあります。
テストコードの管理に時間がかかる
まず、テストコードの保守と管理にコストがかかることです。一度書いたテストコードは、プログラムの変更に応じて更新しなければならず、そのための時間と人的リソースが必要です。
たとえば大きな仕様変更があった場合、関連するすべてのテストコードを修正する必要が生じます。
GUI(画面表示)のテストには不向き
TDDはGUI(画面表示)のテストには不向きで、テストコードを書くための労力がかかります。このような場合は、別のテストフェーズで網羅的にテストする工夫が必要です。
開発者に負担がかかる
テスト駆動開発(TDD)に切り替えるには、時間と労力が必要です。
初期段階ではテストコードの作成に多大な時間がかかり、開発者にとって大きな負担となります。とくにテストを書く文化がなかったチームでは、工数の増加とストレスを伴うため、新しい手法に慣れるまでの期間が課題となります。
この移行期には、全ての要件を網羅するテストを書くために必要な工数をチーム全体で理解し、協力することが重要です。
これらのデメリットを克服するためには、開発チーム全体でTDDの利点を理解し、経験者を中心にチームを編成することが重要です。
またテスト管理ツールを導入し、各テストの管理を効率化する必要があります。
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テスト駆動開発(TDD)の基本サイクル
テスト駆動開発(TDD)は「レッド」「グリーン」「リファクタリング」の3つのサイクルで構成されます。これらのサイクルを繰り返し実行することで、効率的にプログラムを開発できます。以下、それぞれのサイクルについて詳しく説明します。
【レッド】失敗するテストコードを書く
最初のステップは「レッド」と呼ばれていて、実装した機能の要件を元に失敗するテストコードを書きます。
まだ実装が行われていないため、このテストは必ず失敗します。これは意図的なもので、テストツールを使用すると失敗したテストは赤色で表示されることから、この名前がついています。
この段階では、実装したい機能の要件を具体化し、実現すべき内容をテストコードとして記述します。
【グリーン】テストが成功するコードを書く
次に「グリーン」のステップです。
この段階では、先に書いたテストが成功するように最低限のコードを実装します。重要なのは、ここで書くコードが完璧である必要はなく、テストをパスするための最小限の実装で十分です。
テストが成功すると、テストツールは緑色で結果を表示します。このプロセスを何度も繰り返し、必要に応じてコードを修正しながら、テストが全て成功するように調整します。
【リファクタリング】テストが成功する状態のままコードを整理する
最後に「リファクタリング」のステップです。
ここでは、テストが成功する状態を保ちながら、コードの可読性や保守性を高めるために改善を行います。
このリファクタリングを後回しにすると、後々のメンテナンスが困難になるため、グリーンのステップを達成した直後におこなうことが理想的です。
これらのサイクルを繰り返しおこなうことで、段階的に機能を追加しながら品質の高いコードを維持します。
テスト駆動開発を実施する際のポイント・注意点
テスト駆動開発(TDD)を実施する際のポイントと注意点を紹介します。
テストの環境整備をする
まず、テストを実行しやすい環境を整えることが基本です。
たとえばレスポンスが遅いフレームワークを使うと、開発者が頻繁にテストを実行する際に待ち時間が長くなり、生産性が落ちてしまいます。これを防ぐためには、軽量で迅速に動作するユニットテスト環境を用意することが重要です。
さらに、テスト管理ツールやテスト自動化ツールを導入することで、テストの効率を向上させることができます。これにより、手動でのテスト実行にかかる時間を大幅に短縮でき、迅速なフィードバックが得られるようになります。
TDDを導入する箇所を限定する
TDDをすべてのコードに適用しようとすると、時間と労力が膨大になってしまいます。そこで、TDDを導入する箇所を戦略的に限定することが大切です。
とくに複雑なビジネスロジックやアルゴリズムの部分に重点を置き、データベースの操作や単純なデータの入出力部分には他の開発手法を採用するのが効果的です。
これにより、TDDの効果を最大限に引き出しつつ、全体の開発速度を維持できます。
開発サイクルを守りテストの漏れを防ぐ
開発サイクルの遵守とレビューも重要なポイントです。
テスト項目が不十分だと、不具合を見落とす可能性があります。開発サイクルをしっかりと守り、テストコードそのもののレビューを徹底することで、抜け漏れを防ぎます。
たとえば経験豊富な開発者によるレビューをおこなうことで、テスト項目の網羅性を確認することができます。
テスト間の依存関係を排除する
また、テスト間の依存関係を排除することも重要です。
テスト間に依存関係があると、修正や追加の際に無関係なテストが失敗することがあります。これを防ぐためには、モックライブラリを活用するのが有効です。モックライブラリは模擬オブジェクトのことで、隣接するオブジェクトとの連携を確認するために使用されます。
以上のポイントを押さえることで、テスト駆動開発を効果的に進めることができます。
その他の駆動開発
駆動開発と呼ばれるものは他にいくつも種類があります。ここではその代表的な4つの開発手法についてご説明します。
BDD ビヘイビア駆動開発
ビヘイビア駆動開発(BDD)は、テスト駆動開発(TDD)から発展した開発手法で、プログラムの振る舞いや制約条件を自然言語でテストコードを記述します。
これは非エンジニアでも理解しやすくするためで、技術チームと非技術チームでの共同作業をやりやすくします。
これによりチーム全体が一体となって高品質なソフトウェアを迅速に開発することが可能になります。
またユーザー受け入れテストを予定している場合や関係者にテスト内容を説明する必要がある場合にも有効です。
BDDを導入することで、ビジネスの要件とソフトウェアの振る舞いをしっかり結びつけ、顧客の期待に応えるソフトウェアを提供できます。
FDD ユーザー機能駆動開発
ユーザー機能駆動開発(FDD)は、反復的ソフトウェア開発工程の一種で、アジャイル開発手法の一部です。
FDDは、顧客の機能価値を重視し、実際に動作するソフトウェアを短い間隔で提供します。これにより、顧客の要望に基づく無駄のない開発が可能になります。とくに大規模なプロジェクトや顧客との密なコミュニケーションが求められる場合に有効です。
ジェフ・デ・ルーカ(Jeff De Luca)が、1997年にシンガポールの大手銀行の大規模な開発プロジェクトのために提案しました。
MDD モデル駆動型開発
モデル駆動型開発(MDD)は、ソフトウェア開発の手法の一つで、設計とアーキテクチャを独立して変更できる特徴があります。
C#やJavaなどのプログラミング言語を使わずに、視覚的なツールを使ってモデルを作成し、それを基に自動生成されるコードを利用することが可能です。これにより技術的な専門知識がないビジネスユーザーも開発プロセスに参加しやすくなります。
またこれにより設計の柔軟性が高まり、システム変更時の対応が容易になります。
MDDの大きな利点の一つは、ビジネスとITのステークホルダーが積極的に関与できることです。
このように、モデル駆動型開発は、設計の柔軟性、ビジネスとITの連携、迅速な開発を実現するための効率的なアプローチとして知られています。
DDD ドメイン駆動型開発
ドメイン駆動型開発(DDD)は、エリック・エヴァンスによって提唱されたソフトウェア設計手法のひとつで、ドメインの専門家からの入力に基づいてソフトウェアをモデル化することに焦点を当てています。
ここで言う「ドメイン」とは、ソフトウェアが解決する業務領域を指し、例えば会計システムなら「金銭」や「振込処理」が該当します。
DDDのメリットは、業務要件を第一にしたシステムを設計できる点、複雑な機能要件も正しく理解しコーディングできる点、そしてリファクタリングが行いやすく保守性が向上する点です。
一方で、DDDは実装時に大量の分離やカプセル化が必要であるため、設計や開発の手間が増えるという批判もあります。
それでも、業務ファーストの設計手法として、業務の専門家とソフトウェア開発者が協力して高品質なシステムを迅速に構築するための強力なアプローチとなっています。
まとめ
テスト駆動開発(TDD)はテストコードを先に書き、そのテストに合格するように実装とリファクタリングを繰り返す開発手法です。これにより、早期に不具合を発見し修正することが可能となります。また後工程での大規模な修正を減らし、プロジェクト全体のスムーズな進行を実現します。
TDDの基本サイクルは「レッド」「グリーン」「リファクタリング」の3つのステップで構成されます。
効果的に導入するためには、テスト環境の整備や、導入箇所を戦略的に限定することが重要です。軽量で迅速に動作するテストフレームワークを使用し、テスト管理ツールや自動化ツールを活用することで、開発者の負担を軽減し、効率的なテストプロセスを実現できます。また、部分によってはTDDを適用せず、他の開発手法でカバーするのが効果的です。
さらに、開発サイクルの遵守とレビューの徹底、テスト間の依存関係の排除も重要なポイントです。モックライブラリを活用することで、テストの信頼性を高めることができます。
また駆動開発にはビヘイビア駆動開発(BDD)、ユーザー機能駆動開発(FDD)、モデル駆動型開発(MDD)、ドメイン駆動型開発(DDD)などの種類があります。
TDDを取り入れることで、高品質で迅速な開発に繋がる可能性もあります。ぜひ検討してみることをオススメします!
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PractiTest(プラクティテスト)に関する
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トライアルアカウントお申し込みや、製品デモの依頼、
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この記事の監修
Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ