アジャイル開発の代表的な手法5つをご紹介!
アジャイル開発は、柔軟かつ迅速なプロジェクト管理を可能にするソフトウェア開発手法です。
そのアプローチ方法にはいくつかの種類があり、各プロジェクトの特性やニーズに応じて選択できます。
そこで今回は、アジャイル開発の中でも特に注目される5つの手法、スクラム開発、エクストリームプログラミング(XP)、ユーザー機能駆動開発(FDD)、リーンソフトウェア開発(LSD)、カンバンについてそれぞれ特徴やメリットについて解説します。
ぜひプロジェクトに最適な開発方法を見つけるための参考にしてください!
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アジャイル開発とは?
アジャイル開発とは、ソフトウェア開発の手法の一つであり、柔軟で迅速なプロジェクト管理を可能にすることを目的にしたものです。
従来のウォーターフォール型開発が工程を一つ一つ順番に進めていくのに対し、アジャイル開発は小さな反復作業(イテレーション)を繰り返しながら進めることが特徴です。
これにより、開発中に発生する要件の変更や新たな要望にも柔軟に対応できるのが大きな利点です。
▼アジャイル開発の概要についてはこちらの記事へ▼
アジャイル開発のメリット
アジャイル開発には多くのメリットがあります。
迅速なリリースが可能
短い開発サイクルを繰り返すことで、部分的な完成品を早期にリリースし、フィードバックを基に素早く改善を行えます。これにより、大掛かりな修正が不要となり、開発スピードが向上します。
開発の柔軟性
仕様変更や追加要求に迅速に対応でき、ユーザーのニーズや市場の変化にも柔軟に対応可能です。計画段階で厳密な仕様を定めず、開発中に発見された改善点を即座に反映できるのも大きな利点です。
品質の向上
継続的なテストとフィードバックにより、不具合を早期に発見・修正できます。各イテレーション終了時にテストを行い、その結果を基に改良を加えることで、システムの品質が自然と向上します。テスト駆動開発(TDD)を取り入れることで、コードの品質と保守性も高まります。
チームの成長を促進
アジャイル開発ではメンバーが多様な役割を繰り返し担うため、スキルの向上やマルチタスク化が進みます。開発、テスト、デザインなどの異なる作業を交互におこなうことで、幅広いスキルセットを身につけられます。また、チーム内の協力関係が強化され、プロジェクトの成功に向けて一丸となることができます。
工数見積もりの正確さ
アジャイル開発では、短い期間のイテレーションを繰り返して開発を進めるため、工数の予測が立てやすく、見積もりがより正確になります。
またイテレーションごとに受注や見積もりをおこなうことが可能なため、発注側のニーズに柔軟に応じたシステム開発が実現します。
スクラム開発
スクラム開発はアジャイル開発の一手法で、チームワークを重視します。
スクラム開発のチームはプロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者の三役から成り立ちます。
プロダクトオーナーは製品のビジョンを示し、バックログを管理します。スクラムマスターはチームの進行をサポートし、障害を取り除く役割を担います。開発者は具体的な設計、コーディング、テストを行います。
これにより各役割が連携し、高品質なプロダクトを迅速に開発することが可能です。
スクラム開発の進め方
進行方法としては、まずスプリントプランニングでタスクの抽出と分解を行い、計画を立てます。次に、毎日短時間のミーティングで進捗を確認するデイリースクラムを実施します。
スプリントの終わりにはスプリントレビューを行い、成果物を評価してフィードバックを受けます。最後に、スプリントレトロスペクティブで振り返りを行い、次のスプリントに向けた改善策を講じます。
▼スクラム開発についてもっと知りたい方はこちら▼
エクストリームプログラミング(XP)
エクストリームプログラミング(XP)は、アジャイル開発の中でも特にスピードとシンプルさを追求し、最小限のドキュメンテーションで進める手法です。
XPのプロセスと特徴
XPでは、最初にプロジェクト全体の詳細な計画を立てず、より臨機応変に開発を進めていきます。テスト駆動開発(TDD)を繰り返すことで随時リファクタリング(完成したコードをわかりやすく書き換えること)ができる点や、2名のプログラマーが協力してプログラミングをおこない高品質なコードを効率的に作成する点、無駄を排除して必要なコードだけを書き出す「YAGNI」という方針である点が特徴です。
また、XPでは、顧客との密接なコミュニケーションを重視し、オンサイト顧客と呼ばれる顧客代表が開発チームと共に作業することが一般的です。
XPの価値観
XPのプロセスは、コニュニケーション、シンプル、フィードバック、勇気、尊重という5つの価値観で構成されており、頻繁なコードレビューやユニットテストを行い、リアルタイムでの変更に対応します。
コミュニケーション
XPだけではなく、アジャイル開発で大切な要素はコミュニケーションです。ただしXPでは開発チーム内だけでなく、顧客とのコミュニケーションも重視している点が特徴です。
シンプル
設計をできる限りシンプルにして始めるのもXPならではの要素です。まずは必要な機能を最小限でそろえてから、必要に応じて機能を追加していくスタイルとなります。
フィードバック
XPでは顧客とのコミュニケーションを重視しています。開発サイクルの都度にフィードバックをもらって、必要な機能を洗い出します。
勇気
XPでは臨機応変さを常に求められます。より大胆な変更や追加事項に対応できるように、勇気をもって行動することが大切だといわれています。
尊重
メンバーひとりひとりの役割が非常に大切なスタイルですので、お互いを尊重しあう姿勢は非常に大切とされます。
これにより、開発チームは顧客のストーリーに応じて柔軟に対応し、クリエイティブなコラボレーションを重視した開発を進めることができます。
XPのメリットとデメリット
XPのメリットには、仕様変更に迅速に対応できること、顧客のニーズを反映しやすく顧客満足度が高まることが挙げられます。
一方、デメリットとしては、ペアプログラミングのような共同作業やコミュニケーションの重視が求められるため、相性が悪い場合や作業が単純な場合は効率が下がる可能性があることが挙げられます。
ユーザー機能駆動開発(FDD)
ユーザー機能駆動開発(Feature Driven Development:FDD)は、ユーザー目線を最重視したアジャイル開発手法です。
この手法は、ユーザーのニーズを最大限に反映させるために、開発サイクルを繰り返しながら進められます。FDDの特徴は、機能単位での開発に重点を置き、モデル駆動開発(MDD)を採用している点です。
FDDのプロセス
FDDの具体的なプロセスとして、まず全体モデルの作成があります。これはシステム全体の構造や関係性を明確にするための作業です。
次にフィーチャーリストの構築が行われます。このリストは、システムが提供するべき機能を細かく分解し、優先順位を付けたものです。
その後、各フィーチャーごとに計画と設計を行い、実際に構築していきます。これらのプロセスにより、仕様変更に対応しやすく、高品質なシステムを短期間で提供することが可能となるのです。
FDDのメリットとデメリット
まず、機能重視の開発により高品質なシステムを作成できることが挙げられます。ユーザーの具体的なニーズに基づいて開発を進めるため、実際に使われる機能がしっかりと実装され、ユーザーにとって価値のあるシステムが完成します。
また、大規模プロジェクトにも対応可能で、複雑なシステムでも効率的に開発を進めることができます。この結果、顧客満足度が高まり、プロジェクトの成功率も向上します。
一方で、FDDにはデメリットも存在します。特に、ユーザーニーズを詳細に把握するための時間がかかる点、スケジュールが遅延しやすい点が挙げられます。
またユーザーニーズが変わるたびに計画を見直す必要があるため、柔軟な対応が求められます。このため、プロジェクト管理が複雑になり、チームの高いコミュニケーションスキルが必要となります。
リーンソフトウェア開発(LSD)
リーンソフトウェア開発(LSD)は、トヨタの「リーン生産方式」をソフトウェア開発に応用した手法で、無駄を省き効率を最大化することを目指します。
7つの原則
2003年にメアリー・ポッペンディークとトム・ポッペンディークによって提唱され、以下の7つの原則に基づいています。
無駄をなくす
余分な機能や欠陥、不要な会議などを排除します。
品質を作り込む
不具合を早期に発見し、テスト駆動開発や継続的インテグレーションを実施します。
知識を作り出す
プロジェクトから得られるフィードバックを分析し、知識と経験を蓄積します。
決定を遅らせる
状況変化を踏まえて最善の決定を行います。
速く提供する
定期的に動く製品を顧客に提供し、フィードバックを基に迅速に改善します。
人を尊重する
チームメンバーに権限を委譲し、自律的な行動をサポートします。
全体を最適化する
プロセス全体の価値の流れを考慮し、ボトルネックや制約を特定して改善します。
リーン開発のメリットとデメリット
この手法のメリットには、無駄な時間や作業を削減し、顧客の要望に即した高品質なソフトウェアを素早く提供できる点があります。
一方で、多くのフィードバックを得るために開発・テストの工程を繰り返すため、コストが高くなる場合があるというデメリットもあります。
適応型ソフトウェア開発(ASD)
ASD(Adaptive Software Development)は、適応型ソフトウェア開発とも訳されるアジャイル開発手法の一つです。
複雑で変化が多い環境に適応しながらソフトウェアを開発することを目指します。
ASDのプロセス
ASDのプロセスは「思索(Speculate)」「協調(Collaborate)」「学習(Learn)」の3段階のイテレーションを繰り返すことで進行します。
思索では、開発する機能や手順を決定し、協調では開発チームが密接にコミュニケーションを取りながら実際の開発を行います。学習では成果物のレビューを通じて次のイテレーションに向けた改善を行います。
ASDのメリットとデメリット
ASDは、全体の仕様が最初から明確でない場合や状況が頻繁に変化するプロジェクトに特に適しています。
これは、アウトラインを大まかに決めた状態で開発を始め、途中での変更や修正を前提として進めるためです。そのため、不確定要素が多い環境下でも柔軟に対応でき、顧客の要望に合わせた高品質なソフトウェア開発が期待できます。
一方、ASDにはいくつかのデメリットもあります。例えば、全体のスケジュールや進捗管理が難しく、プロジェクトの方向性が途中で変わりやすいため、計画通りに進行しないリスクが伴います。
また、開発が進むにつれて仕様変更が頻発するため、チームメンバー間の緊密なコミュニケーションが不可欠です。
カンバン
カンバンも、トヨタ自動車の生産方式に由来するソフトウェア開発手法で、タスクの可視化、同時進行タスクの制限、タスク完了の平均時間短縮が特徴です。
カンバンの管理方法
この手法はタスクの見積もりや議論を行わず、実行と集中を重視します。
カンバンボードを用いてタスクを「To-Do」「進行中」「完了」といった列に配置し、視覚的に管理します。これにより、プロジェクトの進捗状況を一目で把握し、柔軟に対応できるのです。
また、チーム間のコミュニケーションを活性化し、問題発見や解決を迅速におこなうことができます。
看板のメリットとデメリット
カンバンのメリットは視覚的な明確さと柔軟性にあります。
ボードを共有することでチーム全員が進行状況をリアルタイムで把握でき、タスクの優先順位を簡単に変更できます。
また、短いサイクルでタスクを管理するため、プロジェクト全体の進行速度が上がり、顧客満足度の向上に繋がります。
特に、複数のプロジェクトを同時に進行する場合や、インシデント管理のような迅速な対応が求められる場面で有効です。
一方、カンバンにはデメリットもあります。
タスク間の依存関係が把握しにくい点や、長期的なプロジェクトには不向きであることが挙げられます。
また、プロジェクト管理ツールとしての利用には、チーム全体での継続的な学習とスムーズなコミュニケーションが不可欠です。
まとめ
今回はアジャイル開発の代表的な手法5つについて、それぞれの特徴やメリットなどを解説させていただきました。
アジャイル開発には、スクラム、エクストリームプログラミング(XP)、ユーザー機能駆動開発(FDD)、リーンソフトウェア開発(LSD)、カンバンといったさまざまな手法があります。
それぞれが異なる特徴とメリットを持ち、プロジェクトのニーズや状況に応じて選択することが重要です。適切に導入することで、プロジェクトの成功率を大いに高めることができるでしょう。
プロジェクトの特性や目標に最も適したアプローチを選び、アジャイル開発のメリットを最大限に活用してください!
PractiTest(プラクティテスト)に関する
お問い合わせ
トライアルアカウントお申し込みや、製品デモの依頼、
機能についての問い合わせなどお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修
Dr.T。テストエンジニア。
PractiTestエバンジェリスト。
大学卒業後、外車純正Navi開発のテストエンジニアとしてキャリアをスタート。DTVチューナ開発会社、第三者検証会社等、数々のプロダクトの検証業務に従事。
2017年株式会社モンテカンポへ入社し、マネージメント業務の傍ら、自らもテストエンジニアとしテストコンサルやPractiTestの導入サポートなどを担当している。
記事制作:川上サトシ