運用テストとは?概要やプロセス、ポイントを徹底解説!

システム開発プロジェクトの最終段階で実施される「運用テスト」。

言葉は聞いたことがあっても、その具体的な内容や位置づけについて、曖昧な理解のまま進めてしまうケースもあるかもしれません。

そこで今回は、運用テストとは一体どのようなテストなのか、その概要やプロセス、ポイントについて徹底解説していきます。

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運用テストとは?

システム開発プロジェクトの最終盤、本番稼働を目前に控えた段階で行われる「運用テスト」。

これは、開発されたシステムがリリースされた後、実際の業務運用において本当に問題なく、そして安定して稼働し続けることができるかを確認するための、極めて重要なテストフェーズです。

発注者側によるテスト

一般的に、運用テストはシステム開発を依頼した「発注者側」、つまりシステムを利用する企業や組織が主体となって実施、あるいは主導するテストとして位置づけられます。

これは、開発ベンダーが主体となって行うシステムテスト(主に機能が仕様通りに作られているかを確認)や、ユーザー部門が主体となる受け入れテスト(UAT)(主に実際の業務担当者がシステムを使って業務を行えるかを確認)とは異なる性質を持ちます。

運用テストの最大の目的は、「開発されたシステムが、リリース後の実際の運用に本当に耐えうるか、そして自社の運用体制も含めて問題なく業務が回るか」という、より実運用に即した視点での最終確認を行うことにあります。

したがって、発注者側のシステム部門や、実際にシステムの運用保守を担当する部門が中心となり、開発ベンダーやユーザー部門の協力も得ながら進めるのが一般的です。

検証対象はシステムの機能そのものに留まらず、運用手順書に従った操作、データのバックアップや障害発生からの復旧手順、システムの稼働状況を監視する仕組み、セキュリティに関する運用ルールなど、システムを日々安定して動かし続けるために必要な「運用」に関わるあらゆる側面が含まれます。

発注者自身が当事者意識を持って、自社の運用実態に基づいた厳しい目でチェックを行うことが、本番稼働後のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな業務移行を実現するための鍵となるのです。

運用テストの手法

運用テストの手法はシステムの特性や目的によって様々ですが、共通しているのは「実際の運用業務を可能な限りリアルに再現(シミュレート)する」というアプローチです。

代表的な手法としては、まず、本番運用で使われる予定の運用手順書や操作マニュアルに基づいて、システムの起動・停止、データのバックアップ取得と復旧(リストア)、定常的なシステム監視、日次・週次・月次といった定期的に実行されるバッチ処理などを、実際に運用を担当するスタッフが手順通りに実施してみる方法があります。

これにより、手順書自体の分かりやすさ、記述の正確性、手順の実行可能性、想定作業時間などを評価できます。

また、システムの一部に意図的に障害を発生させたり、関連するサーバーを停止させることで、予備システムへの切り替え(フェイルオーバー)や障害からの復旧プロセスが設計通りに機能するか、関係者へのアラート通知やエスカレーションが適切に行われるかなどを確認する「異常系テスト」も極めて重要です。

さらに、システムがリリース後、長時間安定して稼働し続けられるか、あるいは利用者の増加やデータ量の増大によって性能が劣化しないかを確認するために、一定期間システムを連続稼働させたり、擬似的な負荷をかける「性能・耐久テスト」も実施されます。

セキュリティ運用面では、利用者IDの追加や削除、アクセス権限の変更といった管理作業や、不正アクセス試行の監視、セキュリティログの定期的な確認と分析といった運用が確立され、有効に機能するかを検証します。

これらの多様な手法を通じて、システム単体だけでなく、それを取り巻く運用プロセスや体制全体の妥当性と実効性を評価していきます。

運用テストを実施する目的

なぜ開発の最終段階で、時間とコストをかけてまで運用テストを実施する必要があるのでしょうか。

その目的は一つではありませんが、究極的には「開発されたシステムを無事に本番稼働させ、その後も継続的に安定した運用を実現するため」に集約されます。

本番環境で想定どおりシステムが動作するかを確認

最も基本的な目的は、システムが本番環境(またはそれに限りなく近いテスト環境)において、想定された通りに、かつ安定して動作することを最終確認することです。

これまでのテストフェーズでは見落とされがちな、特定の環境に依存する問題や、長時間稼働に伴うメモリリーク、性能劣化といった問題を検出し、本番稼働前に修正する最後の機会となります。

マニュアル等が実用的かを確認

システムの運用に不可欠な各種ドキュメント(運用手順書、障害時対応マニュアル、バックアップ・リカバリ手順書など)が、実際の運用現場で本当に役立つレベルで整備されているか、内容に不備や誤り、分かりにくい点がないかを実践的に検証することも重要な目的です。

実際の運用スタッフがシステムについて理解を深める

システムの日常的な運用や保守を担当するスタッフが、実際にシステム操作や手順の確認を行うことで、システムへの習熟度を高め、本番稼働に備えるという教育的な側面も持ち合わせています。

トラブル時における有効性を検証

万が一のシステム障害や災害発生時に、定められた手順に従って迅速かつ確実に業務を復旧できるか、関係部署との連携体制は確立されているか、といった事業継続計画(BCP)の観点からの有効性検証も、運用テストが担う重要な役割です。

UAT(受け入れテスト)との違いは?

運用テストと同様に開発の最終段階で発注者側が実施するテストとしてUAT(ユーザー受け入れテスト)というものがあります。

このふたつは非常に似ていますが、目的や検証する観点が若干異なります。

しばしば混同されることもあるため、その違いを正しく理解しておくことが、適切なテスト計画と実行のために重要です。

UATの主な目的は、開発ベンダーによって作られたシステムが、当初の要求仕様を満たしており、実際の業務プロセスに沿って問題なく利用できるか、業務担当者の視点から最終的に受け入れ可能かどうかを判断することです。

テスト実行者は、日常業務で行うであろう操作をシナリオに沿って実施し、システムが期待通りに動作するか、画面の使い勝手は良いか、業務の流れにスムーズに組み込めるか、といった観点から評価を行います。

いわば、「このシステムを使って、想定していた業務がきちんと行えるか?」を確認するためのテストと言えるでしょう。

一方、運用テストの目的は、システムそのものの機能だけでなく、それを取り巻く「運用プロセス全体」が、本番環境で実際に機能し、システムが長期的に安定して稼働し続けられるかを確認すること。

こちらは、「このシステムを、日々問題なく、安定して運用し続けられるか?」を確認するためのテストと言えます。

このように、UATが主に「業務遂行の可否」をユーザー視点で検証するのに対し、運用テストは「システムの安定稼働と保守運用の実現性」を運用視点で、より技術的かつ広範な観点から検証する点が違いとなります。

運用テストのプロセス

運用テストを効果的かつ効率的に進めるためには、場当たり的な対応ではなく、体系立てられたプロセスに沿って進めることが不可欠です。

ここでは、発注者が主体となって運用テストを進める際の一般的なプロセスを、計画立案からテスト実施までの主要なステップに分けて解説します。

各ステップにおける目的と実施内容、そして発注者として押さえるべきポイントを理解することで、スムーズなテスト遂行が可能になります。

テスト計画書の作成

運用テストのプロセスは、まず「テスト計画書」の作成から始まります。

これはテスト全体の設計図であり、プロジェクト関係者全員の認識を合わせ、テストの方向性を定めるための最も重要なドキュメントです。

発注者(主にシステム部門)が主体となってたたき台を作成し、開発ベンダー、ユーザー部門、そして実際にシステムを運用する社内の運用部門など、関係各所と内容をレビューし、合意形成を図る必要があります。

計画書には、まず「なぜこの運用テストを行うのか」という目的と、「どのような状態になればテストが成功したと判断するか」という具体的な目標(KPI:応答時間、リソース使用率、障害復旧時間、運用手順の完了率など)を明確に定義します。

次に、テストの対象となるシステムの範囲(どの機能、どの運用プロセスを対象とするか)、テストを実施する期間や詳細なスケジュール、各部門や担当者の役割分担(誰が何を責任持って行うか)を定めます。

さらに、テストを実施する環境の構成方針(本番環境を使うのか、専用環境を用意するのか等)、使用するツール(負荷ツール、監視ツール、インシデント管理ツールなど)、テストで重点的に確認する観点(例:通常運用時の安定性、障害発生時の業務継続性、性能目標の達成度、セキュリティ運用手順の遵守など)、そして最終的な成果物(テスト結果報告書のフォーマットや提出期限など)についても具体的に記載します。

この計画書が曖昧だと、後の工程で手戻りが発生したり、テストの目的がぶれたり、関係者間の認識齟齬が生じたりする原因となります。

発注者として、自社の運用実態やビジネス要件を十分に踏まえ、具体的で測定可能、かつ実行可能な計画を策定することが強く求められます。

テスト仕様書の作成

テスト計画書で全体の骨格と方針が定まったら、次は具体的なテスト内容を記した「テスト仕様書」を作成します。

これは、一般的に「テストケース」や「テストシナリオ」と呼ばれるものに相当し、「何を」「どのような手順で」テストし、「どのような結果になれば合格(OK)とするか」を詳細に記述したドキュメントです。

テスト計画書で定義したテスト観点(例:日次バックアップ手順の確認、サーバー障害時の切り替え確認、月次締め処理の実行など)ごとに、具体的な操作手順、使用するデータ(あるいはデータの条件)、期待されるシステムの応答や画面表示、ログの内容、そして明確な合否判定基準を記載します。

運用テストの仕様書作成においては、特に「実際の運用業務」を強く意識することが重要です。

例えば、承認された運用手順書に記載されている通りの操作を、指定された担当者が実施するケース、想定される通常運用(ピーク時間帯、夜間バッチ処理など)を模した一連の業務シナリオを実行するケース、意図的にシステム障害やネットワーク断などを発生させて、定められた復旧手順や連絡体制が機能するかを確認するケース、大量データ処理や長時間の連続稼働における性能変化を確認するケースなどが考えられます。

発注者としては、自社の運用ルールや過去に発生したインシデント事例などを基に、テストすべき観点や具体的なシナリオ案を提示することが求められます。

開発ベンダーや社内の運用部門と協力して具体的な仕様書に落とし込むことが多いですが、その内容が計画した目的や観点を満たしているか、網羅性に漏れはないかといった観点で、発注者が責任を持ってレビューし、承認する必要があります。

この仕様書が、次のテスト実施フェーズにおける具体的な作業指示書となり、テストの品質を担保する上で重要な役割を果たします。

テスト環境の構築

テスト仕様書で実施すべき内容が具体的に固まったら、次はテストを実際に実施するための「テスト環境」を構築します。

運用テストで得られる結果の信頼性や有効性は、このテスト環境が本番稼働環境をどれだけ忠実に再現できているかに大きく依存するため、環境構築は非常に重要なステップとなります。

理想を言えば、サーバーのハードウェア構成(CPU、メモリ、ディスク容量・性能など)、OSやミドルウェア(Web/AP/DBサーバー、連携ミドルウェアなど)の種類とバージョン、ネットワーク構成(セグメント、帯域、ファイアウォール設定、負荷分散装置など)、さらにはデータベースに格納されているデータの種類や量に至るまで、本番環境と可能な限り同一の環境を用意することが望まれます。

これにより、テスト中に観測されたシステムの挙動や性能測定値が、本番稼働時にも同様に現れるであろうという確度が高まります。

しかしながら、完全に同一の環境を構築することは、コスト(ハードウェア費用、ライセンス費用)や時間的な制約から現実的でない場合も少なくありません。

その際には、どの部分が本番環境と異なるのか(例えば、サーバー台数が少ない、データ量が少ない、一部の連携先システムがスタブになっている等)を明確にリストアップし、その差異がテスト結果にどのような影響を与えうるのかを事前に評価し、関係者間で認識を共有しておくことが重要です。

テスト環境の構築作業には、サーバーなどのインフラ準備だけでなく、テスト対象となるアプリケーションソフトウェアの配備、本番環境に近い状態のテストデータの準備(個人情報などが含まれる場合はマスキング処理も必要)、負荷テストツールやシステム監視ツールなどの導入・設定も含まれます。環境構築の責任分担(発注者側で行うか、開発ベンダーに依頼するか)や、それに伴う費用負担についても、プロジェクトの初期段階や契約時に明確にしておくべき事項です。

発注者としては、構築されたテスト環境がテスト計画書で定めた要件を満たしているか、テスト実施に支障がない状態かを、稼働前に確認する責任があります。

テストの実施

テスト環境が整い、テスト仕様書も承認されれば、いよいよ計画に基づいて「テストの実施」を行います。

このフェーズでは、テスト仕様書に記述された手順に従い、実際にシステムを操作したり、ツールを実行したりして、その結果を確認・記録していきます。

運用テストにおいては、システムの最終的な利用者であり、運用責任を負う発注者側のシステム部門や運用担当者が主体となってテストを実施し、必要に応じて開発ベンダーが技術的な支援やトラブルシューティングを行う、という体制で進められるのが一般的です。

テスト担当者は、仕様書に定められた手順を一つ一つ実行しながら、各ステップでのシステムの応答時間、画面表示の内容、データの更新状態、生成されるログ、サーバーリソース(CPU使用率、メモリ使用量、ディスクI/Oなど)の使用状況などを注意深く観察します。

そして、観測された結果が仕様書に記載された「期待結果」と一致しているかどうかを比較し、一致していれば「合格(OK)」、一致していなければ「不合格(NG)」として記録します。

テスト結果だけでなく、確認日時、担当者名、使用したデータ、取得したログや画面キャプチャなどのエビデンス(証跡)も、後で追跡や再現ができるように正確に残すことが重要です。

テストの進捗状況(完了したケース数、NG発生件数など)は、日次や週次などで定期的に関係者間で共有し、計画からの遅延や予期せぬ問題が発生していないかを確認します。

もしテスト中に仕様書通りに操作が進められない問題や、システムのハングアップ、予期せぬエラーメッセージの表示、性能の著しい劣化といった不具合が発見された場合は、その場で詳細な状況(再現手順、発生時刻、エラーコード、関連ログなど)を記録し、速やかに関係者に報告・連絡します。

その後、原因調査、修正対応、再テストといったプロセスに進みます。

テスト実施者は、単に仕様書の指示に従うだけでなく、常に運用担当者の視点を持って、「この手順は本当に分かりやすいか?」「このエラーメッセージは利用者に意味が伝わるか?」「監視はこの項目で十分か?」といった疑問を投げかけながら進めることも、より実践的な運用品質の向上につながります。

発注者としては、テスト全体の進捗状況を管理し、特に重要なテスト項目やクリティカルなシナリオには自ら立ち会って確認するなど、主体的な関与が求められます。

運用テスト成功のためのポイント

運用テストを計画通りに進め、本番稼働後の安定運用という目的を達成するためには、技術的な検証だけでなく、プロジェクトの進め方においても押さえておくべきいくつかの重要なポイントが存在します。

ここでは、特に運用テストの成功確率を高めるために意識したい、コミュニケーションや成果物の活用に関する3つのポイントについて解説します。

社内関係者との情報共有をしっかり行う

運用テストは、発注企業のシステム部門だけで閉じて進められるものではありません。

実際にそのシステムを利用して日々の業務を行うユーザー部門、そしてリリース後にシステムの安定稼働を維持する責任を負う運用部門との間で、緊密な情報共有と連携体制を築くことが、テストを成功に導く上で不可欠となります。

まず、テスト計画の段階から関係部署を巻き込むことが重要です。

・テストの目的は何か

・どのような範囲を対象とするのか

・いつ実施するのか

・各部署にはどのような協力をお願いするのか(テスト参加、環境準備、情報提供など)

・どのような状態になればテスト完了とみなすのか

といった基本事項を明確にし、関係部署の代表者を集めた会議などで説明し、質疑応答を通じて認識を合わせ、合意形成を図ります。

これにより、「自分たちも当事者である」という意識が生まれ、協力が得られやすくなります。

テスト実施期間中も、進捗状況(計画通りか、遅延しているか)、発見された課題やインシデントの内容とその対応状況、スケジュールへの影響などを、定例会議や日報・週報といった形で、関係者にタイムリーかつ透明性を持って共有し続けることが求められます。

特に、テスト結果を受けて運用手順の見直しや追加の利用者トレーニングが必要になる可能性が見えてきた場合は、早期に運用部門やユーザー部門に情報を伝え、準備期間を確保することが大切です。

また、一方的な情報発信だけでなく、テスト中に運用担当者やユーザー部門の担当者が気づいた懸念点や改善提案などを吸い上げるための窓口や機会を設けることも有効です。

このように、プロジェクトを通じてオープンなコミュニケーションを維持し、常に最新の情報を共有することが、認識の齟齬による手戻りを防ぎ、潜在的なリスクを早期に発見・対応し、部門間の協力関係を強化することにつながります。

運用者・利用者の目線で実施する

運用テストにおいて、システムが技術的に正しく動作するかを確認することは当然重要ですが、それだけでは十分ではありません。

テストを成功させ、本番稼働後のスムーズな運用を実現するためには、「実際にシステムを運用する担当者や、そのシステムを使って日々の業務を行う利用者の目線」に立ってテストを実施し、評価することが極めて重要になります。

開発ベンダーやシステム部門の視点だけでは、どうしても機能仕様の充足度や技術的な合理性が評価の中心となりがちですが、運用テストは、そのシステムが実際の業務現場で本当に「使いこなせる」ものになっているか、運用が「回る」のかを検証する最後の砦です。

具体的には、システムの運用を担うスタッフの視点から、

・提供された運用手順書は分かりやすく、迷わず操作できるか?

・エラーメッセージが表示された際、原因と対処法が理解できるか?

・日常的な監視作業は、現実的な負荷で実施可能か?

・定型的な運用タスク(データ投入、帳票出力など)は効率的に行えるか?

といった点を厳しくチェックします。

また、システムの利用者(エンドユーザー)の視点からは、

・運用上の制約(例:バッチ処理中の利用制限、データ更新のタイムラグなど)によって業務に支障が出ないか?

・トラブル発生時の問い合わせ先やエスカレーションフローは明確になっているか?

といった点も確認が必要です。

システムの機能が仕様通りであることは大前提ですが、それを使う「人」がストレスなく、効率的に、そして安心して業務を遂行できるか、という観点を忘れてはなりません。

運用担当者や利用者の立場に立って、分かりやすさ、使いやすさ、そしてトラブル発生時の対応のしやすさなどを評価項目に加え、テストを実施することが、システム導入後の満足度を高め、早期の定着と活用を促進する上で不可欠です。

テスト結果を操作マニュアルにも反映する

運用テストは、実施して課題を発見し、システムや設定を修正して終わり、ではありません。

テストを通じて得られた様々な知見や改善点、決定事項などを、最終的な成果物である「操作マニュアル」や「運用手順書」、「システム利用者向けのFAQ(よくある質問と回答集)」といったドキュメント類に確実に反映させ、更新していくことが将来にわたる安定運用を支えるための重要なポイントとなります。

例えば、運用テスト中に「この手順書の記述だけでは操作が分かりにくい」というフィードバックが運用担当者から寄せられた場合、より具体的な操作画面のスクリーンショットを追加したり、補足説明を追記します。

「特定の条件下でこのエラーが発生しやすい」ということがテストで判明したならば、そのエラーが発生する原因と具体的な回避策、あるいは発生した場合の正しい対処法をマニュアルやFAQに明記しておくべきでしょう。

テストの結果、当初想定していた運用手順やルールが変更されたり、新たな注意点が明らかになった場合も、必ず関連する全てのドキュメントを最新の状態に修正し、版数管理を行う必要があります。

このように、テスト結果を具体的なドキュメントに落とし込むことで、テストで見つかった問題の再発防止や、運用担当者の作業効率向上、問い合わせ対応時間の削減につながります。

さらに、更新されたマニュアル類は、新しく運用チームに加わったメンバーへの教育資料としても有効活用でき、組織としての知識の標準化や属人化の排除にも貢献します。

テストは一過性のイベントではなく、その学びを組織の資産として定着させるプロセスの一部であると捉え、マニュアルへの反映を徹底することが重要です。

まとめ

今回は運用テストについて、発注者の視点を中心に、その定義と目的、具体的な手法、UATとの明確な違い、計画から実施までのプロセス、そして成功に導くためのポイントを網羅的に解説しました。

運用テストは、開発されたシステムが実際の業務運用において安定稼働できるかを最終確認するための不可欠な工程です。

UATが主に業務遂行の可否をユーザー視点で確認するのに対し、運用テストはシステムの安定性や運用プロセス全体の妥当性を運用視点で検証します。

テストを成功させるには、目的と目標を明確にした計画書、実際の運用を想定した仕様書、本番に近い環境構築、そして計画に沿った確実なテスト実施というプロセスが重要です。

さらに、社内関係者との円滑な情報共有、運用担当者や利用者の立場に立った評価、そしてテスト結果を運用マニュアルへ確実に反映させることが、その効果を最大化します。

発注者として運用テストに主体的に関与し、これらのプロセスとポイントを実践することが、システム導入プロジェクトの成功と、リリース後の安定した業務運用を実現する鍵となります。

この記事が、運用テストへの理解を深め、自信を持ってプロジェクトを推進するための一助となれば幸いです!

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この記事の監修

Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。

記事制作:川上サトシ